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東京地方裁判所 昭和44年(借チ)57号 決定

〔主文〕1 申立人相手方間の別紙目録(一)記載の土地についての賃貸借契約中別紙図面リ、ヌ、チ、ニ、リの各点を順次結ぶ直線で囲まれる部分71.119平方米の借地条件を次のとおり変更する。

(1) 使用目的を堅固建物所有とする。

(2) 存続期間を本裁判確定の日から三〇年とする。

(3) 賃料を本裁判確定の月の翌月分から一ケ月一万五、五〇〇円とする。

(4) 別紙図面ル、ヌ、チ、ハ、ルの各点を順次結ぶ直線で囲まれる部分につきこれを露地として使用する旨の特約を排除する。

2 申立人は、相手方に対し、金二五〇万円の支払をせよ。

〔理由〕(申立の要旨)

1 申立人は、相手方から別紙目録(一)記載の土地(以下本件土地という)を非堅固建物所有の目的で賃借中にして、同地上に同目録(二)記載の建物二棟(以下本件建物という)を所有している。

2 申立人は、本件建物中B棟を堅固建物に改築したいが、使用目的を堅固建物所有に変更することを相手方が承諾しないので、B棟の敷地である別紙図面リ、ヌ、チ、ニ、リの各点を順次結ぶ直線で囲まれる部分71.119平方米(以下申請部分という)についてのみその使用目的を堅固建物所有に変更する裁判を求める。

(決定理由)

1 本件の資料によると、申立人は、申立外高松清から、(一)昭和一三年八月一日本件土地中別紙図面イ、ロ、ハ、ニ、イの各点を順次結ぶ直線で囲まれる部分四六坪九合八勺(以下甲部分という)を非堅固建物所有目的、期間昭和三三年八月一日までの約で賃借し、(二)次いで、昭和一六年四月三〇日本件土地中甲部分の東側に隣接する同図面ロ、ホ、ヘ、ハ、ロの各点を順次結ぶ直線で囲まれる部分九坪六合七勺(以下乙部分という)を非堅固建物所有目的、期間昭和三六年四月三〇日までの約で賃借し、(三)更に、昭和二〇年一〇月二五日本件土地中乙部分の東側に隣接する同図面ホ、ト、チ、ヘ、ホの各点を順次結ぶ直線で囲まれる部分四坪八合四勺(以下丙部分という)を非堅固建物所有目的で期間を定めずに賃借し、本件土地の南側にA棟を、北側にB棟を所有していることが認められる。相手方は、乙部分及び丙部分は、露地として使用することを認めたに過ぎず、建物所有を目的とする賃貸借ではないという。本件の資料によれば、申立人が、高松清に対し、乙部分及び丙部分を露地として使用する旨を記載した昭和二〇年一〇月二五日付念証を差し入れたことが認められるが、右念証差入の前に作成された乙部分の賃貸借に関する公証人松沢卓規作成第一二万〇、二九七号公正証書に、乙部分の使用目的を住宅用建物の所有とし、ただし、賃借人の都合により露地として使用することができる旨の記載があること、乙部分及び丙部分は、甲部分の借り増しであり、本件土地の北側及び南側は、それぞれ六米道路、一五米道路に接しており、乙部分及び丙部分を露地として使用しなければならない必然性がないことからすると、右念証の趣旨は、乙部分及び丙部分には建物を建てることを禁止する旨の一種の建築制限に関する特約と解すべく、借地法の適用を排除する趣旨と見るべきではない。本件の資料によると、本件土地は、高松清から申立外小倉誠を経て相手方に譲渡され、相手方は、昭和二一年一二月二七日所有権移転登記を経由して賃貸人の地位を承継したこと、甲部分及び乙部分の借地契約は、上記期間の満了にともなつて決定更新され、賃料は、各借地契約とも昭和三二年四月一日以降一ケ月3.3平方米当り一七二円であることが認められる。

2 本件の資料によると、本件土地付近一帯は、東京都中央卸売市場の場外地で、魚市場関係者、鮮魚、乾物等取扱業者が蝟集して一画を形成している特殊地域にして、そのため、戦前の建物が殆んど木造であつたのはもとより、戦後準防火地域、商業地域、第六種容積地区の指定を受けたものの、右公法上の規制の割には建物高層化の速度が遅れ、いまだに木造建物が数において堅固建物にはるかに優るとはいえ、現在ある木造建物は、その大部分が昔から存在するもので、最近の建築にかかるものは見るべきものなく、反面、最近の建築にかかる四階建ないし七階建の堅固建物がかなり見受けられ、漸次高層化に向いつつあることが認められるので、右客観的事情の変更からして、本件土地に現に借地権を設定する場合堅固建物所有を目的とするのを相当とすべきであり、このことは、本件土地を含む自己所有地に、後記の如く、多年ビルの建築を計画している相手方としては否定しえないことであろう。相手方は、(一)本件土地附近に高層建物はあるが、それはいずれも土地所有者の主観的事情によつて自ら建てたものであり、借地人の建築にかかるものは殆んどないから、右高層建物が存在するからといつて、客観的事情の変更があつたとはいえない、(二)本件土地が準防火地域の指定を受けたのは本件借地契約更新前の昭和二六年三月のことであるから、右準防火地域の指定は客観的事情の変更に該らないというが、本件土地附近にある高層建物の殆んどが土地所有者自らの建築になるものとしても、土地の効率的利用を必要とする事情は、土地所有者と借地人とにおいて異別のものとする理由はなく、右高層化こそ土地の効率的利用への変化と見るべきであり、また、客観的事情の変更は、借地契約が成立した当初における事情と現在の事情との間に見られる変更をいい、本件借地契約が締結されたのは、前記のように準防火地域指定前であるので、相手方の右主張は、理由がない。

次に、相手方は、本件申立が排斥されるべきであるとして次のように主張する。

(一) 本件建物中A棟は、申立人が昭和三五年一〇月頃従来A棟の敷地にあつた旧木造建物を取り毀し、そのあとに建築したものであるが、相手方は、当時、A棟の建築に異議を述べたので、本件借地権は、旧建物が朽廃すべかりし昭和四〇年末には朽廃により消滅したものであり、仮りにそうでなくとも甲部分借地契約の残存期間である昭和五三年八月一日までには朽廃すべきところ、相手方は、昭和二一年一二月本件土地を含む築地六丁目二、三〇六番六宅地二六〇坪四合五勺のほかその東側に隣接する同番一宅地二一三坪二合五勺をビル建築の目的で買い入れ、本件土地を除く部分を更地として保有し、期間満了の際変更新拒絶する予定であるので、右の如き事情の下で本件申立を認容するのは相当でない。

(一) 本件のように借地の一部についてのみの使用目的変更の申立は、許されるべきでない。

しかし、相手方のいう旧建物が昭和四〇年末までに朽廃したとしても、本件土地上にはそれ以前の建築にかかるB棟が存在し、B棟は旧建物の従物ではないので、旧建物の朽廃により借地権が消滅するいわれはなく、また本件の資料によれば、相手方が昭和二一年一二月その主張の土地二筆を買い受けたことは認められるが、右土地には、申立人の本件借地権が存するほか、申立外永山正雄のため普通建物所有を目的とする残存期間昭和六二年一二月二〇日までの借地権が存することを認めうるばかりでなく、本件借地契約の残存期間が満了した場合に相手方においてなす更新拒絶が正当事由に基づくか否かを予測することは困難であるので、相手方に本件土地をビル建築のために必要とする事情があるにせよ、これがため本件申立を排斥するのは相当でないといわねばならず、また本件の資料によれば、高松清は、借地契約上借地権の分割譲渡を認めているばかりでなく(公証人松沢卓規作成第一一万四、八六九号公正証書第五条、同公証人作成第一二万〇、二九七号公正証書第五条)、本件土地中申請部分以外の土地を従来どおり非堅固建物所有目的のままとしても、これがため右土地の宅地としての利用が著しく妨げられるものでもなく、他方相手方からも本件土地全部についての使用目的変更の申立をなしうる余地があるのであるから、申立人が本件土地中申請部分についてのみ使用目的変更の申立をしたとて、これを排斥すべき理由はない。

3 附随処分

鑑定委員会は、本件申立の認容にもともない借地期間を六〇年延長することを前提に、更新料を基礎として財産上の給付を算定するが、更新料は、これを借地人に請求しうべき法律上の根拠はないので、右の考え方には賛しえない。借地の使用目的を堅固建物所有に変更することにより申立人は、本件土地を収益面および住の快適性の面において合理的に利用することが可能となるので、財産上の給付は、右の点に着目して考えるべきである。同委員会の財産上の給付の考え方には賛成しかねるが、その示した給付額二五〇万円は、同委員会の評価による本件土地の更地価格二二八〇万円(3.3平方米当り三二万円)の一一%弱にあたり、当裁判所が従来示した給付額からすれば、金額的には相当であるので、財産上の給付を二五〇万円とし、本件土地の使用収益内容の変化にともない賃料を増額すべく、同委員会の意見により一ケ月一万五、五〇〇円に改定し、借地期間を本裁判確定の日から三〇年延長するのを相当とする。なお、乙部分及び丙部分は、これを露地として使用する旨の特約があるが、右特約を維持しなければならない合理的根拠の判然としない本件では、土地の合理的利用促進の観点から右特約を排除するのを相当とする。(小山俊彦)

目録

(一) 借地権の目的たる土地

東京都中央区築地六丁目二三〇六番六

宅地 860.99平方米(二六〇坪四合五勺)のうち西側隣地に接する部分203.27平方米

(六一坪四合九勺、別紙図面イ、ト、チ、ニ、イの各点を順次結ぶ直線で囲まれる部分)

(二) 借地上の建物

1 A棟

家屋番号二三〇六番六の四

木造瓦葺屋階付二階建店舗兼居宅

床面積 1階92.00平方米

2階92.00平方米

屋階 1.61平方米

2 B棟(未登記)

木造瓦葺二階建店舗兼居宅

床面積 1階53.82平方米

2階53.82平方米

(以下略)

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