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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)3721号 判決 1974年6月21日

被告 東京相互銀行

理由

一  請求原因(一)の事実は当事者間に争いがない。

二  《証拠》によると、北嶋友良が、被告主張のとおり被告との間で本件与信契約を締結したことが認められる。

三  そして、乙第二号証の原告作成部分については、原告名下の印影が原告の印章によるものであることが当事者間に争いがないので、真正に成立したものと推定されるところ、証人北嶋友良及び原告本人は、右書証の原告作成部分は、北嶋友良が原告に無断で作成した旨を供述するが、《証拠》によれば、被告の行員である藤田馨一は、右書証作成前の昭和三九年八月二五日原告に直接面接したうえ、原告にその娘の夫である北嶋の被告に対する借用金債務につき担保提供の意思があることを確かめたことを認めることができ(右認定に反する原告本人の供述は措信できない)、右認定事実に徴し前記証人北嶋友良、原告本人の供述は、たやすく措信できず、他に前記推定を覆すに足りる証拠はない。《証拠》によれば、原告は、昭和三九年八月二九日被告との間で、前記北嶋の本件与信契約上の債務を担保するため、本件土地につき元本極度額六〇〇万円とする根抵当権設定契約を締結し、右契約に基き、本件根抵当権登記が経由されたことが認められる。

しかし、原告が被告との間で右北嶋の債務を担保するため本件土地につき代物弁済予約を締結したとの被告主張の事実は、これを認めるに足りる証拠がない。

四  《証拠》によると、被告は昭和三九年八月二九日北嶋に対し本件与信契約に基き金七〇〇万円を貸付けたことが認められ、(省略)、右貸付残額が同四一年一〇月二五日現在で金二〇〇万円であつたことは当事者間に争いがないところ、原告は、北嶋において同日被告から本件与信契約とは別個の契約に基き金三〇〇万円を借入れたうえ、前記金二〇〇万円の残債務を完済し、本件与信契約を解約したと主張するが、右主張に副う証人北嶋友良の証言、前記甲第五号証の記載はたやすく措信できず、他にこれを認めるに足りる証拠はなく、かえつて、《証拠》によると、被告は、昭和四一年一〇月二五日北嶋に対し、前記貸付残債務金二〇〇万円を残したまま、更に金一〇〇万円を貸し増したのであるが、被告銀行内部の事務処理の便宜上、債権を一本化するため、右残債務の弁済を受け新たに金三〇〇万円を貸付けた如き帳簿、伝票上の処理を行つたにすぎないことが認められる。

五  以上の次第で、被告は原告に対し本件所有権移転請求権仮登記の抹消登記手続をする義務があるので、本訴請求は、右の限度で正当として認容し、その余の部分を失当として棄却

(裁判官 黒田直行)

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