東京地方裁判所 昭和44年(借チ)5号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔主文〕本件借地契約(別紙記載)の借地条件を、堅固建物の所有を目的とするものに、借地期間を昭和九二年一二月一四日までに、賃料を本裁判確定の月の翌月から一カ月金六万六、九一一円にそれぞれ変更する。
申立人は相手方に対し金一、一七〇万円を支払え。
〔決定理由〕一、申立の要旨
申立人が相手方から普通建物所有の目的で賃借中の東京都台東区根岸四丁目五一番地宅地7851.43平方米のうち1701.48平方米について、その借地条件を堅固建物の所有を目的とするものに変更することを求める。
二、資料によれば次の事実を認めることができる。
1 申立人は右土地を相手方から昭和四二年一二月一五日賃借したが、これを賃借するに至つた事情は決のとおりである。すなわち、右土地は、昭和二六年一〇月一五日、東京交通株式会社が相手方から賃借し、同地上に二階建木造建物二棟を所有していたが、同会社は申立人の傍係会社である高野保善株式会社に対する一億五、〇〇〇万円余の債務を支払えなかつたため、右二棟の建物の所有権を高野保善株式会社に移転するに至つた。高野保善株式会社は投下資本回収のため、さらに申立人に右建物の所有権を移転し、その際申立人は相手方に権利金名義で二、七〇〇万円を支払つて本件土地を賃借するに至つたものである。
2 本件土地は都電下谷三丁目停留所から北西約二五〇米に位置し、北西方日暮里駅方面に通ずる幅員一四米の道路(両側三米歩道)に面し、右道路に面する部分は商業地域、準防火地域、第五種容積地区で、残りの部分は準工業地域、準防火地域、第三種容積地区である。右道路を距てて向い側には鉄筋五階建の建物があり、附近は急速に建物の堅固化、高層化が進行しつつある。
三、右事実によれば、申立人が本件土地を賃借してから現在までは一年余に過ぎず、その間に顕著な事情の変更があつたとは必ずしも認められないが、申立人は東京交通株式会社所有の木造建物の譲受に伴つて本件土地を賃借するに至つたもので、同会社の借地権を譲渡により承継した場合と実質上異るところはないから、かかる場合は事情の変更の有無については前借地人の借地期間を通じてこれを考慮すべきであり、この見地から考えると、本件土地については附近の土地の利用状況の変化により、現在借地権を設定する場合は堅固建物の所有を目的とすることが相当になつているというべきである。よつて本件借地契約を堅固な建物の所有を目的とするものに変更し、これに伴い借地期間を契約成立の日から五〇年、昭和九二年一二月一四日までとする。
四 附随の処分
1 鑑定委員会は、右借地条件の変更による当事者間の利益の衡平を図るため、現在の賃料3.3平方米あたり一カ月一〇〇円を三〇%増額し、一三〇円に改めるとともに借地期間を条件変更の時から五〇年に延長することを前提として申立人から相手方に堅固建物所有を目的とする借地権価格の八%を支払わせることを相当としている。その金額は本件土地の更地価格を3.3平方米あたり三八万円、借地権価格をその七五%とするので、一、一七三万五、一六〇円となる。財産上の給付額算定の理由は、条件変更の場合、通常は堅固建物所有目的の借地権価格の一〇ないし一五%を借地人から賃貸人に支払わせるのが相当であるが、本件の場合は申立人が昭和四二年一二月に権利金名義で二、七〇〇万円(3.3平方米あたり五万二、四五六円)を相手方に支払つており、これは名義書替料および更新料に相当するものと考えられるが、これは、このような場合に通常支払われる借地権価格(当時の更地価格3.3平方米あたり三五万円、借地権価格はその七〇%)の一四%程度の金額(3.3平方米あたり三万四、三〇〇〇円)に比しかなり高額であるので、この点を考慮し、借地権価格の八%程度を相当とするというのである。
2 当裁判所も右意見を相当と認め、財産上の給付額を借地権価格の約八%にあたる一、一七〇万円と定め、賃料を本裁判確定の月の翌月から一カ月六万六、九一一円(3.3平方米あたり一三〇円)に変更することとする。
(白石悦穂)
借地契約の内容
一、目的土地 東京都台東区根岸四丁目五一番
宅地 7851.43平方米のうち
1701.48平方米(514.7坪)
二、当事者 賃貸人 相手方
賃借人 申立人
三、成立 昭和四二年一二月一五日
四、目的 普通建物所有の目的
五、期間 昭和六二年一二月一四日まで
六、現在の賃料 一月五一、四七〇円(3.3平方米あたり一〇〇円)