東京地方裁判所 昭和44年(ワ)8761号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕原告主張のような性質のいわゆる権利金は、賃料と異なり、地上権設定に当然伴う性質のものではないから、地上権の発生と同時に地上権者にその支払義務が生ずるものでないことはいうまでもない。
原告は、東京都においては、地上権を設立するときは、右のような性質のいわゆる権利金を支払う慣習があり、本件地上権設定においても、右権利金を支払うべきであると主張する。土地所有者に対し新たに借地権を設定する場合、借地権者は土地賃貸人に対しいわゆる権利金を支払うことが広く行われ、その例が多いことは一般に知られているところであるとしても、これが原告主張のように広く慣習として存在し、反対の意思表示のない限り当然これによつて律すべきものといいきることは疑問とせざるをえず、その存在が明らかであるとはいいがたい。
たとい、右のような慣習があり、本件のような法定地上権の設定についても、反対の意思表示のない限り(本件のような競落による場合、買受の意思表示は定型化されており、これに属しない特別の意思表示をすることは予定されていないから、本来この点も通常の権利の場合と同一には論じえない)、これに従うと解しても、その具体的金額を定める要素は極めて多様であつて、定型的に定まるものでもなく、又原告主張のような方式又はその他の方式によつてこれを定める明らかな基準があるわけではなく、もつぱら当事者の協議によつて右の諸要素を斟酌して自由に形成さるべきものである。したがつて、当事者間にその協議が調わない場合は、いまだ給付金額が定まらず、給付請求はなしえない筋合である。又地代の場合における民法第三八八条のように裁判所が後見的、監督的に当事者に代つて形成することができるとする法律上の規定もないから、これによつて金額の確定を求めるべきものでもない。その他これを求める根拠は見当らない。
(渡辺卓哉)