東京地方裁判所 昭和43年(ワ)12283号 判決
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〔判決理由〕一 (事故の発生)
(一) 原告ら主張の日時場所において、加害車が被害車に、被害車が先行車にそれぞれ追突し、被害車が破損したことは当事者間に争いがない。そして<証拠>によれば、その際原告大谷がむちうち症の傷害を受けたことが認められ右認定に反する証拠はない。
(二) <証拠>によれば、事故発生の状況について次のような事実が認められ、右供述部分を除いて右認定に反する証拠はない。
本件道路は片側二車線のコンクリート舗装道路であり、事故現場附近は緩い下り勾配になつている。見透しはいいが、夜間は暗く、当時小雨が降つており、路面は湿つていた。先行車は、追越車線を進行中進路前方で交通事故が発生しているのを発見し、急停止した。そして、進路を走行車線にかえるため左にハンドルをきつた状態で待機中被害車に追突され、走行車線を横切つて道路脇の石垣に衝突した。これより先、被害車は、時速約六〇キロメートルの速度で走行車線を進行し、追越車線を同一速度で進行中の加害車としばらく併進した後、追抜きざま進路を加害車の直ぐ前方へ変更した。そして、その直後先行車が停止しているのを発見し、急ブレーキをかけた。被害車に追越された加害車は、間もなく被害車のストップライトがついたのを見て、急ブレーキをかけた。事故発生直後、後続トラックの運転者が事故現場に一旦停止し、「真中の車が悪い。」と言い残して立去つた(原告大谷本人の供述中には、事故現場の約五〇〇メートル手前で被害車を追越した旨の部分および右トラックの運転者は「一番後の車が悪い。」といつた旨の部分があるが、本件事故が通常の二重追突事故と趣を異にすると見受けられたからこそ、右運転者は、わざわざ停止して意見を述べたのであろうから、右供述部分は採用しない。)。
二 (責任原因)
(一) 被告が加害車を自己のために運行の用に供し、被告長谷川を使用していたことは当事者間に争いがない。
(二) 被告長谷川の過失について
事故発生の状況によると、同被告には、被害車に追越され、急停止の措置をとるまでの間に、車間距離の調整をはかる時間的余裕がなかつた疑いがあるから、本件の場合は、加害車に追突したことから直ちに同被告に過失があつたことを推認することはできないし、他に右事害を認めるに足りる証拠はない。
(三) 以上の理由により、原告らの本訴請求中原告会社の被告らに対する請求および原告大谷の被告長谷川に対する請求は、その他の点を判断するまでもなく失当である。
三、(免責)
(一) 被告長谷川の無過失について
事故発生の状況からいつて、加害車が被害車に追突したことについて同被告に過失がなかつたといえるためには、被害車に対する関係での車間距離不保持が不可避的状況にあつたことと同時に、これと相関的な関係にあるともいえる。進路前方で交通が渋滞していることと被害車と併進中に発見できなかつた状況が立証されなければならないところ、本件全証拠によるもこれを認めるに足りない。換言すれば、当裁判所は、「同被告に過失がある」との心証を懐かぬこと前段判示のとおりであるが、逆に「同被告に過失がない」ことにつき被告会社に証明責任ある免責の抗弁の関係でも、やはり十分な心証を得ることができないのである。
(二) 以上の次第で、被告会社主張の免責の抗弁はその他の点を判断するまでもなくなく理由がない。(倉田卓次 並木茂 小長光馨一)