東京地方裁判所 昭和42年(特わ)357号 判決 1968年7月13日
本店所在地
東京都目黒区上目黒八丁目五九三番地
第一商事株式会社
(右代表者清算人 金井賢一)
本籍
東京都杉並区神明町一七番地
住居
同都同区上高井戸四丁目一、五九五番地
会社役員
森重章
昭和三年七月二〇日生
本籍
東京都杉並区荻窪二丁目三〇番地
住居
右同所
会社役員
森重紀美子
明治四四年七月一七日生
右被告人らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官宮本喜光出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告第一商事株式会社を罰金八〇〇万円に、被告人森重章、同森重紀美子を罰金八〇万円に各処する。
被告人森重章、同森重紀美子において右罰金を完納しないときは、それぞれ金二万円を一日に換算した期間、当該被告人を労役場に留置する。
理由
(罪となるべき事実)
被告第一商事株式会社は、東京都目黒区上目黒八丁目五九三番地に本店を置き(設立当初は同都中野区鷺宮四丁目一、一四九番地にあつたが、昭和四〇年一二月一日に現在地へ移転)、金銭の貸付及び手形の割引を営業目的としていた資本金五〇〇万円の株式会社で、昭和四〇年一一月三〇日株主総会の決議により解散し現在清算中のものであり、被告人森重章は、右会社の解散まで代表取締役としてその業務全般を統轄していたもの、被告人森重紀美子は、同森重章とともに右会社の業務を統轄していたものであるが、両名は共謀のうえ被告会社の業務に関し、法人税を免れるため手形割引料収入の一部を除外する等の方法により所得を秘匿したうえ、
第一、昭和三八年七月一日より昭和三九年六月三〇日に至る事業年度において、被告会社の実際所得金額は別紙第一修正損益計算書記載のとおり四、四五六万六、八一〇円でありこれに対する法人税額が一、六七〇万九、五五〇円であつたにもかかわらず、昭和三九年八月三一日、東京都中野区中野四丁目九番一五号所在の所轄中野税務署において同署長に対し、所得金額は三〇〇万三、九六四円であつてこれに対する法人税額は九二万二、六三〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の法人税額と申告税額との差額一、五七八万六、九二〇円については法定の納付期限に納付せず、もつて不正な行為により右同額の法人税を逋脱した
第二、昭和三九年七月一日より昭和四〇年六月三〇日に至る事業年度において、被告会社の実際所得金額は別紙第二修正損益計算書記載のとおり二、七七六万〇、五一五円であつたにもかかわらず、昭和四〇年八月三〇日、前記中野税務署において同署長に対し、所得金額は四一万二、三三三円であり、これに対する法人税額が一〇〇〇万九、五七〇円であつてこれに対する法人税額は八万九、七七〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の法人税額と申告税額との差額九九一万九、八〇〇円については法定の納付期限に納付せず、もつて不正な行為により右同額の法人税を逋脱した
ものである。
(証拠の標目)
(一) 全般について、
一、登記官高橋俊栄、同斉藤四郎各作成の登記簿謄本
一、奈良喜江、佐藤武一の各検察官に対する供述調書
一、大蔵事務官寮甦三郎作成の銀行調査書及び普通預金及び定期預金調査書並びに脱税額計算書二通
一、押収にかかる元帳三綴(昭和四三年押第一〇号の二)並びに法人税額決議書三綴(同号の五〇ないし五二)
一、被告第一商事株式会社代表者金井賢一の大蔵事務官に対する質問てん末書並びに検察官に対する供述調書
一、被告人森重章、同森重紀美子の各大蔵事務官に対する質問てん末書並びに検察官に対する供述調書
一、被告第一商事株式会社代表者金井賢一、被告人森重並びに同森重紀美子の各当公判廷における供述
(二) 別紙各修正損益計算書の各科目のうち、
(1) 割引料収入について、
一、大蔵事務官寮甦三郎作成の割引手形及び前受収益調査書及び期末簿外割引手形明細表
一、押収にかかる現金出納簿三綴(前同号の三)、振替入出金伝票等一袋(同号の一三)、代金取立手形通帳計六冊(同号の一四ないし一六)、振替伝票計三袋(同号の二五、三三、三七)、割引手形関係メモ一綴(同号の二九)、手形期日帳一綴(同号の三五)並びにメモ帳五綴(同号の四一)
一、被告第一商事株式会社元代表取締役森重章、清算人金井賢一共同作成の上申書四通
(2) 支払利息について、
一、森重直子、石丸潔廼、伊藤キヨ子の各大蔵事務官に対する供述調書
一、森重光生の検察官に対する供述調書
一、大蔵事務官寮甦三郎作成の関係会社株式払込調査表
一、押収にかかる借入金カード一袋(前同号の一)、現金出納簿三綴(同号の三)、積立預金計算書一綴(同号の二二)、穀物取引状況調一枚(同号の三四)、元帳四綴(同号の四四)並びに割引手形記入帳一冊(同号の四六)
一、被告第一商事株式会社元代表取締役森重章、清算人金井賢一共同作成の上申書一通(但し、昭和四一年八月二九日付)並びに同社代表取締役森重章作成の上申書一通(但し、昭和四一年一一月八日付)
(3) 貸倒損失について、
一、大蔵事務官寮甦三郎作成の貸倒損失明細表
一、被告第一商事株式会社取締役森重章、関与税理士歌代一郎、同佃和男共同作成の上申書二通
(4) 給料について、
一、押収にかかる手帳計四冊(前同号の九、一二、三一)並びに金銭出納帳二冊(同号の四二)
一、被告第一商事株式会社代表取締役森重章作成の上申書一通(但し、昭和四一年一一月三〇日付)
(5) 交際接待費及び雑費について、
一、被告第一商事株式会社代表取締役森重章作成の上申書一通(但し、昭和四一年一二月八日付)
(6) 減価償却費について、
一、小林敏、岩崎新一、上原近吉、浜田郁夫の各大蔵事務官に対する質問てん末書
一、押収にかかる軽井沢宅関係請求書等一袋(前同号の三二)、軽井沢土地建物関係書類一袋(同号の四三)並びに請負工事台帳一冊(同号の四九)
(7) 受取利息について、
一、大蔵事務官寮甦三郎作成の銀行調査書及び普通預金及び定期預金調査書
一、和田新作、島田米次郎、堀江成生の各大蔵事務官に対する質問てん末書
一、被告人森重紀美子作成の上申書
(8) 収入利息について、
一、大蔵事務官寮甦三郎作成の貸付金および収入利息明細表、関係会社株式払込調査表
一、植木安子、岩間延三の各大蔵事務官に対する質問てん末書
一、株式会社和光社代表取締役森重光生作成の上申書
一、森重光生作成の上申書並びに同人の検察官に対する供述調書
(法令の適用)
被告人森重章の判示各所所為中、第一の事実は昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条により、その改正前の法人税法第四八条第一項、刑法第六〇条に、第二の事実は昭和四〇年法律第三四号法人税法第一五九条第一項、刑法第六〇条に各該当するところ、所定刑中いずれも罰金刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項によりその合算額の範囲内において処断すべく、よつて同被告人を罰金八〇万円に処する。
被告人森重紀美子の判示各所為中、第一の事実は昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条により、その改正前の法人税法第四八条第一項、刑法第六五条第一項、第六〇条に、第二の事実は昭和四〇年法律第三四号法人税法第一五九条第一項、刑法第六五条第一項、第六〇条に各該当するところ、所定刑中いずれも罰金刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項によりその合算額の範囲内において処断すべく、よつて同被告人を罰金八〇万円に処する。
なお、被告人森重章、同森重紀美子両名について、罰金不完納の場合の換刑処分については、刑法第一八条第一項を適用してそれぞれ金二万円を一日に換算した期間、当該被告人を労役場に留置する。
被告第一商事株式会社については、その代表者たる被告人森重章が同会社の業務に関して前示違反行為をしたものであるから、判示第一の事実については昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条により、その改正前の法人税法第五一条第一項に則り同法第四八条第一項の罰金刑を、また第二の事実については昭和四〇年法律第三四号法人税法第一六四条第一項に則り同法第一五九条第一項の罰金刑を科すべく、しかして右各違反行為は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項によりその合算額の範囲内で処断することとし、よつて同被告会社を罰金八〇〇万円に処する。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 近藤暁)
別紙一 修正損益計算書
第一商事株式会社
自昭和38年7月1日
至昭和39年6月30日
<省略>
別紙二 修正損益計算書
第一商事株式会社
自昭和39年7月1日
至昭和40年6月30日
<省略>