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東京地方裁判所 昭和44年(借チ)2011号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔決定理由〕(申立の要旨) 1 申立人は、朝倉重威から、昭和二八年九月三〇日その所有にかかる東京都新宿区市谷富久町七一番一宅地1,827.37平方米のうち102.45平方米(以下本件土地という)を非堅固建物所有の目的で、期間を定めずに賃借し、同地上に家屋番号同町七一番三三木造瓦葺平家建居宅一棟床面積36.36平方米現況42.97平方米(以下本件建物という)を所有し、これを社宅として使用している。

2 相手方は、賃貸人朝倉重威から本件土地の譲渡を受け、昭和三三年三月二〇日所有権移転登記を経由して賃貸人の地位を承継し、賃料は、昭和四三年四月一日以降一ケ月一、九二〇円に改訂され、現在にいたつている。

3 申立人は、本件建物を社宅として使用する必要がなくなつたので、これを敷地借地権とともに主文記載の会社に譲渡したく、同会社が借地権を取得しても賃貸人の不利になるおそれはないので、相手方に対し、同に対する本件借地権譲渡についての承諾を求めたが、拒絶されたので、賃貸人の承諾に代わる許可の裁判を求める。

(決定理由)

本件の資料によると、申立の要旨として掲げた右1、2、3の各事実を認めることができ、右事実によれば、本件申立は、これを認容すべきである。

次に、附随の処分について考える。鑑定委員会は、本件土地の借地権価格は自然発生的に形成されたものであるから、借地権を譲渡する場合、かかる借地権価格を借地人のみに帰属せしめることは妥当を欠き、右価格の一部を賃貸人に還元配分せしめるべきであるとの考え方に立脚し、借地人に財産上の給付を命ずるのが相当であるとする。しかし、借地権価格は、それが自然発生的に形成されたものであつても、借地権を経済的に把えた価値であることに変りなく、右価格の一部を借地人でない賃貸人に配分せしめるべき理由はないので、右の考え方には賛しかねる。本件許可の裁判は、裁判所が賃貸人に代わつて、借地人に対し、本件借地権を大晃建設株式会社に適法に譲渡しうる権利を新たに与えるものであり、右権利を与えられた結果借地権価格は増加すべきであるので、右権利の対価を賃貸人に取得させるのが当事者の利益の衡平を図るため必要であり、右対価は、右権利を有する借地権の価格と右権利を有しない借地権の価格との差であるというべきである。本件許可の裁判により、本件借地権は、物権たる地上権と実質的には大差のないものになり、その価格は、地上権価格に近接するものと考えられる(もつとも、譲受人は、借地権譲渡の権利を有しないので、その借地権価格は、譲渡後は旧に復するのではあるが。)。ところで、鑑定委員会の意見によれば、借地権の譲渡を承諾する場合、東京においては、残存期間を考慮に入れることなく、借地権価格の一〇%ないし一五%の金員を借地人から賃貸人に交付しているのが実情であるとのことである。これを土地価格に対する割合に直してみると、本件の場合、鑑定委員会の意見によれば、本件借地権割合は七〇%とのことであるので、土地価格に対する7%ないし10.5%ということになり、譲渡を認められた借地権が地上権と実質的に大差のないものであることを思うとき、右の割合はいかにも低い感を受ける。しかし、取引の実情が右のように低率である以上これを無視することもできないので、本件の財産上の給付は、右実情における最高、すなわち、土地価格の10.5%とする。鑑定委員会の意見によれば、本件土地は、敷地部分が93.43平方米、私道部分が9.02平方米にして、敷地部分の更地価格は3.3平方米当り二一万円、これに建付減価四%を行い、建付地価格を3.3平方米当り二〇万一、六〇〇円とし、私道部分の価格を敷地部分の価格の二〇%としているので、右意見に従い、本件土地の価格を五八一万一、八七六円とし、その10.5%に当る金六一万円(千円以下四捨五入)を申立人をして相手方に支払わしめるを相当とし、主文のとおり決定する。(小山俊彦)

目録

(土地賃貸借契約の内容)

一、当事者

賃貸人 相手方

賃借人 申立人

二、借地権の目的たる土地

東京都新宿区市谷富久町七一番一

宅地一、八二七、三七平方米のうち一〇二、四五平方米

三、契約の目的

非堅固建物所有

四、期間

昭和二八年九月三〇日から昭和五八年九月二九日まで

五、賃料

昭和四三年四月一日以降一ヶ月一、九二〇円

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