東京地方裁判所 昭和43年(借チ)2116号・昭43年(借チ)2106号 決定
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〔主文〕右内藤金安から松原チヨに対し別紙(二)の賃借権および同(三)の建物を代金一九〇万円で売渡すことを命ずる。
右内藤は松原に対し、同人から前項の金員の支払を受けるのと引換に前項の建物の所有権移転登記手続をせよ。
右松原は内藤に対し、前項の所有権移転登記手続と引換に、金一九〇万円の支払をせよ。
〔決定理由〕一、右内藤金安からの借地権譲渡許可申立および松原チヨからの建物および借地権譲受申立はいずれも適法と認められるので、借地法第九条の二第三項の規定により建物および借地権の対価を定めて松原チヨへの譲渡を命ずべきである。
二、そこで本件建物および借地権の対価について検討する。
1 資料によれば、本件借地契約の期間は昭和四六年八月末日までであること、内藤金安は昭和三二年五月一日、前借地人から本件地上建物を買い受けて借地権を承諾したが、その際名義書替料等の金銭の授受はなかつたこと、本件建物は一棟二戸建で、うち一戸は申立外大森栄吉に昭和三二年五月から賃貸し、現在の賃料月八、〇〇〇円、うち一戸は申立外鈴木勝馬に昭和三八年六月から賃貸し、敷金二万円、現在の賃料月一万四、〇〇〇円であることが認められる。
2 鑑定委員会は、まず借家人両名が任意退去することを前提とし、本件建物が空家である場合の価格について次のとおり算定する。本件更地価格は建物敷地部分3.3平方米あた一二万円、私道部分は3.3平方米あたり二万円、借地権価格はその六五%として合計四二八万九、一八〇円、本件は地主が譲受ける場合であるから、いわゆる名義書替料相当額としてその約二〇%を控除し、借地権価格は三四三万一、〇〇〇円、建物価格は復成式評価により3.3平方米あたり四、〇〇〇円とする。建物は現状16.25坪であるから六万五、〇〇〇円となる。結局右譲渡の対価として右の合計三四九万六、〇〇〇円を相当とする。しかし、他方現在の家賃収入月二万二、〇〇〇円を基準とし、収益還元法によつて本件建物および借地権の価格を算定すると二三六万四、一三三円となる、というのである。
3 他方、内藤金安提出の不動産鑑定士高野栄作成の鑑定評価書によれば、本件譲渡価格は次のとおり算定すべきであるという。すなわち、まず本件建物は全部賃貸中であるから、収益価格を標準とし、復成現価から借家権相当額を控除した額を参考として比較考量の上通常取引価格を算定し、これからいわゆる名義書替料相当額を控除して決定すべきである。
そこで収益価格を算定すると正常価額は一七一万二、一六〇円、これから名義書替料相等額としてその二〇%を控除すると一三六万九、〇〇〇円となる。また復成現価を算定すると、更地価格については鑑定委員会と同じであるが、借地権価格はその六〇%として三九五万八、三二〇円、建物価格も鑑定委員会と同じく六万五、〇〇〇円と評価し、借家権の附着による負担を相続税評価基準にしたがい四〇%としてこれを控除すると正常価格は二四一万三、九九二円、これから名義書替料相当額として前記借地権価格の二〇%を控除すると、本件譲渡価格は、一六二万二、〇〇〇円と算定される。右の両価格を比較検討すると、結局収益価格による一三六万九、〇〇〇円を相当とするというのである。
4 当裁判所は、これらの意見を参考とし、次のとおり判断する。
(一) 鑑定委員会は本件建物の前記借家人両名が本件譲渡の時までに任意立退くことを前提とするが、そのような予測を確実視すべき根拠はない。したがつて、本件建物には借家権が附着し、これによつて土地建物の利用方法が制約されていることを評価の前提とすべきである。
(二) この場合の評価方法としては、対象物件の収益力は既に現実化されており、かつ借家権の存在によつてその利用方法は当面限定され、その収益力を増加させることもこれによつて相当制約されているのであるから、前記高野不動産鑑定士の意見のとおり収益還元法を基本とし、それ以外の方法による算定結果を参考とすることが相当である。
(三) 右のような見地から前記各意見を総合検討すると、本件建物および借地権の第三者への譲渡価格としては二四〇万円を相当とし、地主が買受ける価格としては、借地権の残存期間が約二年であること、建物も相当老朽していることその他の事情を考慮し、その二〇%を減額した一九二万円を相当と認める。さらに本件譲渡により敷金返還債務が承継されることとなるので前記借家人鈴木勝馬の敷金二万円を右金額から控除し、本件譲渡の対価を一九〇万円と決定する。
(白石悦穂)
(一) 土地
東京都大田区下丸子二丁目二〇四番一ないし三
宅地1398.34平方米のうち
197.88平方米(59.86坪)
(うち19.37平方米=5.86坪は私道部分)
(二) 借地権
右土地に対する普通建物所有目的の賃借権
(三) 建物
右借地上にある家屋番号二〇四番七
木造瓦葺平家建居宅
床面積 登記簿上46.28平方米(14坪)
現況53.71平方米(16.25坪)