東京地方裁判所 昭和44年(ワ)4029号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕原告の傷病中、①腰背部、頸部の挫傷、②腰椎椎間板損傷はいずれも本件事故に基づくもの、③脊椎分離症、脊椎辷り症は右外傷により顕在化し、かつ、ある程度増悪したもの、④左下肢不全麻痺は②に基因するものである。なお、右の外、本件事故による外傷あるいは前掲検査に基因する⑤脊髄腔内内の非定型性炎症が存在すると推認される。②③⑤はその発生原因において相互に関連はない。②はその損傷の程度において比較的軽微であるが、その特異症状ラセーグ徴候が確認され、その早期治癒軽快は望めず、これに対する手術療法は一般的には期待できるにしても、原告のそれについてはその効果に疑いがもち得る。
原告の後遺症中、脊椎の運動制限は③を主因とするとも考えられるので、本件事故との関連が必ずしも明らかでないことに帰するが、腰痛は②⑤だけでもかなりの程度に及ぶものであり、左下肢のしびれ、運動障害は概ね④に基くものとみるのが相当である。
以上の点から考えると、原告の前記傷病の診断、対症的な治療及びこれに基づく休業及び当面の苦痛については、すべて本件事故と相当因果関係があるものというべきであるが(③についても本件事故が前記程度とはいえ影響を与えた以上、この限度において考慮されるのが相当である。)、後遺症を考えるについては③以外のものに基因するものに限つて本件事故と相当因果関係があるとすべきである(⑤に基因するものも含むべき点は前述のとおり)。すなわち、本件事故に基づく後遺症としては、神経系統の機能に障害を残し、服することのできる労務が軽易な労務に限られるもので、その持続期間は症状固定時(昭和四四年一一月二七日、前記⑤の病変だけをみても、同年二月あるいは五月とみるのは尚早である。)から六年間を下らないとみるのを相当とする。 (高山晨)