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東京地方裁判所 昭和45年(むのイ)2013号 決定 1970年10月07日

主文

検察官が昭和四五年一〇月六日行った申立人に対する被疑者との接見拒否処分を取消す。

理由

一、本件申立の趣旨、理由は準抗告申立書記載のとおりであるから、これを引用する。

二、当裁判所の事実取調の結果によると、被疑者は申立人を弁護人に選任する意思があること、および被疑者は昭和四五年九月二七日前記被疑事件により本富士警察署に勾留されていることが認められる。

三、更に当裁判所の事実取調によると、次の事実が認められる。即ち、申立人は同年一〇月五日午後五時頃、本富士警察署に赴き、同署に勾留中の被疑者に接見したい旨を申入れたところ、検察官は申立人が同日被疑者に接見することを拒否し、被疑者との接見時間を翌六日午後五時から午後六時までの間の一五分間と指定した。そこで申立人は右拒否処分につき、東京地方裁判所に対し、「検察官の前記接見拒否処分を取消す。検察官は申立人に対してその申立があり次第直ちに接見を許さなければならない」旨の準抗告を申立てた。

右申立に対して、同裁判所は「検察官がなした前記接見拒否処分を取消す。弁護人は昭和四五年一〇月五日午後九時から一五分間被疑者が右時間に現在する場所で被疑者を接見することができる。」との決定をした。そこで申立人は右決定に基いて同日被疑者に接見したが、更にかねてなされた検察官の前記の指定に基いて、同月六日午後五時から午後六時までの間の一五分間被疑者と接見しようとしたところ、同署の司法警察員から検察官の接見に関する指定がないとの理由で拒否された。そこで申立人は検察官に右拒否の理由を尋ねたところ、前記準抗告に対する決定によって、かねて検察官がなした翌六日の指定は取消されたものであるという回答を得た。

四、しかし、前記準抗告の決定は、単に検察官がなした同月五日の接見指定拒否の処分を取消したに過ぎないのであって、翌六日の接見指定処分についてはこれを取消したわけでもなく、またこれを同月五日の接見指定に変更したものでもないことは右決定の記載に徴して明白である。そうであるとすれば、検察官がかねて申立人に対し被疑者との接見の日時を前記のように同月六日と指定しながら、その接見を拒否した処分は違法であるといわなければならない。従って右接見拒否の処分は取消すべきものである。

五、なお、弁護人は本件申立において、検察官は申立人に対してその申立があり次第直ちに被疑者との接見を許さなければならない旨の決定を求めるけれども、検察官が弁護人となろうとする者から接見に関する指定を求められた場合、その指定をしなければならないことは刑事訴訟法第三九条三項の規定に照らして明白であるから、あえてその趣旨を主文において示すことを要しない。

また、右被疑事件が同年九月二六日に司法警察員から検察官に送致され、取調検察官において接見の指定が行われていることは事実の取調べによって明らかであって、本富士警察署の司法警察員が申立人からの接見の申立を拒否した前記の措置は単に検察官の指示に基いてなされたものでそれ自体独立して刑事訴訟法第三九条三項の処分として準抗告の対象となるものではない。

そこで検察官が申立人と被疑者らとの接見を拒否した処分の取消を求める申立は理由があるのでこれを認めることとし同法第四三二条、第四二六条に従い主文のとおり決定する。

(裁判官 片岡聡)

<以下省略>

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