東京地方裁判所 昭和42年(借チ)22号・昭42年(借チ)24号・昭42年(借チ)23号 決定
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〔決定理由〕一 申立人三名は、相手方からその所有にかかる東京都千代田区岩本町三丁目一八番三(登記簿上)所在宅地四四六・八七平方米(一三五・一八坪)の内から、それぞれ別紙記載の土地を非堅固建物所有の目的で賃借し、それぞれ別紙記載の建物を所有しているが、附近は昭和三九年一〇月二九日に防火地域に指定された商業地域であるので、鉄筋コンクリート造四階建の事務所及び店舗等に改築する計画を建て、相手方に承諾を求めたが、これを拒否されたので本申立をしたものである。
二 本件資料によれば、右の事実が認められるほか、本件借地についてはいづれも借地法第八条の二第一項に定める要件を満たすものというべく、また従前の借地関係の経緯その他諸般の事情からみて、借地条件の変更を不相当とするに足りる理由は認められない。従つて、本件申立はいづれも許可するのを相当とする。
三 そこで、附随の裁判の要否及び内容を検討する。
1 鑑定委員会の意見の要旨は、次のとおりである。
堅固な建物の耐用年数が著しく長くなることと建物高層化による収益が増大することによつて受ける借地人の利益を賃貸人にも分配する心要がある。
本件借地の更地価格として、田島の借地部分は三・三平方米あたり一一〇万円(合計二一、六二七、三〇〇円)、大浦の借地部分は同じく九五万円(合計一五、七一三、〇〇〇円)、水野の借地部分は同じく一〇〇万円(合計三二、〇四三、六〇〇円)と認定する。
木造建物所有目的の借地契約における更新料を更地価格の七%とし、本件においては三〇年の期間延長を前提として、二年後の更新料及び二二年後の更新料(一〇年の延長となるから半額)にそれぞれ年六分の複利現価率を乗じて得た金額の合計額を計算すると、田島については一、五五七、五〇〇円、大浦については一、一三一、六〇〇円、水野については二、三〇七、五〇〇円となる。
次に、建物高層化による利用効率増加率を一、一二五として、それぞれ前記更新料に乗ずると、田島については一、九九五、一二〇円、大浦については一、四七七、三六〇円、水野については二、九九一、七五〇円となる。
右金額を合算した、田島について金三、五五二、六二〇円大浦について金二、六〇八、九六〇円、水野について金五、二九九、二五八円をもつて、それぞれ相手方に支払うべき金額とする。
地代については、増額の必要を認めない。
以上のとおりである。
2 本件借地権の残存期間は、いづれも二年弱にすぎないが、申立人所有のの各建物は、いづれもまだ老朽化しているとはいえず、本件資料にあらわれた諸般の事情からみて、借地契約はいづれも更新されることが必然と認められる。そこで、借地法に定める存続期間に関する定めとの関係もあるので、先づ存続期間を三〇年延長することとする。右の事情からみて、右存続期間の延長は、現状のもとでは相手方に直接不利益を与えるものということはできない。しかし、鉄筋コンクリート造の建物が建築されれば、建物の耐用年数は殆んど半永久的というべく、従つて、建物の朽腐による借地権の消滅ということは考えられなくなり、賃貸人としては期間満了の際の更新拒絶以外に借地契約を終了させる機会がなくなるということができる。その意味で、本件許可は相手方に対して不利益を与えるものであることを否定できない。従つて、この不利益に対して調整を図る必要があるといえる。
なお、借地人が高層建物を建築することによつて収益を増加できるという点については、本件借地の面積及び申立人の各計画からみて考慮する必要はないものと認める。すなわち、建物の使用目的について制限の特約があり、その趣旨に従つて従前借地人の個人住宅として使用していたものを高層賃貸住宅に変更する等建物の使用目的を変更し、かつ、それに伴ない収益の増加が顕著に多額となるというような特別の事情が予測される場合であれば格別、しからざるときは土地の利用価値の増加は、地代及び前記した点による利害の調整によつて賄はれるものというべきである。
そこで、前記相手方に与える不利益に対する調整の方法として、当裁判所は従来の借地関係の経緯を斟酌し、申立人に対し、それぞれ借地部分の更地価格の五%にあたる金額の支払いを命ずるのが相当であると認める。従つて、田島については金一一〇万円、大浦について金八〇万円、水野については金一六〇万円(いづれも、端数を切上げ又は切下げ)を、それぞれ相手方に支払うことを命ずることとする。
地代については、鑑定委員会の意見に従がい、三・三平方米あたり月金五〇〇円をもつて相当と認める。(西村宏一)