東京地方裁判所 昭和43年(行ウ)207号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕……以上認定の事実をもつてすれば、別紙目録記載の土地は、原告が国から払下げを受けて所有しているものであり、これについて昭和四二年六月一日万造から原告に対し売買を原因とする所有権移転登記が経由されたのは、その所有名義を原告に回復することを目的としてなされたものであつて、真実登記原因に相応する売買があつたものとは解しえない。
もつとも、右登記の原因証書たる「土地売渡証書」並びに原告が被告に提出した「不動産取得税に定められている土地の取得時期についての陳情書」および「説明書」には、昭和二三年一一月一一日万造が原告に対して別紙目録記載の土地を代金九万九、九六三円五〇銭で売り渡した旨の記載があり、これが被告の認定の重要な資料となつたことは推測に難くないが、いずれも真実に反するものであることは前掲原告本人尋問の結果に徴して明らかであるので、たとえ――登記原因証書の点は一応別としても――課税に対する弁明書であるとはいえ、右のごとき事実に反する書面を作成して官公署に提出するがごときことは、もとより許されないところであるというべきであるが、なお、これをもつて右認定を左右すべき資料とはなしえず、他に右認定の妨げとなる的確な証拠はない。また、いうまでもなく、不動産取得税は、不動産の取得に対して賦課されるものであるから、物権変動につきいわゆる意思主義を採用して登記に公信力を認めないわが国法制のもとにおいては、課税庁としては、登記簿上の記載の如何にかかわらず、また、不動産取得者が取得事実の届出をしたと否とにかかわらず、権利関係の実体を究明して課税に努めるよりほかなく、単にその調査が至難であるとか右の届出が法律上不動産取得者の義務とされていること等を論拠として、登記簿上の記載に基づく課税を正当化することは許されないところであり、この点に関する被告の主張は採用の限りでないというべきである。(渡部吉隆 園部逸夫 渡辺昭)