東京地方裁判所 昭和45年(ワ)10073号 判決
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〔判決理由〕一(事故の態様と責任の帰属)
原告主張請求の原因第一項(一)ないし(四)の事実は当事者間に争いない。
そこで本件事故態様について検討する。
<証拠>に弁論の全趣旨をあわせると、訴外竹田は、事故前日午後八時頃より同日午後一一時三〇分頃迄の間に飲んだ日本酒約五合のため、正常な運転ができない状態となつていたのに、加害車を運転したため、自車進路前方で、被害車が停車中であることを見落とし、漫然進行し続け、被害車に追突するに至つていることが認められ、右認定に反する証拠はない。
右認定事実によると、加害車を運転していた訴外竹田は、本件事故につき、自動車運転手として遵守すべき、進路前方を注視し、自車の進行に障害となるものの迅速な発見につとめ、その際は、衝突等の危険を避けるため、安全適切な措置をとるようつとめる注意義務を酒気を帯びていたためもあつて怠り、自車前方で被害車が停車中であることに気がつかず漫然と進行し続けた過失を犯し、そのため本件事故を惹起しているものと認められる。
ところで被告は、本件事故につき自己が使用者の地位にあることを争うので、この点について検討してみるに、被告が加害車の所有者であること、および、訴外竹田が被告の従業員であることは、当事者間に争いなく、次に、<証拠>、弁論の全趣旨によると、訴外竹田は、本件事故当時なんら運転免許を受けていなかつたが、かつて昭和二二年頃より一〇年以上に亘り免許を有していたことがあり、車に関する知識をもつていたこともあつて、被告会社において、建設機械の賃貸業という業務について、その賃貸機械の運搬のために使用する車の配車ならびに保管の業務を担当し、そのかたわら集金業務も受けもつていたこと、本件事故当時、訴外竹田は、被告会社内に居住しており、そのうえ右のように車の保管を執務内容としていた関係上、しばしば、自己の用のため、被告所有車を持出し運転することがあり、被告においてもこれを悟つていたが、特段の措置は講じていなかつたこと、本件事故も、私用で加害車を会社内より持出し運転中惹起したものであること、被告会社の所有車の運行管理の責任者は訴外竹田ではなく、別人とされているが、しかし、実際は訴外竹田において、これに当つていたこと、が認められ、<証拠判断略>、右認定事実によると被告は訴外竹田をして被告の業務用の自動車の保管にあたらせており、被告としては、右訴外人の誠実な職務遂行により、第三者に損害を与える如きおそれある者に運転に当らせないよう措置を講ずべきところ、訴外竹田は無免許でかつ酒気を帯びている自己をして運転する事態に置いたのであるから、車の保管という職務の執行に瑕疵あつたこと明らかで、これがため、飲酒運転から、容易に予見しうる本件事故を惹起せしめたことになる故に、さらに、これまで無免許運転をしばしば行ない、被告においても悟るところがあつた訴外竹田の運転は、その車の保管という業務内容と相まてば、たとえ午前一時という時刻とはいえ、外形的には、被告の業務の執行とみて差支えない故に、いずれにしても被用者たる訴外竹田が被告の業務の執行について瑕疵ある行為をなしたとの原告の主張に添うことになり、従つて、使用者の免責事由がなんら主張立証されていない本件では、被告は、使用者、として賠償責任を免れえないのである。
(損害)
<証拠>、弁論の全趣旨によると、本件事故の際、原告はその所有する被害車の原告主張の各部を損壊され、その修理のための費用として原告主張のとおり合計金二八万八、一〇〇円を負担せざるをえなくなつたほか、その修理期間の一〇日間、従前原告の営むタクシーならびにハイヤー業のために業務用として使用していた被害車を使用することができず、そのため、右車を利用しておれば少なくとも挙げえた一日当り金二、〇〇〇円の割合による純収益合計金二万円をうべかりしところ逸失したこと、が認められ、右認定に反する証拠はない。
右認定事実によれば、修理費用金二八万八、一〇〇円、そして右損壊状況よりして修理期間の一〇日は相当な日数であるから、従つてその間の休車損害である金二万円、この合計金三〇万八、一〇〇円は、本件事故と相当因果関係ある損害ということができる。 (谷川克)