東京地方裁判所 昭和43年(借チ)2082号・昭43年(借チ)2067号 決定
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〔決定理由〕(2) 鑑定委員会は、本件建物が空家である場合の建物の価格を金三二万八、〇〇〇円と評価し、本件土地の借地権価格については、更地価格を三三平方米につき金一四万円と評価したうえ、二パーセントの建付減価を行ない、建付地価格金一三万七、〇〇〇円の六〇パーセントに当る金八万二、〇〇〇円が借地権価格であると認めて、本件土地全部の借地権価格の合計は金二九三万一、五〇〇円であるとするのが相当であるとしている。そして本件建物は、前記認定のとおり、第三者に賃貸されているので、本件建物および土地の収益価格並びに前記の本件建物が空家である場合の建物および借地権価格に借家権割合二〇パーセントを乗じた価格を調整して、右の借家権価格を金六〇万円と評価し、前記建物および借地権価格の合計額金三二五万九、五〇〇円から第三者に対する賃借権の譲渡する場合に賃貸人に給付されるべき金額金二九万円(前記借地権価格の一〇パーセント)および右借家権価格金六〇万円を控除した金二三六万九、五〇〇円をもつて、本件建物および土地賃借権の対価とするのが相当であるとしている。
(3) 当裁判所も、鑑定委員会の意見のとおり、本件建物の空家としての価格は、右建物の資材経過年数、保存の程度等から考え、金三二万八、〇〇〇円と評価し、本件土地の更地価格は3.3平方米につき金一四万円と評価するのが相当であると考える。
ところで、前記鑑定委員会の意見によれば、本件建物が空家である場合の借地権価格は建付地価格の六〇パーセントに相当するというのであるが、これは借地権が第三者に譲渡される場合の一般的な借地権価格である。本件建物とともに土地賃借権を申立人(賃貸人)に譲渡する場合の借地権価格は、前記第三者に譲渡する場合の借地権価格から相当減額すべきである。そして、前記のとおり、第三者に譲渡する場合に賃貸人に給付されるべき金額をもつて、右の減額すべき額に相当とする鑑定委員会の意見も合理性があるので、右意見にしたがい、本件建物が空家である場合の借地権価格は金二六四万一、〇〇〇円とするのが相当である。
ところが、本件建物は前記認定のとおり、申立外有信精器工業株式会社に賃貸中であり、本件資料によれば、右申立外会社は、一旦は本件建物から立退く意思を表明したが、その後これを撤回し、立退きを拒否していることが認められるので、右申立外会社の建物賃借権は消滅していないものと推認される。したがつて右建物を申立人(賃貸人)に譲渡する場合は、申立人(賃貸人)が右の借家関係を承継すべきであるから、右借家人居着きのまま譲渡することになる。そこで、右の借家権を価格に換算して、前記の空家としての本件建物および借地権価格から控除しなければならない。この点について、前記鑑定委員会の意見にある算定方法は、鑑定評価の基準として一般に採用されている方法として妥当なものである。もつとも右意見にある収益価格には敷金の運用益は考慮されていない。ところで本件資料によれば、相手方(賃借人)が、本件建物の賃借人である前記申立外会社に本件建物からの立退きを求めるに当つて移転先として準備した新建物は、賃料は月額金五万円、権利金は金一五万円、敷金は金一〇万円とする条件のもので、相手方(賃借人)は、右の権利金に相当する金一五万円と引越費用金三万四、〇〇〇円を移転補償として提供し、本件建物賃貸借の敷金として交付を受けた金一〇万二、〇〇〇円は返還するということで、右申立外会社とほぼ合意に達していたことが認められる。そこで右の新建物はほぼ本件建物と同程度のものであると考え、前記の借家権価格を、借家人が本件建物から立退く場合の移転補償費という面から考えると、新建物の敷金は本件建物のそれとほぼ同額であるので、別に補償の必要はないが、権利金一五万円引越費用金三万四、〇〇〇円のほかに、新建物の賃料と本件建物の賃料の差額の二年分に相当する金三八万四、〇〇〇円を補償するのが相当であると考えるので、移転補償額は、右の合計金五六万八、〇〇〇円となり、これは、前記鑑定委員会の意見にある収益価格および借家権割合を乗じて得た価格の平均に近い価格である。
したがつて本件建物および土地賃借権の対価は、前記の空家としての本件建物および借地権価格の合計金二九六万九、〇〇〇円から、右の移転補償費金五六万八、〇〇〇円および本件建物賃貸借の敷金一〇万二、〇〇〇円を控除した金二二九万九、〇〇〇円とするのが相当である。
なお本件建物については、前記のとおり、借家人が居住して直接占有しているので、相手方(賃借人)はこれを申立人(賃貸人)に売渡しても現実の引渡をすることはできない。しかし、申立人(賃貸人)は本件建物の売渡を受けることによつて当然に右建物賃貸借契約上の地位を承継し、さらに右建物の所有権移転登記を得れば借家人に対しても賃貸人たる地位を主張することができることになり、他方相手方(賃借人)は右建物賃貸借関係から離脱することになるので、この裁判においては指図による引渡を命ずる必要はないと考える。(福嶋登)
別紙
(一) 土地
東京都大田区多摩川一丁目一、一七七番一
宅地 836.56平方米(253.06坪)
の内114.87平方米(34.75坪)
(二) 賃借権
右土地に対する堅固でない建物の所有を目的とする賃借権
(三) 建物
東京都大田区多摩川一丁目一七七番
家屋番号 三七番
木造瓦葺平家建居宅
床面積 登記簿上 47.93平方米
(14.5坪)
現況 64.45平方米
(19.5坪)