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東京地方裁判所 昭和43年(特わ)458号 判決 1968年12月14日

本店所在地

東京都中央区銀座西三丁目三番地

株式会社 啓徳社

(右代表者代表取締役 田中良助)

本籍

新潟県北魚沼郡小出町大字四日町七四三番地

住居

東京都世田谷区松原町五丁目二〇番四号

株式会社啓徳社代表取締役

田中良助

明治四一年一一月九日生

右被告人らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官山同譲次出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告会社啓徳社を罰金一、〇〇〇万円に、被告人田中良助を罰金一二〇万円に各処する。

被告人田中良助において右罰金を完納しないときは、金二万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告株式会社啓徳社は、東京都中央区銀座西三丁目三番地に本店を置き、各種新聞及び雑誌の販売等を目的とする資本金八〇〇万円(但し、昭和四三年二月以降は一、六〇〇万円)の株式会社であり、被告人田中良助は、右会社の代表取締役としてその業務全般を統轄しているものであるが、同被告人は被告会社の業務に関し、法人税を免れるため岩田正夫、丸山清七、池田真雄各取締役、根本徳重監査役、紫原則光経理課長ら同会社の幹部と共謀のうえ、売上の一部或いは販売奨励金(歩戻し金)を除外して簿外預金を設定する等の方法により所得を秘匿し、

第一、昭和三九年四月一日から昭和四〇年三月三一日に至る事業年度において被告会社の実際所得金額は、別紙第一修正貸借対照表(昭和四〇年三月三一日現在の分)記載のとおり七、〇四四万〇、七〇二円であつて、これに対する法人税額は二、六四七万三、九七〇円であつたにもかかわらず、昭和四〇年五月二九日、同都中央区新富町三丁目三番地所在の所轄京橋税務署において同署長に対し、所得金額は二、三〇二万五、〇五四円であり、これに対する法人税額は八四五万七、〇六〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の法人税額と申告税額との差額一、八〇一万六、九一〇円については法定の納付期限内に納付せず、もつて不正な行為により右同額の法人税を逋脱した。

第二、昭和四〇年四月一日から昭和四一年三月三一日に至る事業年度において被告会社の実際所得金額は、別紙第二修正貸借対照表(昭和四一年三月三一日現在の分)記載のとおり九、八四六万六、一二三円であつて、これに対する法人税額は三、六〇一万三、五二〇円であつたにもかかわらず、昭和四一年五月二八日、前記所轄京橋税務署において同署長に対し、所得金額は三、四四一万一、〇七四円であり、これに対する法人税額は一、二三一万四、九三〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の法人税額と申告税額との差額二、三六九万八、五九〇円については法定の納付期限内に納付せず、もつて不正な行為により右同額の法人税を逋脱した

ものである。

(証拠の標目)

(一)  全般について、

一、登記官佐野真作作成の登記簿謄本

一、紫原則光の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(昭和四二年二月一四日付=以下四二・二・一四の如く略記)並びに検察官に対する供述調書二通

一、岩田正夫の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(四二・二・一四)

一、根本徳重の検察官に対する供述調書

一、森山茂の大蔵事務官に対する質問てん末書二通並びに検察官に対する供述調書一通

一、丸山清七、飯塚英司、樋口俊二の各大蔵事務官に対する質問てん末書

一、押収にかかる<秘>業況経過諸資料一綴(昭和四三年押第一、二七九号の一)、総勘定元帳計六冊(同号の五の一、二、六の一ないし四)、金銭出納帳四冊(同号の一四の一ないし四)並びに法人税確定申吉書三綴(同号の三四ないし三六)

一、被告人田中良助の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(四二・二・一四、四二・七・三一)並びに検察官に対する供述調書

一、被吉人田中良助の当公判廷における供述

(二)  別紙修正貸借対照表の各勘定科目のうち、

(1)  現金について、

一、大蔵事務官山口俊夫作成の簿外現金調査書

一、紫原則光の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(四二・六・二六)並びに同人作成の上申書一通(四二・六・二九)

一、根本徳重の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(四二・四・二六)

(2)  銀行預金について、

一、大蔵事務官山口俊夫作成の定期預金残高および同利息明細、普通預金残高および同利息明細表等並びに同大藤補寛作成の銀行調査書

(3)  売掛金について、

一、紫原則光の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(四二・六・一九)並びに同人作成の上申書一通(四二・六・二九)

(4)  貸付金について、

一、大蔵事務官山口俊夫作成の貸付金調査書

(5)  棚上債権について、

一、紫原則光の大蔵事務官に対する質問てん末書二通(四二・七・二〇、四二・八・一)並びに同人作成の上申書二通(四二・七・二〇、四二・八・七)

一、押収にかかる棚上債権帳一綴(前同号の二〇)

(6)  未収入金並びに立替金について、

一、大蔵事務官山口俊夫作成の簿外未収入金明細および立替金明細

(7)  繰越商品について、

一、紫原則光作成の上申書一通(四二・六・二九)

一、押収にかかる予算決算一綴(前同号の一二)

(8)  貯蔵品、未経過費用、建物造作、什器備品並びに営業権について、

一、紫原則光の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(四二・八・一)

一、押収にかかる法人税申吉書等一綴(前同号の三二)

(9)  保証預け金並びに未収受取利息について、

一、大蔵事務官山口俊夫作成の簿外未収入金および入室保証金調査書

(10)  出資金について、

一、根本徳重作成の上申書一通(四二・六・二九)

(11)  損金計上役員賞与について、

一、大蔵事務官山口俊夫作成の役員報酬および賞与調査書

一、押収にかかる給与関係資料一綴(前同号の二八)

(12)  限度超過交際費について、

一、大蔵事務官山口俊夫作成の交際費の損金不算入額の調査書

(13)  損金計上法人税等について、

一、大蔵事務官山口俊夫作成の損金計上法人税等の調査書(四〇年三月期)

(14)  買掛金について、

一、大蔵事務官梅崎俊行作成の買掛金調査書

一、押収にかかる浅草売店仕入帳一綴(前同号の一〇)、仕入帳二綴(同号の一九の一、二)並びに買掛金元帳一綴(同号の二一)

(15)  借入金について、

一、日本信託銀行銀座支店長中村清彦作成の証明書一通(記録NO七四)

一、紫原則光作成の上申書一通(四二・八・二八)

(16)  未経過受取利息について、

一、大蔵事務官山口俊夫作成の未経過受取利息調査書

(17)  前受手数料について、

一、紫原則光作成の上申書一通(四二・八・二八)

(18)  事業税未払金について、

一、大蔵事務官山口俊夫作成の事業税未払金の調査書並びに法人税額計算書

(19)  貸倒引当金、価格変動準備金、退職給与引当金並びに返品調整引当金について、

一、京橋税務署長黒沢次郎作成の証明書

(法令の適用)

被告人田中良助の判示各所為中、第一の事実は昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条により、その改正前の法人税第四八条第一項、刑法第六〇条に、第二の事実は昭和四〇年法律第三四号法人税法第一五九条第一項、刑法第六〇条に各該当するところ、所定刑中いずれも罰金刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項によりその合算額の範囲内で処断すべく、よつて同被告人を罰金一二〇万円に処し、なお罰金不完納の際の換刑処分については、刑法第一八条第一項により金二万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

被告株式会社啓徳社については、その代表者たる被告人田中良助が同会社の業務に関して前示違反行為をしたものであるから、判示第一の事実については昭和四〇年法律第三四号法人税附則第一九条により、その改正前の法人税法第五一条第一項に従い同法第四八条第一項の罰金刑を、また第二の事実については昭和四〇年法律第三四号法人税法第一六四条第一項に従い同法第一五九条第一項の罰金刑をそれぞれ科すべく、しかして右各違反行為は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項によりその合算額の範囲内において処断すべく、よつて同被告会社を罰金一、〇〇〇万円に処する。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 近藤暁)

別紙第一

修正貸借対照表

株式会社 啓徳社

昭和40年3月31日

<省略>

別紙第二

修正貸借対照表

株式会社 啓徳社

昭和41年3月31日

<省略>

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