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東京地方裁判所 昭和44年(借チ)1082号・昭44年(借チ)2118号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔主文〕 1 申立人が、相手方に対し、本裁判確定の日から三月以内に金一一五万円を支払うことを条件として、(1)申立人が別紙目録(一)記載の土地三三坪六合六勺上にある同目録(二)記載の建物を取り毀し、同地上に木造二階建店舗兼居宅(但し、建築基準法上適法のもの)を建築し、(2)同目録(一)記載の土地賃借権を東京都目黒区中央町一丁目一〇番一四号池田幸子に譲渡することを許可する。

2 申立人が相手方に前項の金員を同項所定の期限内に支払つた場合、本件借地契約の賃料を右金員支払の翌月分から月三三六六円に改める。

〔決定理由〕(申立の要旨)

1 申立人は、相手方から、別紙目録(一)記載の土地三三坪六合六勺(以下本件土地という。)を非堅固建物所有の目的で賃借中にして、同地上に同目録(二)記載の建物(以下本件建物という。)を所有している。右借地権の現在の内容は、同目録(一)記載のとおりである。

2 申立人は申立人の姪に当る主文掲記の池田幸子に対し、本件建物を賃料一ケ月七〇〇〇円で賃貸している。

3 池田幸子は、本件建物で化粧品等の販売業を営んでいるが、狭隘であり、また、老朽化したので、申立人から本件建物と敷地賃借権の譲渡を受けた上、本件建物を取り毀し、本件土地上に別紙目録(三)記載の建物を建築すべく計画している。

4 そこで、申立人は、相手方に対し、右改築と借地権譲渡につき承諾を求めたが、拒絶されたので、賃貸人の承諾に代わる許可の裁判を求める。

(決定理由)

1 本件の資料によれば、申立の要旨として掲げた前記1、2の事実が認められる。本件改築は、本件建物の譲受人である池田幸子において実施するとのことであるが、増改築許可の裁判は、増改築制限に関する特約を一時的に排除するものであるので、譲渡人において予め右特約を一時的に排除する裁判を得た上右裁判により変更された借地権を譲渡することは差支えないものというべきであるので、本件増改築許可の申立は適法である。本件の資料によれば、本件土地は、準工業地域準防火地域の指定を受けているので、本件改築は、建ぺい率違反になるが、建築基準法上適法のものであるかぎり、本件建物を木造二階建店舗兼居宅に改築することは、土地の通常の利用上相当であるというべく、また、申立人が池田幸子に本件借地権を譲渡しても賃貸人である相手方の不利になるおそれはないと認められるので、本件各申立は、いずれも、これを許可すべきである。(鑑定委員会は、本件改築は土地の通常の利用上相当でないとし、その理由として、(一)本件建物は、既に老朽化しており、五年以内に朽廃の域に達するものと認められ、従つて、本件のように近い将来借地権が朽廃により消滅すべき事案において、既存建物を取り毀した上新築を認めることは、新たな借地権の設定となり、(二)本件土地は計画道路に編入されており、かかる土地に新たに建物を建築することは、土地の通常の利用上相当とは認めがたいとする。しかし、借地法八条ノ二は、宅地の需要が著しく大きく、供給がこれに伴わない現在、土地所有権に新たな制約を加えても土地の合理的利用を促進すべきであるとの公共的見地から設けられたものであり、従つて、増改築により借地権の存続が強化されることは、法の予定していることであるので、増改築が新たな借地権を設定するとの意見には賛し難く、建物の老朽化は、増改築を必要ならしめる一事由であり、朽廃時期が近いからといつて、増改築が土地の通常の利用上相当でないということはできない。また、本件の資料によれば、本件土地を含む一筆の半分以上が計画道路に編入されていることは認められるが、本件土地は計画道路に含まれていないことが認められるので、本件土地が計画道路に含まれていることを理由に、本件改築が土地の通常の利用上相当と認め難いとする意見は、前提条件を欠く失当のものである。)

2 附随処分

本件増改築許可の裁判により、本件借地権は、その存続が強化され、そのことは、借地権価格に反映するので、借地人に財産上の給付を命ずるのが相当であり、また、借地権譲渡許可の裁判により、本件借地権は、譲渡性を付与されることになるので、借地人に財産上の給付を命ずるのが相当である。増改築許可の裁判に伴う財産上の給付は、本件建物が相当老朽化し、既に経済的耐用年数を経過していること、改築後の建物の使用目的が店舗兼居宅であること、本件資料により認められる本件土地内に欅の大木があり、これが建築の妨げになつていることを考慮するとき、従来の裁判例に徴し、更地価格の二%を相当とし、また、借地権譲渡許可の裁判に伴う財産上の給付は、本件借地権価格が自然発生的のものであることに鑑み、従来の裁判例に徴し、借地権価格の一五%を相当とする。但し、前認定の如く、申立人は、本件建物を賃料一ケ月七〇〇〇円で賃貸しているので、給付額は、借地権価格から鑑定委員会の意見による借家権価格九六万円を差し引いたものの一五%とするのが相当である。鑑定委員会の意見に従い、本件土地の更地価格を坪三五万円、借地権価格をその六割とし、財産上の給付を合計一一五万円とする。

なお、賃料は、昭和三八年二月以降一ケ月八〇〇円に据え置かれたままであるので、これを改めるのを相当とする。改定額は、鑑定委員会の意見および相手方の希望を斟酌し、一ケ月三三六六円(坪一〇〇円)に改めるのを相当とする。

(小山俊彦)

目録

(一) 土地賃借権

1 当事者

賃貸人 相手方

賃借人 申立人

2 借地

東京都目黒区中央町一丁目六一八番一六

宅地 1012.09平方米(三〇六坪一合六勺)

のうち 111.27平方米(三三坪六合六勺)

3 目的

非堅固建物所有

4 期間 昭和六二年五月二四日まで

5 賃料 昭和三八年二月一日以降一ヶ月八〇〇円

(二) 東京都目黒区中央町一丁目六一八番地

家屋番号 六一八番五

木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建居宅(現状店舗兼居宅)

床面積 34.97平方米(一〇坪五合八勺)

(三) 木造二階建店舗兼居宅

床面積 一階 73.55平方米

(二二坪二合五勺)

二階 36.36平方米

(一一坪)

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