東京地方裁判所 昭和44年(ワ)1591号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕原告は、右訴訟において被告会社が原告として故意に虚偽の主張および立証を行つた結果、国家機関である裁判所の判断を誤らしめて不当認定の右判決を得、敗訴者である本件原告の権利を侵害し、これに損害を加えたものであるから、被告等は不法行為の責に任ずべきであり、訴の原因を異にする右確定判決の既判力は及ばないものであるから、再審の訴を提起すると否とに拘らず、右不法行為による損害賠償の請求は妨げられない旨主張する。
判決が確定した場合、その既判力によつて、訴の対象となつた請求権および相殺に供せられた債権が確定することはもとより当然であるが、判決が確定した場合であつても、その判決成立の過程において、作為または不作為により相手方の訴訟行為に関与するのを妨げ、あるいは虚偽の事実を主張して裁判所を偽罔する等の不正行為を行ない、その結果本来あり得べからざる内容の確定判決を取得した場合においては、右判決が確定したからといつて、そのような当事者の不正が直ちに間責し得なくなるいわれはなく、これによつて損害を蒙つた相手方は右不法行為による損害賠償を請求することを妨げられないことは判例とするところである。もつとも虚偽の事実を主張立証して裁判所を欺関した場合に不法行為による損害の賠償を請求し得るためには、相手方の裁判所を欺罔する不正行為が刑事上の有罪判決が確定するなど明白に公序良俗に違反する訴訟行為による不法行為の成立が認められる場合に限られると解するのが相当であつて、事実審において攻撃防御を尽くす機会を与えられながら遂に偽証を打ち崩すことができず敗訴し、新訴において単に相手方の偽証を攻撃するに過ぎないようなものは含まれないというべきである。若しこれを認めるとすると、際限なく紛争のむし返しを許すことになり、実質的に判決の既判力を無視し、再審制度の意義を破却し、訴訟による法秩序安定の期待は根底から覆えされることになるからである。(長井澄)