東京地方裁判所 昭和43年(借チ)1098号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔決定理由〕一、本件申立の要旨は、次のとおりである。
申立人らは相手方から東京都北区西が丘一丁目一五八番二宅地二〇六九平方米のうち九九平方米(実測九四平方米)を賃借し、同地上に別紙記載の現存建物を所有し、これを別紙記載のとおり改築しようと計画している。本件賃貸借に増改築を制限する旨の特約はないのであるが、相手方はその存在を主張し、承諾料として七五万円を要求する。申立人らはこの要求には応じられないので相手方の承諾に代わる許可を求める。
二、取調べた資料によれば、昭和二五年四月二日小貝儀三郎が、相手方所有の前記土地上にあつた別紙記載の現存建物を相手方から買い受け、同時に右土地を相手方から賃借し、その後申立人らが遺贈により右賃借権を承継したことが認められる。増改築を制限する旨の特約の存在については、右借地契約につき賃貸借契約書が作成されておらず、ただ相手方本人の供述によれば、契約成立当時小貝儀三郎は、そのうち又越すから増改築はしない旨述べていたというだけであつて、これだけで直ちに右特約の存在を認めることは困難であるが、本件における相手方の態度からみても、相手方の承諾なしに改築を行なえば紛争を生ずる虞は充分にあると認められる。よつて本件申立は適法としてその許否について判断する。
三、申立人らの計画する本件改築は土地の通常の利用上相当なものと認められる。……
四、次に附随の処分について考える。
1 鑑定委員会は本件土地の更地価格を3.3平方米あたり二〇万円、借地権割合を七〇%とし、本件改築により、借地期間が建物とりこわしの時から二〇年となることから、二〇年の更新であれば借地権価格の一〇%を借地人が地主に支払うことを慣行上妥当とし、本件の場合は残存期間は本来は一一年であるがこれを調整して六年とした上、右金額から六年の残存期間に応ずる金額を控除し、結局借地権価格の約七%にあたる三〇万円を財産上の給付として申立人らから相手方に対し支払を命ずることを妥当としている。
2 右意見は、通常の借地期間の更新の場合に借地人から地主に借地権価格の一〇%程度の金額を支払う慣行が存在することを前提としていると解せられるが、このような慣行が仮りにある程度存在するとしても、これをただちに裁判の基礎とすることの合理性には借地法の趣旨に照しなお疑問の余地なしとしない。そこで当裁判所は右意見を参考としなお残存期間に関する前記の事情、申立人らの本件土地使用が住宅専用であつて営利性のないこと、他方相手方が前記の通り本件土地を自己使用のため必要としている事情等取り調べた資料によつて認められる一切の事情と後記のとおり賃料増額を併せて命ずることを考慮し、従来の裁判例にも徴し、本件においては、財産上の給付として、申立人らから相手方に対し、鑑定委員会の意見による本件土地の借地権価格の約三%にあたる一三万円の支払を命ずることを相当と認める。
3 賃料については鑑定委員会の意見に従い、昭和四三年四月以降3.3平方米あたり一ケ月五〇円であつたものを、六〇円に増額することとする。(白石悦穂)
改築の内容
次の現存建物をとりこわし、次の新築建物を建築する。
(現存建物)
木造瓦葺平家建居宅
五一、二三平方米(一五、五坪)
(新築建物)
木造亜鉛鉄板葺二階建居宅
一階 四四、七二平方米(一三、五坪)
二階 二四、八四平方米(七、五坪)