東京地方裁判所 昭和43年(借チ)30号 決定
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〔決定理由〕現在借地権を設定する場合に、堅固な建物の所有を目的とするのを相当とすべき客観的事情にあるかどうかを検討する。
本件土地は、南方の高台にはさまれた幅約一〇〇米余の窪地であり、附近は二階建又は平家建の居宅あるいは共同住宅が密集しており、道路状況も整理されていない。したがつて、都心に近いにも拘らず、商業地として成熟するには至つていない。したがつて、都市計画の施設としては、住居地域、住居専用地区、準防火地域、第三種容積地区、第三種高度地区に指定されている。そして、本件土地の南方及び北方の高台には、鉄筋コンクリート造の高層或いは中高層の堅固建物が立ち並んでいるが、本件土地附近は右のような堅固建物は、数棟が点在しているにすぎないので、現在は、まだ、堅固建物の敷地として利用するのが通常の利用方法であるとはいえない。したがつて現に附近の土地の利用状況が変化しているとは認められない。しかし、本件土地は、前記のとおり都心に近く、店舗、事務所街として発展している桜田通りから約二〇〇米の地点にあり、現在、鉄筋コンクリート造の堅固建物で建築中のものもあり、都市計画の施設及び道路等との関係から建築基準法上、高層建物の建築は制限されざるを得ないが、申立人の計画するような中高層の建物の敷地として利用するには相当な状況にあり、近い将来堅固建物が増加することも予想されるので、現在借地権を設定する場合は堅固な建物所有を目的とするのを相当とする状況にあると認められる。
相手方は、本件建物は朽廃した旨主張するが、本件資料によれば、本件建物が老朽化していることは認められるが、現在なお倉庫及び住居として使用されており、いまだ朽廃しているとは認められない。また、相手方は、存続期間の満了に際しては、更新を拒絶する予定である旨主張するところ、右更新拒絶につき正当事由があるかどうかを現段階で判断することは困難であるが、現在の資料では、契約が更新されない可能性は少ないといわなければならない。したがつて以上の他、借地に関する従前の経過等にも、本件借地契約の目的を変更するのを不相当とする事情は見当らない。したがつて本件申立は認容すべきである。
三、そこで、附随処分の要否、内容等について検討する。
(1) まず、財産上の給付について考える。本件借地契約の目的を変更することによつて、申立人の有する借地権の価格は上昇し、本件土地のより有効な利用が永続的に保障されるに反し、相手方の有する底地価格は低下し、借地権消滅による土地返還の期待は殆んど失われることになる。したがつて、本件申立を認容する裁判により、相手方から申立人に対し、一定の価値が移転するものということができる。そして、それは、単に地代の増額によつて償われるものではないから、この際申立人人から相手方に対し、財産上の給付を命ずべきである。
そこで、給付額について考えるに、申立人は、前記のとおり、権利金として金一万五、〇〇〇円を支払つているけれども、その後の借地に関する経過、ことに本件借地契約をめぐる紛争及び訴訟上の和解の事情等を考慮すると、右金額は給付額算定の特別の根拠とする必要はないと考える。それ故、当裁判所は、前記諸般の事情を考慮し、更地価格については、3.3平方米当り金一四万円とする鑑定委員会の意見の採用し、その一〇パーセントに当る金員の合計額金二一七万二、〇〇〇円(一、〇〇〇円未満切捨)を財産上の給付額とする。
(2) 存続期間については、借地法第二条等の趣旨に従い、借地契約の目的を変更する効力が生じたときから三〇年とし、賃料については、本件資料によれば、現行賃料は一箇月金一万、四〇〇〇円であり、低額であるので、鑑定委員会の意見を採用し、一箇月金一万八、七〇〇円とする。(福嶋登)
別紙
目録
(一) 土地
(1) 東京都港区麻布我善坊町一〇番の三
宅地 500.93平方米(151.37坪)の内329.75平方米(99.75坪)
(2) 同町一〇番四
宅地 183.20平方米(55.42坪)