東京地方裁判所 昭和44年(借チ)3024号 決定
〔主文〕1 申立人が、本裁判確定の日から三月以内に、相手方に金二二九万円を支払うことを条件に、申立外滝本敏郎、同滝本達郎、同滝本三郎、同滝本四郎、同滝本信郎、同滝本国郎、同滝本泰子および同滝本勝子(以下敏郎ら八名という)から申立人に対する別紙目録(三)記載の土地賃借権の譲渡を許可する。
2 前項により借地権の譲渡が許可された場合、申立人相手方間の別紙目録(一)記載の土地に関する賃貸借契約の賃料を昭和四四年四月一日以降一ケ月一万二、四〇九円に改める。
〔理由〕(申立の要旨)
1 別紙目録(二)記載の建物(以下本件建物という)は、敏郎ら八名の所有であったが、抵当権実行による競売に付され、申立人は競落により同建物の所有権を取得し、昭和四四年四月二八日競落代金七〇六万三、〇〇〇円を支払つた。本件建物の前所有者である敏郎ら八名は、その敷地である別紙目録(一)記載の土地(以下本件土地という)を相手方から普通建物所有の目的で賃借していたので、右競落により右借地権は申立人に譲渡されたことになる。
2 しかるに、相手方は申立人に対する右借地権の譲渡を承諾しないので、賃貸人の承諾に代わる許可の裁判を求める。
(決定理由)
1 本件の資料によると、敏郎ら八名の先代亡滝本豊三郎は、昭和三五年一一月一四日その所有にかかる本件建物に申立外大信実業株式会社のため根抵当権を設定し、昭和三六年七月三一日これが設定登記を経由し、申立人は、昭和四三年三月一三日同会社から右根抵当権の譲渡を受け、同月二六日その旨の附記登記を経由したこと、申立人は、右根抵当権に基き東京地方裁判所に競売の申立をなし、代金七〇六万三、〇〇〇円で自ら競売し、昭和四四年三月二五日競落許可決定を得、同年四月二八日右競落代金を支払つたこと、滝本豊三郎が前記根抵当権設定契約を締結した当時同人は相手方から本件建物の敷地である本件土地を普通建物所有の目的で賃借していたこと、滝本豊三郎は昭和三七年六月二日死亡し、その妻静子と子である敏郎ら八名が共同相続し、次いで滝本静子が昭和三九年六月三〇日死亡し、敏郎ら八名が共同相続し、本件建物の所有権および本件土地賃借権を承継取得したことが認められる。相手方は、敏郎ら八名と相手方との間の本件土地賃貸借契約は昭和四三年二月二八日期間満了したところ、昭和四二年一一月予め更新に対し異議を述べ、右異議は正当事由に基づくものゆえ右賃貸借契約は期間満了とともに終了したと主張する。右賃貸借契約の存続期間が相手方の主張する昭和四三年二月二八日までであるかどうかは、本件の資料上明らかとはいえないが、仮りに、期間が相手方の主張するとおりであるとしても、本件の資料によれば、更新拒絶が正当事由に基づくものであるとは到底認めがたいので、賃貸借終了に関する相手方の右主張は採用できない。従って、申立人は、本件建物の競落に伴い、前借地人から本件借地権の譲渡を受けたものというべく、その借地条件は、本件の資料によれば、別紙目録(三)記載のとおりであることが認められ、本件の資料によれば、申立人が本件土地賃借権を譲り受けることによる相手方の不利は認められないので、本件申立は、これを認容するのが相当である。
2 附随処分
本件申立の認容にともない、当事者間の利益の衡平を図るため申立人に財産上の給付を命ずるのが相当であり、鑑定委員会の意見によれば、土地賃借権を譲渡する場合本件土地の属する地域においては譲渡承諾料として賃貸人に借地権価格の一〇%を支払う慣行があることが認められるので、財産上の給付は同委員会の評価による競落当時の本件借地権価格二、二九〇万七、〇〇〇円の一〇%にあたる二二九万円(万円未満切捨)と定める。(鑑定委員会の意見によれば、競落当時の本件建物の価格は三四万九、〇〇〇円であることが認められるので、申立人は、競落代金七〇六万三、〇〇〇円から右建物価格を差し引いた六七一万四、〇〇〇円で本件借地権を取得したことになり、正常借地権価格との差額一、六一九万三、〇〇〇円を利得したことになるので、前記財産上の給付は一見低額に過ぎるように見えるが、競売代金は、執行費用を差し引いた分から債権者に配当され、残余があれば抵当権設定者に交付されることになり、抵当建物の敷地を賃貸している賃貸人としては、競売代金の配当にあずかる権利ななく、競落人の利得の一部を賃貸人に配分せしむべき理拠もないのであるから、通常の譲渡承諾料以上の財産上の給付を命ずべきではない。)
賃料は、鑑定委員会の意見に従い、競落の翌月分から一ケ月一万二、四〇九円に改める。 (小山俊彦)
目録
(一)東京都目黒区中根一丁目一七九二番三
宅地533.25平方米(一六一坪三合一勺)のうち523.64平方米
(二)東京都目黒区中根一丁目一七九二番地所
在家屋番号七〇二番
木造瓦葺平屋建居宅 床面積85.65平方米
附属建物
木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建居宅 床面積10.74平方米
(三)土地賃借権
1契約当事者
賃貸人 相手方
賃借人 敏郎ら八名
2借地権の目的たる土地
前記(一)記載の土地
3使用目的
普通建物所有
4存続期間
不明
5賃料
昭和三〇年四月一日以降一ケ月一七九五円