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東京地方裁判所 昭和43年(借チ)1081号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔主文〕 申立人の本件増改築(別紙のとおり)を許可する。本裁判確定の日の翌月分から、賃料を3.3平方米につき一ケ月金五〇円(共用部分については、その半額)と定める。

〔決定理由〕一 申立人は相手方等の共有にかかる品川区大井二丁目一六番六号(登記簿上の表示、三九七五番の七)57.55坪のうち、その東南約一四坪を普通建物所有の目的で賃借りし、その地上に木造瓦葺平家建床面積8.5坪の建物を所有し、これに居住しているが、右建物が老朽化してきた上に狭隘にすぎるので、本件増改築を計画し、相手方の承諾を求めたところ拒絶されたので、本件申立てをするというのである。

二 本件申立に対する相手方の主張は次のとおりである。

(1) 相手方共有にかかる前記57.55坪は、もと酒井某の所有であつた。その当時角田某が酒井より右土地を借り受け、地上に二戸の建物を所有し、申立人および西山良雄がそれぞれ各一戸の建物を賃借していたが、昭和二二年右土地の所有権は酒井の物納により大蔵省に帰属し、さらに昭和二七年六月頃右西山良雄に払下げにより移転した。(移転登記は昭和二八年九月一八日)一方地上の建物は申立人および右西山が昭和二八年八月四日それぞれ賃借建物を角田から譲渡を受けて所有権を取得した。

(2) ところで、もともと酒井と角田の間の土地使用関係は、使用貸借契約によるものであつた。従つて、申立人もまた借地権を取得していない。

仮りに、角田が借地権を有していたとしても、申立人が角田から建物の所有権および借地権を譲り受けるに際して、その時の土地所有者である西山良雄の承諾を得ていないから、西山には対抗できない。従つて、また昭和四四年二月二二日西山の死亡により本件土地の所有権を相続により承継した相手方等にも対抗できない。

(3) 以上の主張が認められず、申立人と相手方等との間に借地契約が存するとしても、増改築制限の特約が存しないから、本件申立ては不適法である。

(4) なお、申立人は借地の範囲を一四坪と主張するが、その一部は相手方等との共用地である。

三 本件資料によれば、次の事実を認めることができる。

(1) 前記一および二の(1)記載の事実

(2) 昭和二五年頃本件土地が国から借地権者に払下げになることを知つた申立人および西山良雄は、当時角田の所有家屋をそれぞれ賃借りしていたので、角田からそれぞれ賃借建物を買取ることになつた。そして、右建物の買取りの話はきまり、それぞれ建物の所有権を取得した。ところが、本件土地の払下げについては、右西山が本件土地全部(申立人および西山の各賃借建物双方の敷地)について、大正一〇年から前所有者酒井から賃借中である旨を上申して国から払下げを受けてしまつた。そのため、その後両者の間で申立人所有建物の敷地部分の処理に関して話合いがなされたが、結論を得ないまま、申立人は西山に昭和二八年末頃一四坪分の賃料として、一坪あたり一九円の割合の金額を提供し、受領を拒絶されたため供託をして現在にいたつている。

(3) 従前の土地所有者酒井と建物所有者角田間の土地使用関係は明らかではない。

(4) 西山良雄は昭和四四年二月二二日死亡し、相手方等が相続により本件土地の所有権を取得した。

以上の事実を前提として、申立人の土地使用関係を考察する。まづ申立人は、その賃借建物の敷地部分の払下げを予定して、建物を買受けたのであるが、西山が全土地の払下げを受けた後、西山と接渉はしたものの結局昭和二八年末頃西山から土地を借り受けることにして、賃料の提供をしたものである。一方西山良雄は、申立人がその賃借建物を角田から買い受けることとしたことを知りながら(同時にともにそれぞれ賃借建物を買い受けたものであるから、当然以上のことを知つていたものと推認される。)その敷地部分の土地まで払い下げを受けたものである以上、申立人にその買い受けた建物の敷地部分に借地法の適用を受けるべき借地権を設定する意思があつたものと推定すべきであり、少なくとも借地権を設定したものとして申立人の土地使用を認容しなければならないものというべきである。従つて、申立人はその所有建物の敷地について、昭和二八年末頃建物所有を目的とし、期間の定めのない賃借権を取得したものということができる。

ところで、右借地権の及ぶ範囲についても、明示的な合意が存在しないので、従前申立人および西山がそれぞれ建物賃借当時の土地使用状況のままで定めれらたものと解すべきであるが、本件資料によれば、西山は従前の建物を取り毀し、新築をしたため、従前の両建物の敷地の境界が不明となつている。そこで、本件においては一応現存建物の中間をもつて、一応その境界とする。そして井戸および両建物の間の露地は従前から両者の共用とされてきたことが認められるので、井戸の周辺および西山方から井戸への通路の部分は、相手方等においても使用できるものとし、両建物の間の露地は相互に使用できる関係にあるというべく、従つて、申立人の借地の範囲は、約一七坪であるが、そのうち相手方等の共用の認められる土地が若干あるものと解せられる。

四 なお、本件においては、増改築制限の特約の存しないことも右認定から明らかであるが、現実に申立人の改築計画について相手方から異論があり、本件紛争を生じている以上、申立ての利益があるものと認める。

五 以上によれば、相手方の主張はいづれも理由がなく、本件申立ては適法であり、本件申立てを不適当とする理由は存在しない。よつて、本件申立てにかかる改築を許可するのを相当とする。

六 附随処分については、前認定の事情からみて、鑑定委員会の意見に従い、金銭給付の要はないものとし、かつ、賃料については3.3平方米につき一ケ月五〇円と改めるものとする(借地面積が正確に測定されていないので、さし当り専用部分を一四坪、共用部分を三坪として計算し、支払うべきものとし、今後測量の上清算するものとする。)

(西村宏一)

改築計画

現存建物を取り毀し、木造瓦葺二階建居宅一棟床面積一、二階とも27.26平方米(8.25坪)を新築する。

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