大判例

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東京地方裁判所 昭和42年(行ウ)27号・昭41年(行ウ)39号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕原告は、本件更正登記の申請書に不動産登記法六六条、五六条一項所定の書面が添付されていなかつたにかかわらず、被告登記官がこれを受理して本件更正登記をしたのは同法四九条八号に違反するとして、右登記処分及びこれに対する審査請求を却下した本件裁決の取消しを請求する。

しかしながら、被告登記官の本件更正登記処分が原告主張のような理由により同法四九条八号に違背したものであつたとしても、すでにその登記が完了している以上、審査請求または抗告訴訟によつて右登記処分の是正または取消しを求めることはできないというべきであり、その理由は次のとおりである。

不動産登記法四九条は、登記申請の形式的要件を定め、その要件を具備しない登記申請は登記官がこれを却下すべきものとしているから、同条各号に該当する登記申請を受理してなされた登記処分が右の規定に違反することはいうまでもない。しかしながら、登記処分に同条各号の違反があるということと、その違反がすべて当該登記処分の効力を失わせるべき違法事由になるかということとは別個の事柄であつて、右の違法事由になるかどうかは、同条に違反する登記処分によつてなされた登記の私法上の効力と切り離して決定されるものではない。けだし、登記実行処分に対する審査請求を理由ありとするとき、または右登記処分を抗告訴訟の判決によつて取り消すときは、すでになされている登記自体が抹消され(一五四条以下参照)、その登記によつて与えられていた私法上の権利の対抗力等をも失わせることとなるが、元来、登記制度の主たる意義は、私法上の権利関係を公証して、私法上の権利に対抗力等を取得させるということにあるから、もし四九条各号違反の登記処分によつてなされた登記であつても、私法上の権利の対抗要件として当然には無効にはならない場合があるとすれば、そのかぎりにおいて、当該登記処分に対する不服申立ての方法により右処分の効力を失わしめることも許されないとするのが制度の意義にてらし合理的だからである。ところで、同条各号に違反する登記処分によつてなされた登記の私法上の効力については、同条一号または二号に該当する登記は、事柄の性質上、具体的事情の如何にかかわりなく当然かつ絶対的に無効とすべきであるが、同条三号以下の場合には、違反の内容にかんがみ、取引の安全を確保する見地から、当然に無効の登記となるものではないと解される。してみると、さきに述べたところにしたがい、同条三号以下に違反する登記官の登記処分については、すでにその登記が完了している以上、右の違反が行政行為としての登記処分の瑕疵にあたるとして、審査裁決により当該登記の抹消を命じ、あるいは抗告訴訟の判決においてその登記処分を取り消すことはできないというべきであつて、このことは、すでになされている登記が同条一号または二号に該当するときにかぎり、登記官が職権でこれを抹消すべきものとしている一四九条以下の規定からも窺うことができる。もしそうでないとすると、無効であることが登記上明白な右一号または二号の場合においてすら、職権による登記の抹消につき登記権利者その他の利害関係人に事前に異議を述べる機会が必らず与えられて、その利益保護がはかられている(一四九条ないし一五一条)のに、違反の内容が一、二号に比較して軽微である三号以下の場合には、右の利害関係人が当然には関与しえない審査請求または抗告訴訟の手続により一方的にその登記を抹消されることとなり、きわめて不当であるといわなければならない。もつとも、登記申請書に登記手続上要求される第三者の承諾書等を添付しなかつたというにとどまらず、当該第三者の承諾そのものが存在しないという場合には、その申請にもとづく更正登記は登記申請の意思を欠くものとして私法上無効とされ、登記の効力を争う民事訴訟の判決により抹消されることがありうるが、右承諾の有無というようなことは登記官の形式的審査権限外の事項であるから、それを確認しなかつたことをもつて登記処分が違法であるということはできない。(緒方節郎 佐藤繁 藤井勲)

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