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東京地方裁判所 昭和44年(借チ)19号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔主文〕申立人が相手方らに本裁判確定の日から三月以内に金三一一万円を支払うことを条件に、

1 別紙目録記載の借地契約の目的を堅固建物所有に変更し、

2 借地期間を右金員支払の日から三〇年延長し、

3 賃料を右金員を支払つた月の翌月から一ケ月金一万三、〇〇〇円に改める。

〔決定理由〕(申立の要旨)

1 申立人は、相手方らから、昭和三〇年一一月一五月別紙目録記載の宅地146.87平方米(以下本件土地という。)を非堅固建物所有の目的、期間二〇年の約で賃借し、同地上に家屋番号二七八番の九木造亜鉛メッキ鋼板葺二階建店舗床面積一階三四坪六合二勺二階二七坪九合六勺(以下本件建物という。)を所有している。

2 本件建物は昭和四三年二月一二日火災により二階部分が全焼したので、申立人は、これを取りこわし、本件土地上に五階建のビルを建築する計画であるが、堅固の建物を所有する旨の借地条件の変更につき、相手方と協議が調わない。

3 本件土地附近は、賃貸借契約締結当時は木造建物が大部分であつたが、防火地域に指定されている関係もあり、現在はビルに改築されつつあり、現に借地権を設定する場合には堅固の建物の所有を目的とするのを相当とするように客観的事情が変つている。

4 よつて、借地契約の目的を堅固建物所有に変更する裁判を求める。

(決定理由)

1 本件の資料によれば、(一)、申立の要旨として掲げた1・2の事実のほか、(二)、本件土地は、国鉄五反田駅前有楽街の一隅にあり、幅員八米の公道に接面し、附近は、商業地域、防火地域、第七種容積地域の指定を受け、放射一号線の開通に続く地下鉄六号線の完成以来近代化を促進し、木造建物を鉄筋構造に建て替える事例が次第に増加する傾向にあることが認められる。

右(二)の事実によれば、本件土地に現在借地権を設定する場合には堅固建物の所有を目的とするのが相当であるというべく、本申立を排斥すべき特段の事由も認められないので、本申立は、これを認容すべきである。

2 次に附随の裁判について考える。

借地法第八条ノ二第三項は、借地条件変更の裁判を為す場合において当事者間の利益の衡平を図る為必要あるときは、財産上の給付その他の附随処分を為すことができる旨規定している。ここにいう当事者間の利益の衡平を図るとは、いかなる意味であろうか。借地条件変更の裁判に基づき、借地人が借地上に堅固な建物を建築する場合、借地人は、建物の朽廃による借地権の消滅を免れる反面、賃貸人は、借地権の存在により土地所有権が制約を受ける期間の伸長を余儀なくされ、建物の朽廃による借地権の消滅により得べかりし利益を喪う等の不利益を招き、当事者の利害が対立するばかりでなく、借地人としては、堅固建物を建築しうる結果、住の快適性、建物利用による収益の面その他において従前に優る利益を亨受することが可能となるが、当事者間の利益の衡平を図るとは、堅固建物の建築が当事者に及ぼす右の如き利益、不利益を調整することであろうか。借地法第八条ノ二、第九条ノ二が新設され、しかも、借地権の消滅について定めた防火地域内借地権処理法第三条に代わる規定が設けられなかつたことは借地権を独立の財産権として保護する面を強化する一方、借地人の借地権の存続の希望を建物の朽廃による脅威から解放し、更新拒絶が成立しうる場合を除き、借地人の意思に反する借地権消滅の途を閉したものということができる。

右のように、法が借地権存続の強化を意図するものである以上、当事者間の利益の衡平を図るとは、堅固建物の建築が当事者間に及ぼす利益、不利益を調整することではなく、堅固建物を建築しうる権利を賃貸人の意思に反して借地人に付与することについての当事者間の利益の衡平を図ることと解すべく、しかるときは、右権利の経済的価値を賃貸人に給付せしめ、右権利を付与せしめることとの関聯において他の借地条件の変更その他の相当の処分をすべきか否かを考慮することが、当事者間の利益の衡平を図る趣旨でなければならない。

申立人は、本申立認容の裁判により本件借地上に堅固建物を建築しうる権利を取得するが、右権利の経済的価値は、契約の目的が変更されたことによる借地権価格の変動を把握することである。右価格の変動は、鑑定委員会の意見に従い、金三一一万円と認める。

なお契約の目的の変更に伴い、借地期間を変更するのが相当であり、また現在の賃料につき申立人は坪当り一ケ月一八〇円であると主張し、相手方らは坪当り一ケ月二五〇円であると主張するが、鑑定委員会の意見によれば坪当り一ケ月二九〇円を相当とするので借地全部につき一ケ月一万三〇〇〇円とし、借地期間及び賃料を契約目的の変更に伴い変更すべく、主文のとおり決定する。(小山俊彦)

目録

(土地賃貸借契約の内容)

一、当事者

賃貸人  相手方ら

賃借人  申立人

二、借地

東京都品川区東五反田一丁目一二番九

宅地 146.87平方米

三、目的

非堅固建物所有

四、期間

昭和三〇年一一月一五日から二〇年

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