大判例

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東京地方裁判所 昭和43年(行ウ)17号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕まず、被告の本案前の抗弁について判断する。

原告の先代北沢沢次郎が、その所有に係る別紙目録記載の農地を北沢音吉に使用させているのは賃貸借契約に基づくものであるとして、岡山県知事に対し右賃貸借契約の解約の許可申請をなし、同知事は、これを許可したところ、被告は、音吉から申し立てられた審査において、同人が右農地を耕作しているのは有効な賃貸借契約に基づくものではないから、これについて農地法二〇条を適用する余地がないという理由によつて、同法条を適用してなされた原処分を取り消したことは、当事者間に争いがない。

されば、本件判決は、原処分たる別紙目録記載の農地についての賃貸借契約解約の許可を取り消してはいるが、その理由に徴して明らかなごとく、原告が右農地を音吉から引き揚げることを禁止したり制限したりするものではなく、しかも、原処分のごとく知事が賃貸借契約の存在を認めたうえでその解約を許可した場合と、本件裁決のごとく、もともと賃貸借契約が存在していなかつたとして農地の引揚げに知事の許可が必要でないとした場合とで、原告が右農地に対する権利を行使するにつき、事実上はともかく、法律上差異が生ずるわけのものではないから、本件裁決の取消しを求める原告の訴えは、その法律上の利益を欠く不適法な訴えというべきである。

原告は、本件裁決が前叙のごとく音吉の耕作関係を賃貸借ではないとしたことによつて原告の音吉に対する右農地の引渡請求権および損害賠償請求権が遡及的に消滅するにいたると主張するが、行政処分である本件裁決によつて私法上の権利関係たる同賃貸借の不存在が確定されるわけではないから、原告の右主張は、それ自体としては採用するに由ないものであり、たとえ、その本旨が、本件裁決によつてひとたび賃貸借の存在が否定されると、爾後右農地の引渡しや賃料等の支払いを求める訴訟において敗訴の判決を受ける危険が生ずるというにあるものと解しうるとしても、かかる不利益は、その発生そのものが不確定であつて、本件裁決により当然かつ直接生ずるものではないから、これをもつて本件裁決を取り消す法律上の利益があるものとはなしえない。(渡部吉隆 渡辺昭 斉藤清実)

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