大判例

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東京地方裁判所 昭和44年(ワ)655号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、以上の事実に基づき考察すると、甲車の運転者である被告高橋は、自車進路に向い北進してくる乙車を認めたにも拘らず、乙車が自車に進路を譲るものと判断してこの動静に充分意を用いず(甲乙両車の前記速度関係からすれば、乙車先端が甲路センターラインを越えた頃に、同被告は乙車の動静に充分注意を払わなかたため、前記のとおり直近に至つて初めて危険を感じたものといわなければならない。)漫然前記速度で甲車を進行させた点において過失の責を免れない。被告らは、甲車の優先通行権を前提として被告高橋の過失を否定するが、自車進路直近に相手車を認め、かつその自車進路への発進が充分に予想される場合には、たとえ優先車といえども、前記のような注意義務を負うものであるから、被告らの右主張は採用できない。一方、乙車を運転する原告寛一においても、甲車の接近を認めながら、その速度等についての判断を誤り、自車がさきに通過できるとしてその進路に進入した点においてその過失は否定できない。

ところで、甲乙両車の優先関係についていえば、甲路は乙路に比し、明らかに幅員が広く、また交通量もはるかに多いのであるから、乙車は乙路から同交差点に進入するに際しては、甲路にある車両の進行を妨げてはならないことは道路交通法(事故当時のそれをいう。以下同じ)三六条三項に定めるところであるが、同交差点への進入そのものが禁じられているわけではないから、同交差点に進入した場合には同法三五条一項にいう先入車となつて同法上あとから同交差点に入る甲路進行車に優先するかに見える。しかし、もともと、道路交通法は交差点内で他車の通過を待つために停止する場合を予想しないのであるから、このような場合同法三五条一項の字義にかかわらず、なお、乙車が甲路直進車の進行を妨げないことを期待すべきものと解するのが相当であろう。

したがつて、本件事故の場合乙車が優先車というべき甲車の進行を妨げたことは否定できないにせよ、その優先関係は前記の程度のことである。むしろ、事故原因において重視すべきことは、甲車が降雨中、制限速度を超える高速で進行し、乙車が甲車進路を通過し終える直前にその側面に衝突したことにもあるということができる。

以上のとおりであるから、被告らは本件事故により原告らが蒙つた損害を賠償する責任があるが、<中略>原告寛一の前記過失は、その余の原告らについても被害者の過失として斟酌すべきものである。そして、原告らの蒙つた損害のうち、被告らの負担すべき額はその六割とみるのが相当である。

二、5 逸失利益八九万九、一五九円原告義寛(昭和三七年九月二二日生)は服薬を続けてもてんかん症状が持続するものであるから、その就労の機会の縮減等の諸事情を考慮した場合、すくなくとも一八才から一〇年間については、通常人に比し稼動収入能力が三五%低下するものと推認すべきである。昭和四三年〜四五年の賃金構造基本統計調査報告に照らし、一八才〜二七才の各年齢別男子平均所得額は原告ら主張の金額を下らないものとみるべきであつて、原告義寛は、その三五%相当額を各月に逸失することになるところ、ホフマン、ライプニッツ各複式(月別)係数表を用い本判決言渡以前については単利、その後については複利で年五分の割合による中間利息を控除して、昭和四四年三月五日現在価を求めると前記のとおりとなる。(高山晨)

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