東京地方裁判所 昭和44年(行ウ)199号 判決 1979年5月30日
原告 尹浩俊
被告 下谷税務署長
代理人 竹内康尋 鳥居康弘 ほか三名
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事 実<省略>
理由
一 被告主張のとおりの営業をしていた原告が昭和四〇年分の所得税につき被告から推計による本件課税処分を受けたことは、当事者間に争いがない。
二 推計課税の必要性について
<証拠略>を総合すると、被告の所部係官が昭和四一年七月下旬から原告の本件係争年分の所得税調査に着手し、原告に対し、再三、原告の提出した右年分の確定申告書記載の総所得金額の計算内容を明らかにする帳簿書類や原始記録の呈示を求めたが、原告は、帳簿書類を備え付けておらず、各店舗ごとの収支明細書(<証拠略>)、仕入明細書(<証拠略>)、経費明細書(<証拠略>)と本件係争年とは関係のない昭和四一年分の若干の売上伝票を呈示したにとどまり(各明細書を呈示したことは当事者間に争いがない。)、各明細書に記載された金額を裏付ける伝票その他の原始記録は一切呈示しなかつたこと、右の各明細書には、仕入先又は項目と金額が羅列されているだけで、その仕入金額の合計額と売上金額はいずれも一〇〇〇円単位の数値であるうえ、個別の仕入金額の一部が被告が調査、照会によつて知り得た金額に比して過少に記載されていたこと、右仕入先の住所等についても、原告は係官に対してこれを具体的に明らかにしなかつたことが認められる。<証拠略>は措信することができない。
右の事実によれば、原告が提出した前記各明細書だけでは原告の本件係争年分の総所得金額を実額で把握することが困難であつたものといわざるをえず、これを推計により認定する必要があつたことは明らかである。
三 総所得金額について
1 原告は、被告が本件課税処分後の調査に基づいて処分時の認定とは異なる新たな総所得金額を主張することは許されないと主張する。しかしながら、課税処分取消訴訟の審判の対象は、当該処分の違法性一般であり、実体的には、当該処分の認定した課税標準又は税額が客観的に正当な額よりも過大であるか否かによつて処分の適否が決せられるのであるから、課税処分を争う訴訟において、課税庁が当該処分を理由づけるために必要な調査を行い、処分時の認定とは異なる根拠により正当な総所得金額を主張することは、なんら妨げられないものというべきである。
2 事業所得について
(一) パチンコ部門
推計課税が適法であるためには、採用した推計方式自体が合理的であること及び推計の基礎とした資料の選択が合理的であることが必要である。そこで、被告が本訴において主張する推計方法をみるに、同業者の機械一台当たりの売上金額に原告店舗の備付機械台数を乗じて売上金額を推計し、右売上金額に同業者の売上原価率、売上利益率、一般経費率及び特別経費控除前所得率を乗じて売上原価、売上利益、一般経費及び特別経費控除前所得を算定し、右特別経費控除前所得から特別経費を控除することによつて所得金額を求めたものであるから、基礎たる数値に誤りがない限りは、一般的には右推計は一応合理的なものであるというべきである。
そして、被告は、右推計をするにあたり、主位的に別表一の同業者一名の機械一台当たりの売上金額等を、予備的に別表二の同業者三名の機械一台当たりの平均売上金額等を用いているが、<証拠略>を総合すると、右別表一の機械一台当たりの売上金額等を得るについては、原告店舗所在地を管轄する江東東税務署管内において、専業としてパチンコ業を営む個人事業者のうち備付機械台数が一〇〇ないし二〇〇台で暦年事業を継続しており昭和四〇年分の所得金額を収支計算によつて算定した者を被告が調査したところ、右抽出基準に該当した同業者は青色申告者である別表一の一名しかいなかつたので、その青色申告決算書の記載により売上金額、売上原価、売上利益、一般経費、特別経費控除前所得及び機械台数を右別表のとおり求め、これを基礎に機械一台当たりの売上金額等を算定したこと、また、別表二の機械一台当たりの平均売上金額等を得るについては、原告店舗所在地の近辺を管轄する本所、向島、江東西、江戸川、葛飾各税務署管内において前記同様の抽出基準に該当するパチンコ業者を調査したところ、これにあてはまる同業者は別表二のB及びCの二名であつたので、その青色申告決算書等の記載により売上金額、売上原価、売上利益、一般経費、特別経費控除前所得及び機械台数を右別表のとおり求め、これに別表一の同業者Aの売上金額等をも加えた数値を基礎に、機械一台当たりの平均売上金額等を算定したことが認められる。
ところで、<証拠略>を総合すると、原告店舗は江東区北砂町の繁華街からはずれた場所に位置し、客のほとんどが付近住民であり、付近で営業していた二店と競争状態にあつたのに対し、別表一の同業者は、亀戸駅前の商店街の近くに位置し客の入りもよく、原告店舗とは業況が近似していなかつたことが認められる。
してみれば、本件においては、別表一の同業者一名のみの実績を基礎に推計するよりも、同表二の同業者三名の実績をもとに算定した平均値を基礎に推計する方が、より合理的な方法であるというべきである。原告は、備付機械台数が最も近似している別表二の同業者Bの数値のみを基礎に推計すべきであると主張するが、原告店舗と右の同業者Bとは、その備付機械台数の点において近似しているだけで、その他の立地条件等の点においても類似性があるとの立証はないのであるから、被告が予備的に主張する方法の方が同業者各人の個別性が反映する度合を少なくするうえで優れているものというべきである。
以上の次第で、原告店舗の所得金額を求めるには別表二の機械一台当たりの平均売上金額等を基礎にして算定すべきものである。
(1) 売上金額
別表二の機械一台当たりの平均売上金額一七万九四六六円に当事者間に争いのない原告店舗の備付機械台数一四一台を乗ずると、売上金額は二五三〇万四七〇六円となる。
(2) 売上原価及び一般経費
(1) の売上金額に別表二の売上原価率七二・六四八パーセント及び一般経費率八・七七一パーセントを乗ずると、売上原価は一八三八万三三六二円、一般経費は二二一万九四七五円となる(なお、別表二の売上原価率及び一般経費率はいわゆる加重平均によつたものであるが、単純平均によりこれらを算定すると、別表五のとおり、売上原価率は七二・六七パーセント、一般経費率は八・五一パーセント、合計八一・一八パーセントとなつて加重平均の場合の合計八一・四一九パーセントよりも少さくなるから、加重平均によつた方が原告に有利な結果をもたらす。)。
(3) 特別経費
(ア) 雇人費二四六万四〇〇〇円及び娯楽施設利用税一八万三三〇〇円が特別経費に算入されることについては、当事者間に争いがない。
(イ) 減価償却費
<証拠略>を総合すると、丸八会館は木造二階建であり、その取得価額は三六〇万円であつたこと、原告は、昭和四〇年当時、時には台東区東上野二丁目二〇番二号の弟方事務所に宿泊することがあつたもののこれは稀であり、そのほかの時は常時家族と共に丸八会館の二階の一室に居住しており、その居住部分の面積は同会館の約二五パーセント程度であつたが、食堂と廊下とは事業用としても利用されていたことが認められる。<証拠略>によつても右認定を覆すには足りず、<証拠略>は措信することができない。
そこで、右丸八会館の減価償却費を算定するに、原告が減価償却の方法について届出をしていないことは弁論の全趣旨から明らかであるから、定額法によることになり、その耐用年数は二七年であり、これに相当する償却率は〇・〇三七である(丸八会館の用途がパチンコ業の店舗用であることは当事者間に争いがなく、その一部が居住用であることは前示認定のとおりであるから、正確には耐用年数は三〇年であり、それゆえ、償却率は〇・〇三四となるが、被告の主張する耐用年数二七年、償却率〇・〇三七の方が原告に有利な結果をもたらす。)から、これを前記取得価額三六〇万円から一〇パーセント相当額を控除した残額三二四万円に乗ずると、丸八会館全体の減価償却費は一一万九八八〇円となる。そして、前示認定事実に照らすと、丸八会館の事業専用割合は八〇パーセントとみるのが相当であるから、右一一万九八八〇円に八〇パーセントを乗ずると、事業所得の金額の計算上特別経費として控除すべき減価償却費は九万五九〇四円となる(所得税法四九条一項、昭和四二年政令第一〇五号による改正前の所得税法施行令一二五条一号、一二〇条一項一号、六条一号、昭和四一年大蔵省令第三七号による改正前の減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表一、別表一〇及び別表一一)。
(ウ) 原告は、平和相互銀行からの借入金に対する支払利息九一万二五〇〇円があつたと主張する。しかし、<証拠略>によるも右事実を認めるに足りず、他にこれを認めるに足る的確な証拠はない。
それゆえ、(ア)の争いのない二六四万七三〇〇円と(イ)の減価償却費九万五九〇四円を合計すると、特別経費は二七四万三二〇四円となる。
右のとおりであるから、(1)の売上金額二五三〇万四七〇六円から(2)の売上原価一八三八万三三六二円及び一般経費二二一万九四七五円と(3)の特別経費二七四万三二〇四円の合計額を控除すると、パチンコ部門の所得金額は一九五万八六六五円となる。
(二) バー部門及び純喫茶部門
まず、被告が本訴において主位的に主張する推計方法をみるに、原告の取引先に対する反面調査及び原告本人の申立てにより、原告各店舗の売上原価を把握し、これを同業者の平均売上原価率で除して売上金額を推計し、これに同業者の平均一般経費率を乗じて一般経費を算定し、売上金額から売上原価、一般経費及び特別経費の合計額を控除することによつて所得金額を求めたものである。
ところで、被告は、右所得金額を推計するにあたり、その基礎たる同業者として、原告各店舗がある埼玉県川口市(原告各店舗の所在地については当事者間に争いがない。)を管轄する税務署とは異なる下谷税務署管内で営業している者を選んでいるが、地理的に離れている原告各店舗と下谷税務署管内で営業している同業者との間に営業上の条件の点において類似性があるとの立証のない本件においては、右推計方法が合理的であると認めることはできない。
そこで、さらに進んで被告が予備的に主張する推計方法をみるに、これは、原告の取引先に対する反面調査及び原告本人の申立てにより、原告各店舗の売上原価を把握し、また、原告が被告の所部係官に提出した各店舗ごとの収支明細書に記載されていた仕入金額と売上金額とから原価率を算定し、これで右売上原価を除して売上金額を推計し、この売上金額から売上原価、一般経費、特別経費の合計額を控除することによつて所得金額を求めたものであるから、基礎たる数値に誤りがない限りは、右推計は一応合理的なものであるというべきである。そして、<証拠略>によれば、原告が提出した前記収支明細書には、バー部門につき仕入金額として二三五万八〇〇〇円、売上金額として五八九万五〇〇〇円、純喫茶部門につき仕入金額として一六四万九〇〇〇円、売上金額として六五九万六〇〇〇円と記載されていたことが認められるところ、右記載は、数額自体は後記のとおり過少であるものの、仕入金額と売上金額との割合に関しては、反証のない限り実態を反映しているものと推定するのが相当である。それゆえ、右収支明細書に記載された数額を基礎に仕入金額を売上金額で除して原価率を算定すれば、バー部門においては四〇パーセントとなり、純喫茶部門においては二五パーセントとなる。したがつて、被告が採用した原価率もこれと一致し誤りがない。
そこで、右の予備的推計方法によつて、バー部門及び純喫茶部門の所得金額につきそれぞれ検討する。
(バー部門)
(1) 売上金額
後記(2)の売上原価三九二万九九一五円を前示認定の原価率四〇パーセントで除すると、売上金額は九八二万四七八七円となる。
(2) 売上原価
<証拠略>を合わせると、蓮見商店の得意先元帳の「バー不夜城」の口座には、昭和四〇年分の取引金額として、七月分三四万八八三二円、八月分三〇万四二二三円、九月分二八万六三〇〇円、一〇月分二三万四七〇五円、一一月分二八万三五〇〇円、一二月分三四万六四四〇円、合計で一八〇万四〇〇〇円と記帳されていたが、これは、原告の所得税につき税務当局の調査が行われる場合に備えて原告側の依頼により真実の取引金額を圧縮してこれを過少に記帳したものであり、真実の取引金額は、「東栄商事」と表示された納品書綴に記帳されていたこと、被告の所部係官は、右の納品書綴につき、蓮見商店から昭和四〇年八月一五日から同年一〇月九日までのものしか提出を受けることができず、これには、同年八月一五日から同月三一日までの分の取引金額として三〇万六五〇〇円、九月分として五五万〇八三五円、一〇月一日から同月九日までの分として一七万三二六〇円と記載されていたことが認められる。蓮見商店が作成した<証拠略>には、「不夜城」との取引金額としておおむね前記得意先元帳のとおりの額が記載されているが、<証拠略>によれば<証拠略>は、原告が本件係争年分の所得税につき税務当局から調査を受けたことから、本件争訟を自己に有利に進めるために原告の依頼により作成されたものであることが窺われるのであり、前記得意先元帳の作成経緯などをも併せ考慮すると、<証拠略>をもつて右認定を覆すに足る証拠ということはできない。原告本人尋問の結果中右認定に反する供述部分は措信できない。
してみると、係争年全体を通じ、得意先元帳の記帳額は納品書綴記載の正当な取引額を同一の割合で圧縮したものと推定すべきであるから、得意先元帳の昭和四〇年九月分の記帳額二八万六三〇〇円を納品書綴の同月分の記帳額五五万〇八三五円で除した〇・五一九で、右得意先元帳の同年七月分から同年一二月分までの記帳合計額一八〇万四〇〇〇円を除して右期間中の蓮見商店からの仕入金額を求めると、三四七万五九一五円となり、被告の認定に誤りはないというべきである。
それゆえ、右三四七万五九一五円に当事者間に争いのない日本飲料株式会社からの仕入金額七万八〇〇〇円と現金仕入金額四七万六〇〇〇円を加算したうえ、当事者間に争いのない期末原材料たな卸高一〇万円を控除すると、売上原価は三九二万九九一五円となる。
(3) 一般経費
<証拠略>によれば、一般経費は、被告の予備的主張のとおり四七万二六〇〇円であることが認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。
(4) 特別経費
雇人費二四七万八〇〇〇円、減価償却費七万一六五五円、支払家賃四万二〇〇〇円、支払利息一六万四二二〇円、開業費償却三万〇二五六円が特別経費に算入されることについては、当事者間に争いがない。また、売上金額の一パーセント相当額が貸倒損失となることも当事者間に争いがないから、(1)の売上金額九八二万四七八七円の一パーセント相当額一〇万円(正確には九万八二四八円であるが、被告は原告に有利に一〇万円と主張するので、これを採用する。)が貸倒損失となる。
それゆえ、特別経費は、以上を合計した二八八万六一三一円となる。
右のとおりであるから、(1)の売上金額九八二万四七八七円から(2)の売上原価三九二万九九一五円、(3)の一般経費四七万二六〇〇円、(4)の特別経費二八八万六一三一円の合計額七二八万八六四六円を控除すると、バー部門の所得金額は二五三万六一四一円となる。
(純喫茶部門)
(1) 売上金額
後記(2)の売上原価一八六万九七〇四円を前示認定の原価率二五パーセントで除すると、売上金額は七四七万八八一六円となる。
(2) 売上原価
被告主張の売上原価のうち、株式会社金川商店からの仕入金額が七四万一六七二円であることは<証拠略>によって認めることができ、その余の点については当事者間に争いがない。したがつて、売上原価は一八六万九七〇四円となる。
(3) 一般経費
<証拠略>によれば、一般経費は、被告の予備的主張のとおり二一八万六五四〇円であることが認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。
(4) 特別経費
特別経費が被告主張のとおり二一二万九四八一円であることは当事者間に争いがない。
右のとおりであるから、(1)の売上金額七四七万八八一六円から売上原価一八六万九七〇四円、(2)の一般経費二一八万六五四〇円、(3)の特別経費二一二万九四八一円の合計額六一八万五七二五円を控除すると、純喫茶部門の所得金額は一二九万三〇九一円となる。
(三) 以上の次第で、(一)のパチンコ部門の所得金額一九五万八六六五円、(二)のバー部門の所得金額二五三万六一四一円、純喫茶部門の所得金額一二九万三〇九一円を合計すると、事業所得金額は五七八万七八九七円となる。
3 譲渡損失について
原告が昭和三九年一一月にパチンコ機械一四一台を購入し、これを同四〇年六月に中古機と全機入替え、さらに、この入替えた機械のうち七一台を同年一一月に再び入替えたことは当事者間に争いがない。また、<証拠略>によれば、右のパチンコ機械入替え時の一台当たりの譲渡価額が三〇〇ないし五〇〇円であり、取得価額が三〇〇〇円であることが認められ、右認定に反する証拠はない。したがって、一台当たりの譲渡価額は中間値をとつて四〇〇円とする。
ところで、パチンコ機械は減価償却資産であるから、これについての譲渡損失の金額の計算上控除する資産の取得費が取得価額(買受価額)から取得の日から譲渡の日までの期間に対応する減価償却相当額を控除した金額であることは明らかである(所得税法三八条二項一号)。
そこで、まず、昭和四〇年六月譲渡分の譲渡所得金額を算定するに、譲渡価額は四〇〇円に一四一を乗した五万六四〇〇円、取得価額は三〇〇〇円に一四一を乗じた四二万三〇〇〇円となる。そして、取得の日から譲渡の日までの期間(八か月)に対応する減価償却相当額は、原告が減価償却の方法について届出をしていないことは弁論の全趣旨から明らかであるから、定額法によることになり、パチンコ機械の耐用年数は二年であり、これに相当する償却率は〇・五〇〇であるから、これを前記取得価額から一〇パーセント相当額を控除した残額三八万〇七〇〇円に乗じた額一九万〇三五〇円の一二分の八に相当する一二万六九〇〇円となる(所得税法四九条一項、昭和四二年政令第一〇五号による改正前の所得税法施行令一二五条一号、一二〇条一項一号、六条七号、減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表一、別表一〇及び別表一一)。それゆえ、取得価額四二万三〇〇〇円から右の減価償却相当額一二万六九〇〇円を控除した二九万六一〇〇円が譲渡時未償却残高であり、これを譲渡価額五万六四〇〇円から控除すると、譲渡損失は二三万九七〇〇円となる。次に、昭和四〇年一一月譲渡分の譲渡損失金額を算定するに、譲渡価額は四〇〇円に七一を乗じた二万八四〇〇円、取得価額は三〇〇〇円に七一を乗じた二一万三〇〇〇円となり、取得の日から譲渡の日までの期間(六か月)に対応する減価償却相当額は、右の昭和四〇年六月譲渡分と同様の方法で算定すると四万七九二五円となる。それゆえ、取得価額二一万三〇〇〇円から右の減価償却相当額四万七九二五円を控除した譲渡時未償却残高一六万五〇七五円を譲渡価額二万八四〇〇円から控除すると、譲渡損失は一三万六六七五円となる。
したがつて、原告の昭和四〇年分譲渡損失金額は、六月譲渡分二三万九七〇〇円と一一月譲渡分一三万六六七五円を合算した三七万六三七七円となる。
4 右の次第で、原告の昭和四〇年分の総所得金額は、2の事業所得金額五七八万七八九七円から3の譲渡損失金額三七万六三七七円を控除した五四一万一五二〇円となり、審査裁決後の本件課税処分がこの範囲内でされていることは明らかである。
四 以上のとおりであるから、本件課税処分に原告主張の違法はない。
よつて、原告の本訴請求は理由がないものとしてこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 佐藤繁 中根勝士 菊池洋一)
別表一
江東東税務署管内におけるパチンコ店の同業者比率
氏名
項目
A
<A> 売上金額
三七、六六二、二五二円
<B> 売上原価
二八、一二六、四〇九円
<C> 売上利益
九、五三五、八四三円
<D> 一般経費
三、一四四、九八〇円
<E> 特別経費控除前所得
六、三九〇、八六三円
<F> 機械台数
一七二台
<1> 機械一台当たりの売上金額(<A>/<F>) 二一八、九六六円
<2> 売上原価率(<B>/<A>) 七四・六八一%
<3> 売上利益率(<C>/<A>) 二五・三一九%
<4> 一般経費率(<D>/<A>) 八・三五%
<5> 特別経費控除前所得率(<E>/<A>) 一六・九六九%
別表二
江東地区全域におけるパチンコ店の同業者比率
項目
氏名
A
B
C
合計
<1>
売上金額(円)
三七、六六二、二五二
一九、二八〇、四四〇
二二、八四七、〇〇〇
<イ>
九〇、七八九、六九二
<2>
売上原価(円)
二八、一二六、四〇九
一四、一三七、七三八
二三、六九二、八〇〇
<ロ>
六五、九五七、〇四七
<3>
売上利益(円)
九、五五五、八四三
五、一四二、七〇二
一〇、一五四、一〇〇
<ハ>
二四、八三二、六四五
<4>
一般経費(円)
三、一四四、九八〇
一、三〇六、八八八
三、五一一、三九〇
<ニ>
七、九六三、二五八
<5>
特別経費控除前所得(円)
六、三九〇、八六三
三、八三五、八一四
六、六四二、七一〇
<ホ>
一六、八六九、三八七
<6>
機械台数(台)
一七二
一三二
一九四
―
<7>
機械一台当たり売上金額(円)
二一八、九六六
一四四、九六五
一七四、四六九
<ヘ>
五三八、四〇〇
<8>
機械一台当たり平均売上金額<ヘ>/3(円)
一七九、四六六
<9>
売上原価率<ロ>/<イ>(%)
七二・六四八
<10>
売上利益率<ハ>/<イ>(%)
二七・三五二
<11>
一般経費率<ニ>/<イ>(%)
八・七七一
<12>
特別経費控除前所得率<ホ>/<イ>(%)
一八・五八一
別表三
下谷税務署管内におけるバーの同業者比率
氏名
<A>
売上金額
(円)
<B>
売上原価
(円)
<C>
売上利益
<A>-<B>(円)
<D>
一般経費
(円)
<E>
特別経費控除前所得
<C>-<D>(円)
A
二〇、九四六、九八〇
五、六二六、八一七
一五、三二〇、一六三
二、四三四、二八五
一二、八八五、八七八
B
一四、三五七、六一〇
四、五二一、三二〇
九、八三六、二九〇
三、三五三、一七一
六、四八三、一一九
C
一三、四三八、六一〇
三、二四九、八一三
一〇、一八八、七九七
二、〇八七、九七五
八、一〇〇、八二二
D
一二、五八二、五二四
二、九三二、二九四
九、六五〇、二三〇
一、六一九、一八〇
八、〇三一、〇五〇
E
一〇、三九二、二〇〇
二、二〇七、三〇四
八、一八四、八九六
二、〇〇三、二五二
六、一八一、六四四
F
八、〇七九、八二四
二、四二五、三一六
五、六五四、五〇八
六〇九、七六七
五、〇四四、七四一
G
七、九六六、八三〇
三、〇三二、二五二
四、九三四、五七八
一、一〇二、七五八
三、八三一、八二〇
H
五、四八二、九七〇
一、五九三、五四五
三、八八九、四二五
五一四、〇〇九
三、三七五、四一六
I
二、二六七、八六〇
九〇一、八九八
一、三六五、九六二
二三六、五二〇
一、一二九、四四二
合計
九五、五一五、四〇八
二六、四九〇、五五九
六九、〇二四、八四九
一三、九六〇、九一七
五五、〇六三、九三二
<1> 売上原価率 (<B>の合計/<A>の合計) 二七・七四%
<2> 売上利益率 (<C>の合計/<A>の合計) 七二・二六%
<3> 一般経費率 (<D>の合計/<A>の合計) 一四・六二%
<4> 特別経費控除前所得率 (<E>の合計/<A>の合計) 五七・六四%
別表四
下谷税務署管内における純喫茶の同業者比率
氏名
<A> 売上金額
(円)
<B> 売上原価
(円)
<C> 売上利益
(円)
<D> 一般経費
(円)
<E> 特別経費控除前所得
(円)
A
一三、八八一、〇〇〇
三、〇四五、六二九
一〇、八三五、三七一
三、六七七、六〇〇
七、一五七、七七一
B
一三、三六一、三八五
二、四九一、四八二
一〇、八六九、九〇五
三、四四四、六四五
七、四二五、二五八
C
一二、二九七、四三五
三、〇一二、八七六
九、二八四、五五九
三、三五七、一九八
三、九二七、三六一
D
一二、二八九、八八六
四、二一五、八四〇
八、〇七四、〇四六
二、八七三、四五七
五、二〇〇、五八九
E
一〇、四〇〇、一五〇
二、四八四、五九六
七、九一五、五五四
二、八六七、一六一
五、〇四八、三九三
F
九、三九三、一九〇
二、六一五、三九六
六、七七七、七九四
二、三四三、九〇六
四、四三三、八八八
G
八、〇六三、四〇〇
一、七五二、三七五
六、三一一、〇二五
一、九四九、六七一
四、三六一、三五四
H
七、三二一、九五〇
二、三一四、九七二
五、〇〇六、九七八
一、七〇〇、〇八〇
三、三〇六、八九八
I
七、〇三〇、八八〇
二、四四一、八三六
四、五八九、〇四四
一、五一四、二五二
三、〇七四、七九二
J
六、八〇〇、六三〇
一、六二四、九二三
五、一七五、七〇七
一、八二四、四七〇
三、三五一、二三七
K
六、五七〇、〇〇〇
二、一一六、〇〇〇
四、四五四、〇〇〇
一、〇二〇、九三〇
三、四三三、 〇七〇
L
五、一四二、〇八〇
一、三八四、〇一九
三、七五八、〇六一
一、二〇四、七六〇
二、五五三、三〇一
M
三、八八八、一〇〇
一、三八三、二四四
二、五〇四、八五六
一、三七九、五二五
一、一二五、三三一
N
三、六七一、九五〇
一、三五八、九三三
二、三一三、〇一七
一、〇七八、七八六
一、二三四、二三一
O
三、五一九、六七〇
七一一、五〇〇
二、八〇八、一七〇
八二一、一一七
一、九八七、〇五三
P
三、三六九、〇九〇
一、一四三、二〇五
二、二二五、八八五
六八四、七七〇
一、五四一、一一五
Q
三、二四九、八四七
八〇九、二一八
二、四四〇、六二九
五五八、〇二一
一、八八二、六〇八
R
二、五六七、三四〇
九八二、二〇九
一、五八五、一三一
四八六、九二九
一、〇九八、二〇二
S
二、五〇七、四七〇
六〇一、一八六
一、九〇六、二八四
四〇二、七七一
一、五〇三、五一三
T
二、一八七、五三五
六七四、二九三
一、五一三、二四二
五四〇、〇六〇
九七三、一八二
U
一、八二七、四五〇
六七六、〇六〇
一、一五一、三九〇
二四八、〇一二
九〇三、三七八
V
一、六一七、一〇五
六四三、五八一
九七三、五二四
五〇〇、八九五
四七二、六二九
W
一、三八七、二七〇
四三三、八八八
九五三、三八二
二四〇、三〇二
七一五、〇八〇
X
四八六、六六九
一七五、七七二
三一〇、八九七
一〇一、八一一
二〇九、〇八六
合計
一四二、八三一、四八二
三九、〇九三、〇二三
一〇三、七三八、四四九
三四、八二一、一二九
六八、九一七、三二〇
<1> 売上原価率 (<B>の合計/<A>の合計) 二七・三八%
<2> 売上利益率 (<C>の合計/<A>の合計) 七二・六二%
<3> 一般経費率 (<D>の合計/<A>の合計) 二四・三七%
<4> 特別経費控除前所得率 (<E>の合計/<A>の合計) 四八・二五%
別表五
単純平均による同業者比率
氏名
項目
A
B
C
合計
売上金額(円)
三七、六六二、二五二
一九、二八〇、四四〇
三三、八四七、〇〇〇
売上原価(円)
二八、一二六、四〇九
一四、一三七、七三八
二三、六九二、九〇〇
売上利益(円)
九、五三五、八四三
五、一四二、七〇二
一〇、一五四、一〇〇
一般経費(円)
三、一四四、九六三
一、三〇六、八八八
三、五一一、三九〇
売上原価率(%)
七四・六八
七三・三三
七〇・〇〇
<1> 二一八・〇一
一般経費率(%)
八・三五
六・七八
一〇・四〇
<2> 二五・五三
売上原価率及び一般経費率は、売上原価及び一般経費をそれぞれ売上金額で除して小数点五位を四捨五入したものである。
平均売上原価率(<1>/3) 七二・六七%
平均一般経費率(<2>/3) 八・五一%