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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)10747号・昭44年(ワ)522号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔編注〕…〔請求の原因〕 一、(事故の発生)

昭和四三年一一月一一日午前七時五〇分頃、東京都足立区西新井二丁目二番五号先の、西新井方面から川口方面に通ずる幅員一五メートルの道路(以下「甲道路」という。)と竹の塚方面から大師前方面に通ずる幅員八メートルの道路(以下「乙道路」という。)が交わる交通整理の行なわれていない交差点において、甲道路を川口方面から西新井方面に進行した被告柏木運転の普通貨物自動車(以下「甲車」という。)と乙道路を大師前方面から竹の塚方面に進行した被告山本利雄運転の普通貨物自動車(以下「乙車」という。)が衝突し、甲車は、右交差点の北東隅に所在する原告中田が居住し原告会社が営業の用に供する家屋に突入し、右家屋を損壊した。

〔判決理由〕二、原告中田の損害

1 家屋修理費用

金五六万五〇〇〇円

本件の家屋が原告中田の所有であることは、同原告と被告山本利雄間では争いがなく、<証拠>によれば原告主張のとおりと認められる。なお、<証拠>によれば右家屋は同原告とその兄弟らの共有物であることが認められるが、原告中田の右修理費用の出捐およびこれが填補を求める本訴請求が民法二五二条但書の保存行為としてなされたものであることは弁論の全趣旨に照らして明らかであるから、同原告がその共有者の一人にすぎない事実は、右の結論に何らの影響をおよぼすものではない。

2 慰藉料 金五万円

<証拠>により同原告主張の事実を認める。この事実(ただし、玩具小売商の営業に関する事実は、主として原告会社に関するものであることが弁論の全趣旨によつて明らかであるから、この事実は慰藉料の算定において斟酌しない。)と前記認定にかかる諸事実並びに本件にあらわれた諸般の事実を斟酌すれば、本件物損事故によつて蒙つた原告の精神的苦痛を慰藉すべき金額は金五万円をもつて相当と認める。

三、原告会社の損害

1 商品破損による損害

金五万三四四三円

<証拠>を総合すれば、同原告主張のとおりと認められる。

2 店舗破損に基き営業上生じた損害金 二万円

<証拠>によれば、原告会社は本件事故によつてその店舗を損壊された結果事故当日の昭和四三年一一月一一日から同月一五日までの五日間は全く営業ができず、また同月一五日から同月末日までの一五日間は仮営業所において営業を余儀なくされたこと、そして本件事故前の昭和四三年一〇月一日から本件事故の前日である昭和四三年一一月一〇日までの四一日間の売上額は合計金四七万三九九〇円であり、その一日平均売上額は金一万一五六〇円と認められる。ところで弁論の全趣旨によれば右金額は文字どおり売上額であつて仕入額その他の所要経費が控除されていないと認められるので、以下、右売上による原告会社の純利益について判断する。<証拠>によつて認められる原告会社の商品売上価格合計金六万三九一〇円とその仕入価格合計金四万五三四九円によれば、その売買利益率は39.3%である(これを前記一日平均売上額に乗じて算出した一日平均の売買利益は金四五四三円)が<証拠>によれば原告会社はその企業形態としては家族が中心となつて経営されている小企業であることが認められ、これらを考え合わせると前記仕入額のほか人件費その他の所要経費を折りこんでも、原告会社の一日平均の純利益額は金四〇〇〇円を下ることがないものと認められる。そして見ると原告会社の前記五日間の休業による逸失利益は金二万円となる。

なお、原告会社の前記仮営業所における一五日間の逸失利益については、<証拠>によれば原告会社には、その間合計金一六万九九一三円の売上(一日平均金一万一三二七円)があつたことが認められ、これを前記本件事故前における一日平均の売上額と対比し、かつこの売上額が単なる平均値にすぎない事実を考慮すると、その間に若干の差額は認められても純利益において何程の差を生じたかは、把握することが困難であつてこれを認むるに由なきものというほかない。

四 以上のとおりであつて、原告中田は本件事故により被告らに対し合計金六一万五〇〇〇円の損害賠償請求権を取得したものというべきところ、同原告がこの内金一〇万円については被告山本利雄から弁済を受けたことはその自陳するところであるから、これを控除すれば金五一万五〇〇〇円となる。よつて、原告らの被告らに対する本訴請求は、原告中田において金五一万五〇〇〇円およびこれに対する昭和四四年第五二二号事件訴状が被告らに送達された翌日以後であること記録上明らかな昭和四四年一月三一日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を、原告会社において合計金七万三四四三円とこれに対する昭和四四年(ワ)第一〇七四七号事件の訴状が被告らに送達された翌日以後であること記録上明らかな昭和四四年一〇月二一日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を、それぞれ支払を求める限度において正当として認容し、その余の請求を失当として棄却する。

第二、被告山本武司に対する請求についての判断

請求の原因第一項記載の事実および被告山本利雄が被告山本武司の実兄であることは当事者間に争いがなく、本件事故が被告山本利雄の過失により発生せしめられたことは前記認定のとおりである。そして、<証拠>によれば、本件事故当時における乙車の所有者は被告山本武司であつたことが認められるけれども、被告山本利雄が同被告の被用者であり本件事故がその業務執行中に発生せしめられたことについては、本件全証拠を検討して見てもこれを確認させる資料がない。よつて、この請求は爾余の判断をまつまでもなく失当として棄却をまぬがれない。

第三、被告会社に対する請求についての判断

請求の原因第一項記載の事実および被告山本利雄が本件事故当時被告会社の被用者であつたことは当事者間に争いがなく、本件事故が被告山本利雄の過失により発生せしめられたことは前記認定のとおりである。しかしながら、本件事故が同被告において被告会社の業務執行中に発生せしめたことについては本件全証拠によつてもこれを確認することができず、かえつて<証拠>を総合すれば、被告山本利雄は昭和四三年一一月一〇日頃被告会社の現場監督として雇用され、爾来被告会社の事実上の代表者である訴外三菅正実に命ぜられ、足立区栗原町九三五番地の右訴外人宅から豊島区東池袋の被告会社まで同訴外人が往復する際、同訴外人の乗用する被告会社の自動車の運転を担当したが、被告山本利雄宅から同訴外人宅に赴くため便宜乙車を使用し、同訴外人も同被告が右のとおり乙車で同訴外人宅までくる関係上その駐車場に乙車を格納することを許していたにすぎない事実が認められ、本件事故は、被告山本利雄が右のように同訴外人方へ赴く途中に発生した事故にすぎない事実が認められるのであつて、右事実によれば、被告山本利雄の乙車の使用は、同人の通勤の便宜のため使用され被告会社における同人の業務に関係がなかつたと認められる。

右のとおりであるから、原告らの被告会社に対する請求は爾余の判断を用いるまでもなく失当として棄却をまぬかれない。(原島克己)

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