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東京地方裁判所 昭和43年(借チ)20号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔決定理由〕四、そこで、附随処分の要否、内容について検討する。

申立人は、本件借地条件変更の裁判を受けて堅固な建物を築造することにより、本件土地のより有効的な利用を図ることができ、その継続的、安定的な利用も殆んど半永久的に保障されることになり、また、本件土地の借地権を第三者に譲渡せんとする場合にも、現在の非堅固建物所有の借地権価格よりも高い対価を得て譲渡することができるようになる。一方相手方は、存続期間の満了又は借地上建物の朽廃による借地権消滅の期待は失われ、これを理由に本件土地の返還を受けて自ら使用し又は相当の対価を得て新たに第三者に賃貸することによつて得べかりし利益を殆んど失い、申立人が本件借地権を第三者に譲渡せんとする場合には、借地法第九条の二第三項により、堅固建物所有の借地権の対価を支払つてこれを譲受けるか、右譲渡を承諾するかの選択に迫られ、さらに、本件土地の所有権を第三者に譲渡せんとする場合には、堅固建物所有の借地権の負担の附着したものとして、その対価は現在より低下することは免れない。その他、本件借地契約には、賃料以外に、権利金その他これに類するような対価が授受されていないことなどを考慮すると、本件申立を認容するに当つては、申立人から相手方に対し相当額の財産上の給付をさせる必要があるとともに、賃料増額について考慮する必要がある。

(1) そこで、まず財産上の給付について検討する。鑑定委員会は、本件土地の更地価格を3.3平方米当り金六〇万円と評価し、非堅固建物所有の借地権価格をその七五パーセントとし、右借地権価格の八パーセントに当る金額の更新料(但の残存期間に対応する分を控除)及び更地価格の八五パーセントに当る堅固建物所有の借地権価格と前記の非堅固建物所有の借地権価格との差額の七分の二に当る金額との合計額金九六一万八、〇〇〇円を給付額とするのが相当であるとしている。しかし、本件土地の更地価格について、申立人提出の不動産鑑定評価書によれば、3.3平方米当り約金四五万円と評価している。そこで当裁判所は、鑑定委員会の意見書中の取引事例の取引価格の修正現価と本件土地並びに右取引事例地の固定資産税評価額、相続税財産評価額を相互に比較検討して比準価格を求め、前記不動産鑑定評価書の意見も参照し、本件土地の価格を3.3平方米当り金五〇万円とする。

また、前記鑑定委員会の意見にある更新料は、単に契約の更新右いは期間の延長の対価ではなく、借地利用の対価及び借地の継続的、安定的利用の事実上の保障の対価の趣旨をも含むものであろう。したがつて、それならば、これは前記の財産上の給付を必要とする事情に還元して、後記の方法による給付額を定めるに当つて考慮すべきものとするのが妥当であり、これを独立の給付額算定の基準とするのは妥当でない。

そこで、前記附随処分を必要とする事情のうち、財産上の給付額の算定の基礎となる主要な事情は、申立人に帰属する借地権価格の上昇と相手方の有する底地価格の低下であり、それは、結局本件申立を認容して借地条件を変更することにより、相手方から申立人にその価格が移転するのに等しい。そしてその価格は、その時の社会経済的事情その他当事者間の特有の事情に左右されるものではあるが、現在東京都内に於て或る程度慣行的な基準となりつつある非堅固建物所有の借地価格を一応の基準とし、前記価格を更地価格の一〇パーセントとするのが相当であると考える。(この点は鑑定委員会の意見も同じである。)但し、本件建物の前面道路は約四米であるので、建築基準法五八条の制限により、現在建物を築造するとしても二階建以下であるので、通常の堅固建物所有を目的とする借地に比し、その効率的利用は制限されている。鑑定委員会の意見は右の事情を理由に前記価格の七分の二を効用増加利益として給付額に算入すべきであるとしているが、当裁判所は通常高層建物について採用されている二階建以下の場合の効用比率を参照し、権利金等の支払のないこと等の借地に関する従前の経過及び後記のとおり、三階建以上の建物に増改築することを制限する借地条件を附すること等を考慮し、前記価格(更地価格の一〇パーセント)の一〇分の六に相当する金額を給付額とするのが相当であると考える。そこで、本件土地全体については金五九四万円とする。

(2) 次に、賃料について検討する。当事者間の借地関係の継続を前提とする当事者双方の利害は、主として、申立人の本件土地のより有効な利用による収益の増大として現われるところ、本件のように、借地条件の変更によつて、土地所有権が殆んど賃料徴収権としての側面しか有しなくなる場合には、その点の利害の調整として、前記利益の一部を還元する意味で、賃料額の点で考慮されるべきである。鑑定委員会の意見は賃料を3.3平方米当り一箇月金一四六円に増額するのを相当とするというのであるが、これは更地価格を3.3平方米当り金六〇万円として算出したものであり、当裁判所は前記のとおり更地価格を金五〇万円と評価するので、これを基礎として同様の方法で算定した3.3平方米当り一箇月金一二五円とし、本件土地全体についてはその合計額金二万四、七五〇円に増額する。

(3) 借地契約の存続期間については、借地法第二条等の趣旨に従い、借地契約の目的に関する借地条件の変更の効力が生じた時から三〇年とする。

(4) 前記とおり、現行法令上は、本件借地上に建築する建物は二階建以上に限られ、申立人の計画建物も二階建であり、これを考慮して前記の財産上の給料額も定めたので申立人が今後本件土地の事情の変更等により、三階建以上の建物に増改築するときは、相手方の承諾を得なければならないとするのが相当であるので、これを本件借地契約の条件として附することとする。(福嶋登)

別紙

目録

(一) 土地

東京都渋谷区宇田川町一四番一宅地

地積      797.61平方米(241.28坪)

右の仮換地地積 654.54平方米(一九八坪)

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