大判例

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東京地方裁判所 昭和44年(レ)44号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕そうすると、江戸川区長が本件特別区道の供用開始の公示をした昭和二八年四月一日当時同区長はこれを道路として使用するについて、所有者に対抗しうる何らかの権限を取得していたことについては何らの立証がなく、かつ、本件土地は池沼で道路としての形態は全く備えておらず、かくの如く江戸川区長が他人の土地について何らの権限を取得することなく、また道路の形態も備えていない土地について道路として供用を開始する旨公示しても、その供用開始行為は、重大且つ明白な瑕疵があつて当然無効というべきであり(差戻審判断、なお右差戻判決二枚目裏八行目九行目に「道路の認定」も同様に無効なる旨の摘示があるが、前記路線の認定、区域の決定それ自体が無効である趣旨とは解さない。)従つて、江戸川区長の本件各土地についてなした前記供用開始の公示は当然無効であつて、本件特別区道は成立しなかつたものといわなければならない。

つぎに、被控訴人らは、右行政行為の瑕疵は鳥海の道路築造工事の結果本件各土地が道路の形態を備えたことにより治癒されたと主張する。

一般的に、瑕疵ある行政行為は、後に欠缺せる要件が具備されたり、時の経過により、法律生活の安定や公共の福祉の保護を重視すべき事情が生じた場合、個人的社会的諸利益を比較衡量した結果、法律がこれを瑕疵ありとしてその効力を否定することによつて保護しようとしている価値よりも、より大なる法律的価値が存する場合には、これを否定するよりは、むしろ当該瑕疵は治ゆされたとしてその効力を肯定すべき場合もありうる訳であつて、前記当然無効の行政行為についてもなお瑕疵の治ゆを認めうるものといわねばならない。

そして、本件各土地について特別区道の成立を認めることができないことは前記のとおりであるが、本件各土地が、鳥海孝一という一私人の行為によつてであれ、通路の形態を備えるに至り、附近住民により二〇年の長きにわたつて通路として使用され続けた事実は否定すべくもなく、その通路としての公共性やすでに通路としての形態を有するに至つたことに鑑みると、「道路の供用開始公示当時、道路の形態を備えていること」の要件に関する瑕疵は、道路管理者以外の者の行為によつてであれ、あるいは時の経過、車馬の往来により自然径をなした結果であれ、とにかく治ゆされたと認めうる余地がない訳ではない。

しかしながら、土地所有者が、道路管理者の一方的な道路の供用開始行為によつて、その所有地を道路とされ、その所有権を奪われ、あるいはその行使に多大の制限を受けるにいたるが如きことは、いかに道路が公共性の強いものであるにしても、私的所有権保護の観点から許されないものというべく、従つて、道路管理者が道路敷に関し所有権その他の権原を取得しなかつた瑕疵は、同権原を取得すること以外には治ゆされないものというべきである。しかして、江戸川区長が現在にいたるも本件各土地について何らかの権原を取得したことを認めるに足る証拠のないことは前記のとおりである。よつて、被控訴人らの右主張は理由がない。

(西岡悌次 鈴木健嗣朗 山崎健二)

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