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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)12764号 判決 1974年12月12日

原告 篠崎義雄

右訴訟代理人弁護士 久野幸蔵

被告 須賀正雄

被告 鶴岡いね

右両名訴訟代理人弁護士 高橋寿一

主文

一  被告須賀正雄は原告に対して、別紙第一物件目録(二)記載の建物を収去して同目録(一)記載の土地を明渡せ。

二  被告鶴岡いねは原告に対して、別紙第一物件目録(二)記載の建物から退去して同目録(一)記載の土地を明渡せ。

三  訴訟費用は被告らの負担とする。

四  この判決は、原告が各被告に対しそれぞれ金三〇万円ずつの担保を供するときは、その被告に対して仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  主文第一ないし第三項と同旨の判決

2  仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  別紙第一物件目録(一)記載の土地(以下「係争土地」という。)を含む同第二物件目録(一)記載の土地(以下「本件土地」という。)は、もと訴外森田茂松が所有し、訴外加藤仁作がこれを賃借してその地上に同第二物件目録(二)記載の建物(以下「原告居住建物」という。)を所有し、原告が加藤仁作から右建物を賃借してこれに居住している関係にあったところ、原告は昭和一九年一〇月二八日加藤仁作から、原告居住建物を買受けるとともに、本件土地を普通建物所有の目的で、賃料一か月一五〇円、毎月末日払の約定のもとに、期限の定めなしに転借し、同日原告居住建物について所有権移転登記を経由した。

2  本件土地は、昭和三六年三月一五日、森田茂松から訴外新和建材工業有限会社に譲渡され、これに伴って加藤仁作が本件土地の賃借権を放棄した結果、原告は同日以降は同会社から従前の賃借土地を引き続き同一の条件で賃借することとなった。

3  ところが被告須賀は、昭和四〇年八月ごろ、本件土地のうち係争土地の部分に別紙第一物件目録(二)記載の建物(以下「係争建物」という。)を建築して、以来これを所有することにより、被告鶴岡は昭和四三年一月ごろから右建物を賃借して居住することにより、いずれも係争土地を占有している。

4  よって原告は、対抗力ある賃借権に基づき、被告須賀に対し、係争建物の収去、係争土地の明渡を、被告鶴岡に対し、係争建物からの退去、係争土地の明渡を求める。

二  請求の原因に対する認否

1  請求の原因1の事実のうち、転借土地に係争土地が含まれていた点、転借の日時、賃料の定め、原告居住建物の実面積は否認、登記の点は不知、その余の事実は認める。転借の日は昭和一九年三月一〇日、当初の賃料は一か月三円、六か月分前払の約であり、原告居住建物の実面積は、二六・四四平方メートル(八坪)である。

2  同2の事実は認める。ただし、本件土地が譲渡されたのは昭和三六年二月一四日、加藤仁作の借地権放棄の日は同年三月九日である。

3  同3の事実は認める。ただし、係争建物建築の日は昭和四一年三月一八日、賃貸の日の昭和四二年二月一八日である。

第三証拠≪省略≫

理由

一  訴外加藤仁作が所有者の森田茂松から賃借中の本件土地について、原告と右加藤仁作との間に、少くとも昭和一九年一〇月二八日の時点において、転貸借契約が成立し、原告がその転借土地上に原告居住建物を所有していたことは、転借土地に係争部分が含まれていたかどうかの点を除いて当事者間に争いがなく、≪証拠省略≫によれば、原告居住建物について、前同日原告のため所有権移転登記が経由されていることが認められる。

そこで、右転借土地に係争部分が含まれていたかどうかについて判断する。

≪証拠省略≫を総合すれば、原告居住建物の実面積は一〇坪にも満たず、係争土地は、右建物の底地とはなっていないけれども、従来から原告において物干場として利用してきていた土地であって、原告居住建物の敷地の一部として、係争土地もまた転貸借の対象に含まれていた事実が認められる。

≪証拠判断省略≫

二  本件土地が、遅くとも昭和三六年三月一五日までに、森田茂松から新和建材工業有限会社に譲渡せられ、これに伴って加藤仁作が本件土地の賃借権を放棄した結果、原告が同会社から従前の転借土地を引き続き同一の条件で賃借することとなった事実は当事者間に争いがない。

三  被告須賀が係争土地上に係争建物を建築して所有することにより、被告鶴岡が係争建物を占有使用することにより、いずれも係争土地を占有していることは当事者間に争いがなく、≪証拠省略≫によると、係争建物の新築及び賃貸の時期は被告ら主張のとおりであることが認められる。

四  以上によると、係争土地の対抗力ある賃借権に基づき、被告須賀に対しては係争建物を収去して、同鶴岡いねに対しては係争建物を退去して、いずれも係争土地の明渡を求める原告の請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九三条を、仮執行の宣言について同法第一九六条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 平田浩)

<以下省略>

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