東京地方裁判所 昭和44年(ワ)258号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕一、責任原因
本件事故現場は、当時被告が工事を請負つていた工場建設現場前の車歩道の区別のない幅員約4.8米の道路上であり、被告は右工事のためその下請関東飯田組所属の人夫内田ほか二名を使用して被告の現場責任者小林昭二郎の監督のもとにブロック運搬の仕事に当らせていた。ところが、工事現場に事故車を運転して来た被告従業員近藤武久が事故車を工事現場前路上に放置していたため、右内田は作業の妨げになるためこれを移動させようとして車のキーを差込んだままになつていた事故車に乗込み、これを後退させる途中で本件事故が発生した。その際、内田は後方の安全確認に十分意を尽すことなく車に乗込み、バックランプを点滅させ、警報器を鳴らしはしたものの、わずかに運転席後部の窓から後方を注視するのみで、漫然事故車を後退させたため、事故車後方の陰に居た亡幸江の存在に気付かず、同女を轢過したことが認められる。
してみると、本件は被告が事故車をその工事に使用中の事故であり、下請従業員への直接の指揮監督権もあり、しかも、工事の便宜のため事故車を移動中の事故であること、車の保管状況等を併せ考えると、被告の事故車に対する運行支配および運行利益の帰属は優に認められ、また内田の運転には後方不注視の過失があることも明らかであるから本件事故をもつて不可抗力によるものとはなし難いところであるから、被告は本件事故につき、自賠法三条の責を免れない。
(舟本信光 福永政彦 鷺岡康雄)