東京地方裁判所 昭和42年(特わ)641号 判決 1970年2月06日
本店所在地
東京都渋谷区代々木一丁目三六番地 代々木駅前ビル内
株式会社 日綜
右代表者代表取締役赤松繁行
本籍
東京都練馬区上石神井二丁目一、五〇四番地
住居
東京都中野区中野五丁目五二番一五号
中野ブロードウエー八一二号
会社役員
赤松繁行
大正六年四月二〇日生
本籍
東京都品川区大井二丁目四、一二九番地
住居
東京都品川区旗の台五丁目八番一三号
会社役員
長島忠雄
昭和七年二月二八日生
被告会社株式会社日綜に対する法人税法違反・住宅地造成事業に関する法律違反、被告人赤松繁行に対する法人税法違反・住宅地造成事業に関する法律違反・宅地建物取引業法違反、被告人長島忠雄に対する宅地建物取引業法違反各被告事件につき、当裁判所は、検察官上田政夫、弁護人荒井金雄、同長尾仁司(被告会社及び被告人赤松)、同鈴木栄二郎(被告人赤松)各出席の上審理して次のとおり判決する。
主文
被告会社を罰金四、〇〇〇万円に
被告人赤松を懲役一年及び罰金三〇〇万円に
被告人長島を罰金二〇万円に
各処する。
被告人赤松において右罰金を完納することができないときは、金五、〇〇〇円を一日に換算した期間、被告人長島において右罰金を完納することができないときは金二、〇〇〇円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。
被告人赤松に対し、本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は全部被告人赤松、同長島の連帯負担とする。
理由
甲 被告会社及び被告人赤松に対する法人税法違反並びに住宅地造成事業に関する法律違反
被告会社は、昭和三九年三月五日東京都千代田区神田東紺屋町二八番地に本店を置き、宅地造成工事及び不動産の分譲等を営業目的とする資本金五〇〇万円の株式会社赤松興業土木として設立され、昭和四二年二月二一日商号を株式会社日本貿易物産と改め、同年三月一日登記簿上の本店所在地を肩書本店所在地に移転し、同年九月増資して資本金二、〇〇〇万円としかつ商号を株式会社日綜と改めるに至つたものであり、被告人赤松は、被告会社の設立時よりその代表取締役として業務を執行していたものである。
第一、被告人赤松は被告会社の業務に関して法人税を免れようと企て、売上の一部を脱漏し、期末たな卸商品を一部除外するなどして簿外預金を蓄積するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
一、昭和三九年三月五日より同四〇年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二〇〇、五八六、四二八円であつたのにかかわらず、同四〇年四月三〇日東京都千代田区神田錦町三丁目二一番地所在の所轄神田税務署において、同税務署長に対し、所得金額が五、五三二、二七七円の欠損であり納付すべき法人税額は零である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度における正規の法人税額一七六、〇七二、六八〇円を納付しないでこれを免れ
二、昭和四〇年三月一日より同四一年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一二二、八四六、四三六円あつたのにかかわらず、法人税の申告期限である同四一年四月三〇日までに前記所轄神田税務署長に対し、法定の確定申告書を提出しないで右期限を徒過し、もつて同会社の右事業年度における正規の法人税額四五、二七三、〇二〇円を免れ
たものである。(逋脱所得の確定内容は、別紙第一の一、二の各修正貸借対照表記載のとおりである。)
第二、被告人赤松は被告会社の業務に関し、昭和四〇年七月二五日ころ、被告会社が事業主として行つた千葉県船橋市飯山満町三丁目一九三番地及び同二六一番地の土地合計一五、四五三平方メートル(四、六八三坪)の宅地造成事業に関する工事に着手することになつたが、同地区は住宅地造成事業に関する法律による住宅地造成事業規制区域として指定されていたのであるから事業主としてはその工事に着手する前に千葉県知事の認可を受けなければならないのに、その認可を受けなかつたものである。
乙 被告人赤松、同長島に対する宅地建物取引業法違反
被告人赤松は前記株式会社赤松興業土木の業務に関し、住宅地造成事業に関する法律による規制区域である千葉県千葉郡八千代町(昭和四二年一月一日行政区画を八千代市と変更)大和田新田庚塚三五二番ないし三五四番地内の別紙第二犯罪事実一覧表記載の土地合計一二二区画約一八、六六八、一平方米(約五、六五七坪)につき、事業主を株式会社日本信用開発の名義で千葉県知事に認可申請し、昭和四〇年一二月二七日その認可を得た。右土地は造成工事中であり、同法規により工事完了後所定の検査に合格すれば該区画内に設置された公共施設である公園及び道路等は、その管理者となる八千代町に帰属せしめなければならないことになつていたのに、同年同月末ころ、これらの土地を東日本観光株式会社を取引の主体として売却せしめることを企画した。被告人長島は、同会社の代表取締役として業務を執行しており、同会社は東京都知事の免許を受けて宅地建物取引業を営む法人であるところ、同被告人は被告人赤松の前記企画に従い、ここに被告人両名は共謀の上、宅地建物取引業者である同会社の業務に関し、昭和四一年一月二三日ころから同年六月三〇日ころまでの間一一九回にわたり、別紙第二犯罪事実一覧表記載のとおり、各土地所在場所附近において、造成中の各土地を各買主である水内徳平ほか一一八名に被告人長島自らあるいは同会社のセールス伊東昭雄ほか一七名を介し売却するにあたり、同人らに対し、右公共施設である道路が前記法律により八千代町に帰属せしめなければならない事実を明確に告げず、もしくは「売却土地の一部を私道として買受人において提供負担して貰いたい」旨述べるなどし、もつてそれぞれ取引の重要事項について故意に事実を告げず又は不実の事を告げたものである。
(証拠の標目)
略語例
(検)=検査官に対する供述調書
(大)=大蔵事務官に対する質問てん末書
(員)=司法警察員に対する供述調書
(公)=当公判廷における供述
全事実につき
一、被告人赤松の(公)
第一の各事実につき
一、被告人の(大)一二通、(検)三通(昭和四三年一二月七日付検察官請求証拠目録乙14、15、16のもの)
一、被告人の上申書一四通(前同日付目録乙18ないし31のもの)
一、登記簿謄本二通(昭和四三年七月一一日付目録甲一その二1、2のもの)
一、三坂和子の(大)七通
一、塩崎千里の(大)四通
一、福原俊雄の(大)
一、倉持利司の(大)四通
一、長浜精一の(大)二通
一、長島忠雄の(大)二通
一、吉田 の(大)二通
一、林泰義の(大)二通
一、吉沢昇輔の(大)二通
一、久松功の(検)
一、吉沢昭の(大)五通
一、秋木已之吉の(大)二通
一、高橋賢次の(大)
一、渡辺房雄の(大)
一、石塚昌男の(大)
一、磯野一義の(大)
一、三浦 の(大)
一、相馬藤栄の(大)
一、杉山多郎の(大)二通
一、中村禎光の(大)
一、金井義男の(大)
一、大蔵事務官神津三友作成の各期末銀行預金残高調査表、期首売掛金明細表、期首繰越商品明細表及び各期末商品たな卸金額計算書、減価償却費計算書、旧債返済状況及び分配金回収状況調査書、私宅貸家建築資金関係調査書類、法人税額計算書
一、大蔵事務官宮村俊一作成の各期末売掛金残高明細表及び合計表
一、大蔵事務官荒川浩平作成の調査報告書
一、大蔵事務官浅野一夫提出の国際勧業建設株式会社に関する修正確定申告書写
一、大蔵事務官宮村俊一作成の未払家賃明細表
一、法人税決定決議書綴一綴(当庁昭和四三年押第五一九号の二六)
一、裏契約書一綴(同押号の二七)
第二の事実につき
一、被告人赤松の(検)二通(昭和四二年一一月二〇日付、同月二七日付)
一、中台明の(検)二通
一、杉本康人の(検)
一、小林武の(検)
一、検察事務官西野文雄の捜査報告書
一、船橋市長の捜査関係事項の照会について(回答)
一、司法警察員内田亀吉外三名の捜査報告書
一、被告会社の登記簿謄本三通(昭和四二年九月八日付、同年一〇月七日付、同月九日付)
乙の各事実につき
一、被告人長島の(公)
一、被告人赤松の(検)三通(昭和四四年一一月一一日付検察官請求証拠目録その二3、4、5のもの)
一、被告人長島の(検)五通
一、証人高谷兼造の(公)
一、証人磯野一義の(公)(被告人長島についてはその尋問調書)
一、証人福原俊雄の(公)(被告人長島についてはその尋問調書)
一、証人大坂静雄の(公)(被告人赤松についてはその尋問調書)
一、大坂静雄の検(添付書類とも)
一、磯野一義の昭和四二年九月七日付(検)の一ないし五項
一、東日本観光株式会社の登記簿謄本
一、大橋正信の捜査関係事項照会について(回答)
一、司法警察員鈴木達也の捜査関係事項照会書謄本
一、八千代町長の右照会に対する回答書
一、八千代市長の照会事項に対する回答書
一、本件土地の買主関係者の供述等(数字は別紙第二の事実番号に対応する。)
1、証人水内徳平の供述部分(第三回公判調書)
2、佐治善夫の(員)
3、証人久米利夫の供述部分(第三回公判調書)
4、溝添格の(員)
5、白石豊の(員)
6、 実恭之助の(員)
7、石橋静江の(員)
8、桜井敬直の(員)及び(検)
9、証人水上英昭の(公)
10、谷中定次郎の(員)
11、柳沢尚躬の(員)
12、河崎輝夫の(員)
13、村田優の(員)
14、川原義雄の(員)
15、原田勇の(員)
16、証人大久保寛の(公)
17、島崎洋治の(員)
18、滝田貞夫の(員)
19、坂本仲吉の(員)
20、大久保豊彦の(員)
21、白井竹野の(員)
22、倉田昭の(員)
23、長田春枝の(員)
24、由本喜代松の(員)
25、川上のり子の(員)( )
26、竹内貞雄の(員)
27、鹿野友二郎、鹿野昌枝の各(員)
28、石鍋福松の(員)
29、榎本はつ子の(員)
30、山口哲男の(員)
31、田辺潔司の(員)
32、鎌田徳松の(員)
33、鈴木竹二の(員)
34、原田ヒサの(員)
35、柴田竹松の(員)
36、浅野富美の(員)
37、森清司の(員)
38、戸田正美の(員)
39、大山英穀の(員)
40、小出徹雄の(員)
41、証人後藤喜之の(公)
42、目黒密昭の(員)
43、中野ハツエの(員)及び(検)
44、高田咲子の(員)
45、菅根スミの(員)
46、金杉たかの(員)二通
47、山辺敬子の(員)二通
48、馬場敏子の(員)及び(検)
49、田村貞吉の(員)
50、竹尾末吉の(員)
51、相原隆子の(員)
52、平澄江の(員)二通
53、佐々木藤子の(員)
54、吉松照文の(員)
55、西川角一の(員)
56、武内孝之の(員)
57、岩井ます代の(員)
58、高橋わか子の(員)
59、杉山芳男の(員)
60、城戸元秀の(員)
61、日江井正幸の(員)
62、及川兵作の(員)
63、須永林三の(員)
64、清水はるの(員)
65、証人内山隆夫の(公)
66、高木弘の(員)
67、石川勝造の(員)二通
68、伊東アキ子の(員)
69、佐藤貞治の(員)
70、渋谷善男の(員)及び(検)
71、井上なかの(員)
72、関口妙子の(員)
73、証人柳瀬義雄の(公)
74、赤野間忠宗の(員)
75、折原五郎の(員)
76、田中みちの(員)
77、奥野喜孝の(員)
78、川村静子の(員)
79、松井幸雄の(員)
80、岸本一夫の(員)
81、内田忠彦の(員)
82、井野根栄の(員)
83、西谷英次の(員)
84、前田真佐子の(員)
85、橋本薫の(員)
86、和田明の(員)
87、平山誠一の(員)
88、臼杵美代の(員)
89、佐竹保の(員)
90、小野元義の(員)
91、児玉照枝の(員)
92、石井みさの(員)
93、斉藤みさおの(員)
94、山川武光の(員)
95、菅野博人の(員)
96、新井山テツの(員)
97、石塚堅治の(員)
98、浅生昌利の(員)二通
99、小松崎進の(員)
100、鴇田忠夫の(員)
101、関沢実雄の(員)
102、関沢重利の(員)
103、今野清三の(員)
104、証人加藤登美子の尋問調書
105、田中紀子の(員)
106、小柳米作の(員)
107、小野塚孝也の(員)
108、荒木吉平の(員)
109、中川忠の(員)
110、近藤守利の(員)
111、証人津久井幸夫の尋問調書
112、山本二郎の(員)
113、田中栄太郎の(員)
114、箕田四郎の(員)
115、高橋勝則の(員)二通
116、小須田彰平の(員)
117、豊田武男の(員)
118、小林明の(員)及び小林恵美子の(検)
119、佐藤今朝雄の(員)
一、セールス関係者の供述等(数字は別紙第二の事実番号に対応する。)
1ないし7、証人伊東昭雄の供述部分(第三回公判)
8、高松利男の(員)
9ないし18、遠藤宏の(員)
19ないし25、奥貫忠行の(員)
26、27、高橋 忠の(員)
28、三島千弘の(員)
29、秋山信康の(員)
30、31、湯浅春雄の(員)
32ないし36、石川武夫の(員)
37ないし62、証人亀田登の(公)及び同人の昭和四二年九月二二日付(員)添付の八千代町分譲地契約状況一覧表
63ないし81、証人石川敏之の(公)及び同人の昭和四二年九月二六日付(員)添付の八千代町分譲地契約状況一覧表
82、83、84、証人深作要一の(公)及び同人の(員)
85ないし97、坂下肇の(員)二通
98ないし102、寺島鳩彦の(員)
103ないし111、友野正芳の(員)
112、113、千葉胤雄の(員)
114、本山健治の(員)
115ないし118、小倉正自の(員)
一、押収にかかる土地家屋売買相互契約書全部(前同押号の七ないし二三)、スクラツプブツク一冊(同押号の二四)、実測図一袋(同押号の二五)
(法令の適用)
一、被告会社関係
第一の一事実につき 昭和四〇年法律第三四号法人税法附則一九条により改正前の法人税法四八条、五一条一項
第一の二事実につき 昭和四〇年法律第三四号法人税法一五九条、一六四条一項
第二事実につき 住宅地造成事業に関する法律二四条一号、四条、二六条
併合罪加重につき 刑法四五条前段、四八条二項
二、被告人赤松関係
第一の一事実につき 昭和四〇年法律第三四号法人税法附則一九条により改正前の法人税法四八条(懲役刑と罰金刑とを併科選択)
第一の二事実につき 昭和四〇年法律第三四号法人税法一五九条(懲役刑と罰金刑とを併科選択)
第二事実につき 住宅地造成事業に関する法律二四条一号、四条
乙の各事実につき 宅地建物取引業法二五条、一八条一号、刑法六〇条、六五条一項(各罰金刑選択)
併合罪加重につき 刑法四五条前段、四七条本文一〇条、四八条二項
換刑処分につき 刑法一八条
刑の執行猶予につき 刑法二五条一項
訴訟費用の負担につき 刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条
三、被告人長島関係
乙の各事実につき 宅地建物取引業法二五条、一八条一号、刑法六〇条(各罰金刑選択)
併合罪加重につき 刑法四五条前段四八条二項
換刑処分につき 刑法一八条
訴訟費用の負担につき 刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 小島建彦)
別紙第一の一
修正貸借対照表
(株)日綜 昭和40年2月28日
<省略>
<省略>
別紙第一の二
修正貸借対照表
(株)日綜 昭和40年2月28日
<省略>
<省略>
(別紙第二) 犯罪一覧表
<省略>
(セールス遠藤宏を介して売却した分)
<省略>
(セールス奥貫忠行を介して売却した分)
<省略>
(セールス高橋靖忠を介して売却した分)
<省略>
(セールス三島千弘を介して売却した分)
<省略>
(セールス秋山信康を介して売却した分)
<省略>
(セールス湯浅春雄を介して売却した分)
<省略>
(セールス石川武夫を介して売却した分)
<省略>
(セールス亀田登を介して売却した分)
<省略>
(セールス石川敏之を介して売却した分)
<省略>
(セールス深作要一郎を介して売却した分)
<省略>
(セールス坂下肇を介して売却した分)
<省略>
(セールス寺島鳩彦を介して売却した分)
<省略>
(セールス友野正芳を介して売却した分)
<省略>
(セールス千葉胤雄を介して売却した分)
<省略>
(セールス本山健治を介して売却した分)
<省略>
(セールス小倉正自を介して売却した分)
<省略>
(被告人長島忠雄が直接売却した分)
<省略>
合計 一一九名 五六五七・五九坪