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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)6316号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(二) 被告会社に対する代位請求

請求原因第二項(二)の事実は当事者間に争いがない。

そして、被告会社は、本件保険金請求権の代位行使が許されない旨主張するので、この点につき、順次判断する。

1 約款二章一条一項本文(自動車普通保険約款)の解釈につき、被保険者が被害者に損害の賠償をしたときにはじめて保険金債務の履行期が到来する旨主張する。しかし、このように解することは、旧約款二章二条二号において「他人ノ損害ニ対シ被保険者ガ法律上ノ損害賠償義務ニ基キ之ヲ賠償シタルトキ」にはじめて保険会社がこれを被保険者に対して填補する旨規定していたのに対して、現行約款が「被保険者が………法律上の損害賠償責任を負担することによつて被る損害を………てん補する」と改正された趣旨を没却するに等しい。右改正は明らかに、従来、保険金支払いに先立ち、被保険者から被害者に対する損害賠償義務の履行を要するとしていた点を改めたものというべきであるから、この点についての被告会社の主張は理由がない。

2 また、被告会社は、保険金確定前に保険金請求権を行使しえない旨主張する。

しかしながら、被告保険会社の債務は、被保険者が被害者に対し負担する損害賠償額を被保険者に填補すべき債務であることはいうまでもないが、さらに進んで被保険者と被害者との間において、右損害賠償責任の存在およびその額について、既に判決や裁判上の和解などの債務名義が成立したか、少なくともその点についての裁判外の合意が成立した後でなければ、被保険者は保険会社に対し保険金の請求をなし得ないと解すべき根拠については、これを認めるに足るものは見当らない。のみならず、保険金の請求に右のような前提要件が必要と解するとしても、本件は、被害者に対する損害賠償の請求が併合されているから、代位による保険金の請求が許されないとはいえない。従つて、この点に関する被告会社の主張も理由がない。

3 さらに、保険金請求権が告知義務、通知義務等と表裏一体をなす権利であることを理由として権利のみの代位行使は許されない旨主張する。しかしながら、そのように解すべき根拠がなく、権利を代位行使される相手方は、債務者側の義務不履行等を代位債権者に対し抗弁として主張して権利行使を阻止しうるとしても、この権利行使を妨げるべき事由につき何ら主張立証がないから、この点に関する被告会社の主張も採用できない。

以上の次第で、保険金請求権の代位行使に対する被告会社の主張はいずれも理由がないというべく、被害者たる原告は、被告明雄に対する本件損害賠償債権保全のため、被告明雄が被告会社に対し有する保険金請求権を、被告明雄に代位して行使することが許されるものというべきである。

(坂井芳雄 浜崎恭生 鷺岡康雄)

〔参考判例〕(一)、東京地昭四四(ワ)五六九八号、昭和四四・一一・五中間判決・本誌二四〇・一二八

(二)、東京地昭四三(ワ)一三三九三号、昭和四五・一・二一判決・本誌二四三・一二六

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