大判例

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東京地方裁判所 昭和44年(モ)9807号・昭44年(モ)9806号・昭44年(モ)9808号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕つぎに本件各仮処分決定の被保全権利が金銭補償の可能性を有するか否かについて判断する。

被申立人が本件(一)(二)の土地を買受けた目的が、これを他に転売する目的であつたことは当事者間に争いがない。

一般に仮処分債権者が仮処分の目的物件を他に転売する目的で買受けたときは、転売による利益を得ることが終局の目的であると解されるから、抽象的には一応金銭補償の可能性ありということができる。しかしそれと同時に、仮処分債務者が被保全権利について金銭補償の可能性ありとして仮処分の取消を訴求するには、右取消により蒙るべき仮処分債権者の損害の程度および額について疎明することを要するものというべきである。けだし右疎明のない限り、特別事情による仮処分の取消に際し必要とされる相当なる保証額の決定が不可能となるからである。そしてかかる場合には、終局被保全権利の内容が金銭補償により終局目的を達し得る特別事情はないものと解するのが相当である。ところで本件の場合、前認定のとおり本件各仮処分当時すでに本件(一)の土地は申立人石割商事から同中川土地建物へ、本件(二)の土地は申立人石割商事から同本端不動産保有社へ、さらに本端不動産保有社から申立人大庭博又は同北斗へとそれぞれ転売されており、右申立人らが不動産取引業者であることから推して、もし仮に本件各仮処分が取消された場合には、さらに第三者に転々譲渡され、また本件(一)(二)の土地上にさらに賃借権、地上権等の用益権が設定されるに至ることは見易いところである。かかる事態の招来は、前認定のとおり、すでに申立外北斗が本件(二)の土地の一部について家屋を建築し、これを申立外阿部繁孝に売渡す約束をしていることからも客易に推認されるところである。従つて、このような事情の下において、ただ単に被申立人が本件(一)(二)の土地を転売目的で買受けたその理由から、本件各処分の取消により同人の蒙るべき損害は右転売利益の金銭的補償で足るものとして安易に本件各仮処分を取消すときは、本件(一)(二)の土地についての利害関係人が増加し、そのために右土地をめぐる紛争はさらに拡大し複雑長期化することになり、その結果、仮に被申立人が本件(一)(二)の土地の所有権に基づいて申立人らに対し所有権移転登記抹消登記請求および右抹消登記の承諾等を訴求して後日本案勝訴の確定判決を得ても、自己の権利の十全なる実行は事実上極めて困難となることは明らかである。そしてそのために被申立人が蒙るべき具体的損害額については、本件全疎明資料によるも疎明が尽くされたものとは到底いい得ない。しからば結局本件各仮処分決定の被保全権利が金銭補償により終局の目的を達し得るとなすべき特別事情は有しないものというほかない。(鈴木潔 塩谷雄 大田黒昔生)

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