大判例

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東京地方裁判所 昭和44年(ヨ)2221号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔決定理由〕1、申請人らはいずれも被申請会社(以下会社という)の従業員で、本社企画編集部員として勤務していたが、会社は昭和四三年一〇月三日付で申請人岩井に対し会社西麻布工場へ、申請人八重樫に対し会社大阪工場へ配置転換する旨の意思表示(以下本件配転命令という)をなし、次いで申請人らがいずれも本件配転命令に応じないことを理由に、同月三一日申請人らに対し、同日付をもつて解雇する旨の意思表示(以下本件解雇という)をなしたこと、申請人らが加盟している東京出版製本産業労働組合(以下組合という)と会社との間に、「会社は、従業員の雇用、配転、解雇など従業員の身分、労働条件、待遇にいちじるしい変動を及ぼす場合には事前に組合と協議する」との条項(以下本件約款という)が盛られた確認書が交わされていることは当事者間に争いがない。

二、ところで、確認書という標題をつけたからとて、あるいは成立後六年を経過したからとて、そのことにより右組合と会社間の合意が労働協約に該当せず、あるいは失効するものでないことはいうまでもなく、そうであるかのごとくにいう被申請人の主張は採るに値しない。<中略>

三、本件約款のごとき人事に関する協議約款は、労働組合に経営への参加を認め、本来使用者の権限に属する人事権の行使についてこれを労使の共同決定に近付けることを制度化しようとするものであつて、そこにいう協議とは使用者と労働組合との意見の一致をいうものではないが、意見の一致を目指して誠実に意見の交換を行うことをいうものであつて、使用者において労働組合の意見を求めて討議することなく、一方的に自己の側からする人事権行使の必要性ないし理由を通告し、無条件にその承認を要求するなどは協議といえないものである。

そして、そのような人事協議約款の意義からして、これに違反する行為は無効と解すべきである。

四、疎明および審尋の全趣旨を併せ考えれば、会社は、昭和四三年一〇月二日の部長会議で本件配転を決めると、組合にはなんの通告をすることなく、翌々日申請人らに個別にこれを告げ、申請人らから組合との協議が必要であるとしてこれに応じない態度が示されると、二日後に諾否の返事をするよう告げて、用意してあつた辞令の交付を留保し、組合役員に本件配転の実施について協力方を申入れたところ、同役員から配転命令を一旦白紙に戻した上での協議を要求されたが、人事権は会社に属するからとして正式に組合に対し協議申入れを行うことなく、申請人らに対する個人説得を重ねたもののその承諾がえられず、組合が同月一八日本件配転を含む賃上げ等九項目にわたる要求について申入れてきた団体交渉に応ずることとなり、同月二一日および同月二四日の二回他の要求項目についても団体交渉が行われたなかで、本件配転問題も議題に上つたとはいえ、組合側の意見を求めて討議するということはなく、会社側から一方的に本件配転について組合の承認を要請したのみで、同月二八日に本件配転を実施することを宣言して団体交渉を終え、その後組合からなされた本件配転等についての団体交渉の申入を拒否したまま、同日申請人らに対し同月三日付で本件配転命令を通告し、依然拒否にあうと自宅待機を命じ、同月三一日最後の説得を試みたが、申請人らの態度が変らなかつたので、組合と協議を経ることなく(この点当事者間に争いがない)同日直ちに本件解雇に及んだものであること、以上の事実が一応認定できる。

右認定したところよりして、申請人らの主張のように本件配転命令の効力が同日三日に発生したとはいいえないにしても、会社は本件約款に基づく組合の協議権を全く無視した態度に出ていたと評すべきであつて、団体交渉に一応応じ、さらにたとえ本件配転の必要性についての説明を行つたとしても、前述の誠意のある協議を遂げたものとは称しえないところである。

五、そうとすれば、本件配転命令は無効というのほかなく、これに応じないことを理由としてなされた本件解雇は、会社の全くの恣意によるものとして解雇権の濫用と目すべきであり、また組合との協議を経ていない点よりしても無効といわなければならない。(豊島利夫)

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