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東京地方裁判所 昭和43年(レ)207号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕控訴人が本件土地の賃借権を新所有者たる被控訴人に対抗し得るかについて判断する。

控訴人の主張するような保存登記が被控訴人の本件土地の所有権移転登記前である昭和三七年四月一三日になされたことは当事者間に争いがなく、成立に争いない乙第一号証によれば、右登記は、東京法務局江戸川出張所昭和三七年四月一三日受付第六九二七号をもつてなされていること、右登記表題部のうち所在地番は、昭和四三年一一月一日錯誤によるものとして長島町九九番地五から同町九九番地八に、家屋番号は九九番四から九九番八の一にそれぞれ更正登記がなされていることが認められる。

そこで、更正前の登記が、本件建物につきなされた登記といえるか、換言すれば、本件建物が建物保護法第一条にいう「登記シタル建物」といえるかが問題となる。

登記簿上建物所在地番の表示が真実に合致しない場合、いかなる限度で建物保護法第一条にいう「登記シタル」建物があるといえるかについては困難な問題であるが、宅地の取引をしようとする者は登記簿よりも現実に宅地を検分して取引しているのが通常であることと、土地賃借権のような使用権の対抗力としては、できる限り現実の利用をもつてこれに保護を与えるべきであるということの両面から考察すると、「登記シタル建物」という文言も、右の取引の実際や賃借人保護の趣旨にそつてできるだけ緩かに解釈すべく、右建物所在地番の表示と現実とがくい違つている場合についていえば、建物の種類、構造、床面積等の記載と相俟つて、社会通念上建物の同一性を認識し得る程度の軽微な誤りであつて容易に更正登記ができるような場合には、たとい更正登記前であつても、これに建物保護法による対抗力を認めてしかるべきである(最高大判昭和四〇年三月一七日民集一九巻二号四五三頁参照)。

本件についてみると、前記争いのない事実のほか、<証拠>によれば、渡辺は昭和三七年はじめ頃建築士ひこた某に依頼して、江戸川区長島町九九番一および同番五の各土地上に木造亜鉛メツキ鋼板葺平家建で床面積4.75坪の居宅をそれぞれ建築したが、そのうちの九九番地一所在の建物が本件建物(後日現況のとおり増築されたものと認められる)であつて、これを控訴人名義で保存登記手続をするよう渡辺から依頼されていた右ひこた某が、誤つて九九番地五所在の建物(家屋番号九九番四)として登記した。そして実際に九九番地五所在の建物は、後日その敷地とともに渡辺から佐藤虎蔵に売り渡され、右建物については昭和三七年六月一三日に右佐藤名義で保存登記が(ちなみに、家屋番号は九九番五の一となつている)、右敷地については、同年同月一九日に右佐藤のため所有権移転登記がそれぞれなされた。その後渡辺は、九九番一の土地の一部を被控訴人に売却するため、同年一二月五日右九九番一の土地から九九番八を分筆したので、結局本件建物は、九九番八の土地上に存在することになつた。

以上の事実が認められる。右認定の事実によれば、控訴人名義でなされた保存登記は、所在地番の点を除けば増築前の本件建物と同一性があり(右認定のとおり、現実に九九番地五所在の建物は別個の保存登記がなされている)、所在地番の表示の相違も地番のうちの枝番の違いにすぎないし、また前主渡辺が被控訴人に本件土地を売却するために、本番から九九番八を分筆した結果、本件建物が右分筆された土地上に存することになつたという事情からすれば、当初なされた所在地番の表示の誤りは、たやすく更正登記しうる程度のものであつたと認められるのであつて、しかも前記認定のとおり登記簿上の所在地番が、すでに現実に本件建物の存する九九番八に更正登記されている本件においては、控訴人の右保存登記をもつて、建物保護法第一条にいう「登記シタル建物」を所有する場合にあたると解するのが相当である。(伊東秀郎 寺井忠 松本昭彦)

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