東京地方裁判所 昭和43年(ワ)406号・昭43年(ワ)6476号 判決
および右各金員に対する昭和四一年一二月一日から完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。
二、反訴被告中川は反訴原告会社に対し金七一、六五五円およびこれに対する昭和四一年一二月一日から完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。
三、本訴原告らのその余の請求および反訴原告のその余の請求をいずれも棄却する。
四、訴訟費用は、原告金子、小林、渡辺と被告会社間においては全部被告会社の負担とし、原告中川と被告会社間においては本訴、反訴ともこれを三分し、その二を被告会社の負担とし、その一を原告中川の負担とする。
五、この判決一、二項は仮に執行することができる。
第二 当事者の申立
一、原告らの本訴請求の趣旨
「被告会社は
原告中川三夫に対し金一〇〇、〇〇〇円
原告金子常子に対し金一、〇〇〇、〇〇〇円
原告小林千代に対し金一五〇、〇〇〇円
原告渡辺二三子に対し金一五〇、〇〇〇円
および右各金員に対する損害発生の翌日である昭和四一年一二月一日から完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。」との判決ならびに仮執行宣言。
二、被告会社の反訴請求の趣旨
「原告中川(反訴被告)は被告会社(反訴原告―以下ただ原被告という)に対し金二三八、八五〇円およびこれに対する損害発生の翌日である昭和四一年一二月一日から完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。」。との判決ならびに仮執行宣言。
第三 争いない事実
一、物損自動車事故発生
発生時 昭和四一年一一月三〇日午後七時五分頃
発生場所 東京都目黒区柿ノ木坂一―一二―六先の交通整理のない、見とおしのきかない交差点
第一事故車 被告会社所有のトヨペット普通乗用車品川五う〇四九一号
右運転者 被告会社の従業員花岡衛、昭和一二年七月二七日生
第二事故車 軽四輪貨物自動車六品川四四九〇号
右運転者 原告中川、昭和一五年五月一七日生
受傷者 原告中川
原告金子 明治四四年七月二五日生(第二事故車同乗)
原告小林、大正七年六月二九日生(同)
原告渡辺二三子、大正一四年七月一四日生(同)
訴外手塚ヒサ、大正一三年三月二一日生(第一事故車同乗)
訴外小杉いと、明治三四年一月二五日生(同)
態様 北進の第一事故車と東進の第二事故車とが出会がしらの衝突をしたために右六名は受傷、事故車らは破損した。
二、責任原因について
被告会社は本件第一事故車の運行供用者である、
第四 争点
一、原告らの主張(本訴請求原因)
(一) 責任原因
本件事故は第一事故車の運転者花岡が時速三〇キロメートル以上の高速で無灯火の上、一時停止もしくは減速徐行もすることなく本件交差点に進入した重大な過失によるもので、もとより被告会社は自賠法三条により原告らの損害を賠償する責に任じなければならない。
(二) 損害の発生
1 原告中川の慰藉料
金一〇〇、〇〇〇円
加療八〇日を要する脳震盪症頭部挫創の傷害を受け、衝突直後は意識を失い、一八日間の入院を要した。
2 原告金子の慰藉料
金一、〇〇〇、〇〇〇円
脳震盪症、右前腕骨々折、両下腿挫創の傷害を受け全治まで約一年間の治療を要し、その間右腕を全く使用できず、なお後遺症の不安が存する。
3 原告小林の慰藉料
金一五〇、〇〇〇円
右肩、右膝挫傷の傷害を受け全治まで約一カ月間を要し、さらに約二カ月間は足の不自由をしのばなければならなかつた。
4 原告渡辺の慰藉料
金一五〇、〇〇〇円
脳震盪症、下口唇部挫創、右肩挫傷の傷害を受け、一〇日間入院治療を要し、その後一カ月間は痛みが続き、その間家事労働が全くできなかつた。
二、被告会社の主張
(一) 本訴に対し、
1 免責
本件事故は第二事故車を運転する原告中川が時速約三〇キロのまま、その上無灯火で一時停止または徐行することなく、明らかに道幅のせまい道路から本件交差点に進入した重大な運転上の過失によるものであつて、第一事故車を運転する花岡に全く過失はない。また被告会社は同人の選任・事業の監督ないし営業車の運行に関して十分注意をはらつており、運行供用者として過失はない。そして第一事故車には構造上の欠陥・機能の障害はなかつたから、被告は原告らの損害賠償の責に任ずべくもない。
2 過失相殺
かりに被告会社に何らかの責任があるとしても、右のように原告中川の過失は重大であるから、原告中川の損害について過失相殺が斟酌されねばならない事案である。
(二) 反訴請求原因
1 責任原因
本件事故は前述のとおり、原告中川の過失により、第二事故車の前部を第一事故車の左側前部に衝突させたもので、その結果第一事故車を左斜前方に暴走させ、同所附近のコンクリート壁に衝突させたもので、原告中川は民法七〇九条により被告会社に生じた損害を賠償する責に任じなければならない。
2 損害の発生
右衝突により第一事故車は破損し、これに乗客として同乗していた小杉いとは加療約二〇日(入院一四日)を要する脳震盪症、左膝部裂創の傷害、同じく手塚ヒサは全治約一週間を要する下顎部、右下腿部打撲傷の傷害を受けた。
右により被告会社が蒙つた損害はつぎのとおり計二三八、八五〇円である。
イ 車両修繕費 一四六、〇五〇円
ロ 乗客小杉いとの治療費の出捐
八九、一〇〇円
ハ 乗客手塚ヒサの治療費の出捐
三、七〇〇円
第五 争点に対する判断
一、本訴について
(一) 責任原因
左のとおり本件事故は第一事故車の運転者花岡と第二事故車の運転者原告中川と双方の過失により惹起されたものであるから、被告会社主張の免責は成立せず、被告会社は運行供用者として自賠法三条にもとずき、原告らに生じた損害の賠償の責に任じなければならない。
すなわち本件交差点は、交差する双方の道路の幅員各約4.8メートルの歩車道の区別ない舗装道路で、第一事故車進行路が約三度ないし五度の登り坂、第二事故車進行路は平担であり、双互の見とおしは、南西角が大谷石を基礎としてその上に土盛した土堤が築かれ、その上に生坦の樹木が約二ないし三メートル程度に植栽されているため、きわめて不良である。しかも当時照明設備は存在しなかつた。従つて、十分減速徐行ないし一時停止して側方を確認し安全をはからねばならないのに双方とも左右側方の確認を怠り時速約三〇キロのままほぼ同時に交差点に進入したため、第一事故車の前部バンパー左側附近と第二事故車の右側面前部附近とがほとんど直角に接触し、その衝撃のため、さらに双方の車両とも北東角のコンクリート塀に痕を残すほど激しくぶつかり停止したもので、その過失割合は左右の関係、登り坂など現場の状況コンクリート塀へ激突停止した位置などから第一事故車七、第二事故車三、とするのが相当である。
(資料、《略》)
(二) 原告らの損害
1 原告中川の慰藉料
金一〇〇、〇〇〇円
脳震盪症頭部挫切創により一八日入院、その後約一カ月の治療を要した。
2 原告金子の慰藉料
金八〇〇、〇〇〇円
脳震盪症、右前腕骨々折、両下腿挫創の傷害のため一カ月入院し、手術、ギブスによる固定を余儀なくされ、その後一年二カ月の通院を要し、現在肘関節は伸展一三〇度であり運動障害が残てついる。
3 原告小林の慰藉料
金三〇、〇〇〇円
右肩、右膝挫傷ならびにこれにより外傷性漿液右膝関節炎のため約一カ月間の治療を要した。
4 原告渡辺の慰藉料
金五〇、〇〇〇円
脳震盪症、下口唇部挫創、左肩挫傷、前胸部のため一〇日間入院治療を要した。
(資料《略》)
(三) 原告中川についての過失相殺
前記認定のとおり原告中川についても過失があつたことが認められ、その過失割合ならびに治療費約一三万円がすでに全額被害者請求による強制保険金で填補されていることを考慮すると、右認定の慰藉料の半額金五〇、〇〇〇円を被告会社負担とするのが相当である。
(資料《略》)
二、反訴について
(一) 責任原因
前記認定一の(一)のとおり、原告中川に運転上の過失が明らかに認められるから、同人は民法七〇九条により本件事故によつて被告会社に生じた損害の賠償の責に任じなければならない。
(二) 被告会社の損害
金二三八、八五〇円
被告会社主張のとおり認められる。
(資料《略》)
(三) 過失相殺
本件事故について被告会社の運転者花岡にも過失があることは前認定のとおり明かであり、とりたてて原告中川から過失相殺の主張はないけれども、みずからの責任原因を否定し、さらに右花岡の過失のあることを主張していることでもあるし、職権で過失相殺を適用するのが相当である。そして前記認定の被告会社側である従業員花岡の過失割合を考慮すると被告会社の損害のうち七〇%を過失相殺により減額すべきである。そうすると原告中川の負担すべき額は右認定の損害額の三〇%金七一、六五五円となる。
三、結論
そうすると本訴請求については原告中川金五〇、〇〇〇円、原告金子金八〇〇、〇〇〇円、原告小林金三〇、〇〇〇円、原告渡辺金五〇、〇〇〇円と各遅延損害金の限度で認容すべきであり、また反訴請求については金七一、六五五円の限度で認容すべきである。
訴訟費用について、民訴法九二条、九三条、九五条、仮執行宣言に関し同法一九六条を適用した。(舟本信光)