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東京地方裁判所 昭和45年(むのイ)2041号 決定 1970年10月08日

主文

本件準抗告は、これを棄却する。

理由

一、申立人の申立の趣旨及びその理由は、申立人提出の準抗告申立書記載のとおりであるからこれを引用する。

二、そこで本件記録及び当裁判所の事実調べの結果に徴して案ずるに

刑事訴訟規則第二七条によると、被疑者の弁護人の数は原則として三人に制限されているところ、本件被疑者には現在すでに二名の弁護人が選任されており、その内の一人たる永野弁護人には、被疑者より同被疑者の自署した弁護人選任届書(いわゆる白紙の弁護人選任届)三通が渡され、現に同弁護人の手元において保管されていることが窺われ、かつ同弁護人と本件申立人たる弁護士は友人関係にあり、かつまた申立人は右弁護人より被疑者の弁護人を引受けてほしい旨の依頼も受けていることが明らかであるから、申立人は右のいわゆる白紙の選任届書に署名して提出することによって、容易に被疑者の弁護人になることができる状態にあることが観取できる。

一方、白紙の選任届書を預った永野弁護人は、申立人と被疑者との接見が叶えられて、はじめて申立人と被疑者との信頼関係ができるし、その上で申立人の選任届を提出したいと申出ているが、なるほどこれは白紙の選任届書を被疑者より預っている弁護人の気持としては首肯できる面はある(極めて慎重なやり方として望ましいものと考えられなくはない)が、しかし白紙の選任届書を永野弁護人に預けた被疑者の心情としては、当該弁護人に、依頼する弁護人の人選を全面的に委した趣旨であることも明瞭であり、かつ本件被疑者については、選任された二人の弁護人の外にも、被疑者の依頼により弁護人となろうする者として、これまで三人の弁護士が接見していることが窺われるし、今後も、選任届を提出して弁護人となることができるのに、それをせず、次々と、多数の弁護士が、弁護人となろうとする者として被疑者に接見を求めること(これは被疑者の弁護人を三人に制限した刑訴規則第二七条の趣旨に反する行為と云える)もなしとしないことを考えると、検察官が、現時点において、申立人に対して選任届を提出しない限り被疑者との接見を許さない旨の処分をしたのは、蓋し妥当とすべきもので、これをもって違法、不当の処置と断ずべきではない。

よって、本件申立は理由がないことになるから、刑事訴訟法第四三二条、第四二六条第一項に従って、本件申立を棄却することとして主文のとおり決定する。

(裁判官 高信雅人)

<以下省略>

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