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東京地方裁判所 昭和45年(ワ)3068号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔編注〕

発明の名称 コースロープ用フロート

出願 昭和三八年一〇月二四日(特許出願昭和三八年第五六、一七二号)

公告 昭和四三年五月一〇日(特許出願公告昭和四三年第一一、一五七号)

登録 昭和四三年一〇月二六日、第五二九、八六四号

特許請求の範囲の記載 「コースロープを挿通し得る様にした筒体の外周面に凹陥部を設けて消波性を附与して成るコースロープ用フロート」

〔判決理由〕三 そこで、まず、被告製品が、本件特許発明の技術的範囲に属するかどうかについて検討する。

(一) 本件特許発明の構成要件を次のとおりに分解することができる。

1 コースロープ用フロートであること

2 コースロープ用フロートを挿通しうるようにした筒体から成ること

3 前記筒体の外周面に凹陥部を設けて消波性を附与したものであること

(二) 次に、被告製品の構造が、次のとおりに分解できることについては、当事者間に争いがない。

1' コースロープ用フロートであること

2' コースロープを挿通しうるようにした筒体から成ること

3' 右筒体の外周面に互いに交叉する複数本の幅五ミリメートル、高さ四ミリメートルと二ミリメートルの突条部3、4を形成することにより、縦・横ともに五ミリメートルの多数の凹陥部5を設けてあること

(三) そこで、両者を対比すると、被告製品が本件特許発明の1、2の各構成要件を具備するものであることは、当事者間に争いがない。

本件特許発明の凹陥部と被告製品の3の構造に消波性があるかどうかとについて検討する。まず、当事者間に争いのない事実と本件特許発明の特許公報とによれば、従来の単なる円鋳状のフロートでは、泳者の泳行時に生じる波がフロートに当つて反射され、これが泳者の身体に抵抗として作用し、そのために泳進速力に影響を及ぼすものであつたとし、本件特許発明は、この欠点を除去したフロートを得ることを目的として、「泳者によつて生じる波をフロートによつて細かく乱反射し、すなわち消波性を附与したもの」であることが明らかである。そして、前掲公報には、「……又、スパイラルの凹状1aは凹陥部等に変換出来、要はフロートの外周に消波性を附与し得れば可なるものである。」と記載されていることが認められる。以上の事実と本件特許請求の範囲の記載を総合すると、本件特許発明の構成要件3は単に筒体の外周面に凹陥部を設けてあればよいものではなく、その凹陥部は、少なくとも、泳者によつて生起される波を細かく乱反射して消波するに足りる構造のものであることを要するものといわなければならない。

これに対し、被告製品の凹陥部は、前記のとおり深さが四ミリメートルと二ミリメートル、幅が縦・横ともに五ミリメートルのものであるところ、これによつても、泳者によつて生起される水波を消波するに足りる旨のT作成の鑑定書の記載と証人Tの証言部分があるけれども、これらは、O作成の「プトル用コースロープの消波性能についての実験報告書」と証人Oの証言に照らし、たやすく採用できないし、ほかに、「被告製品の凹陥部が、原告主張のような本件特許発明に不可欠な消波性能を有するものであることを肯認できる証拠は存しない。かえつて、<証拠>によれば、泳者の波長のうち最小のものは1.72センチメートルであつて、凸がこれと同程度かこれ以上の大きさであるときにのみ、水の粘性を考えても、水波の乱反射による消波性能を肯定しうるものであり、また、泳者によつて生起する水面波については、波長一〇センチメートル以下のものは、泳者に対する影響の考察にあたり、考慮の要がないといつて妨げがないものであるところ、被告製品の凹陥部の大きさが前認定のとおりこれよりも小である以上、泳者によつて生起する波がいわゆる鋸歯状波(見かけの波長と同じ波長を有する正弦波とそれより波長の短いかつ振幅の異なる無数の正弦波(波長・振幅が一定の規則的関係を有する波)を合成したもの)に近い波であるとしても、その凹陥部によつてこの水波を乱反射して砕破し消波するに足りないことが推認される。

(四) そうだとすると、被告製品は、本件特許発明の3の構成要件を備えないから、その技術的範囲に属するものとは、いゝえない。

四 よつて、原告らの本訴各請求は、いずれもその余の点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却する。

(荒木秀一 高林克己 野沢明)

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