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東京地方裁判所 昭和45年(ワ)3769号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕責任

(一) 被告会社が甲車の運行供用者、運転者大嶋の使用者として、自賠法三条、民法七一五条一項により原告の蒙つた損害を賠償すべき義務があることは同被告の争わないところで、前記争のない事実から明らかである。

(二) 被告井口の責任

1 被告会社が原告主張のような業を営むものであつて、被告井口がその代表取締役であることは当事者間に争がない。

<証拠>によれば、被告会社は、昭和三六年被告井口と土屋照雄が資本金の各半分ずつを出資して設立され、右両名のほか、成登文雄(代表取締役)、横谷景次が取締役に就任し、その後昭和四一年五月に代表取締役が被告井口に交替したこと、被告会社は藤岡市に本社工場を有し、従業員が約二〇名であること、被告会社の経営は思わしくなく、設立当初はともかく、役員報酬は支払われず、被告井口は報酬給料等を殆ど受領していないこと、被告井口が被告会社の代表取締役に就任した後において、被告井口は、資金面を担当するに止まり、その常務は藤岡市に常駐し被告会社の常勤者である土屋(専務取締役)、横谷(営業部長)がこれを総括し、むしろ、土屋は経営全般を委かされて、従業員の採用をも自ら決していたことが認められる。

右事実によれば、被告井口は、被告会社の代表取締役とはいえ、その業務の遂行を自ら直接監督すべき地位にあつたものとはいえず、本件事故につき民法七一五条二項によつて責任を負うものとは認められない。

2 被告井口が昭和四三年七月二三日原告に対し被告会社の債務(その範囲については後記)につき連帯保証する旨を約したことは当事者間に争がない。

<証拠>は、確認書と題し、原告が事故により蒙つた損害中、昭和四三年七月末までの治療費、休業補償、雑費が五九万四五二五円であつて、うち未払分が二二万五七七〇円であることを確認し、これを被告会社が支払うこと、以後毎月の分として一〇万円を翌月一〇日までに被告会社が支払うこと、被告井口はこれを連帯保証する旨の記載があり、原告、被告らの署名押印が存する。

<証拠>によれば、当時原被告らは、なお原告の症状が治癒していないものであることを認識し、原告の当面の出費をどうするかを考えたうえで、右合意に達したものであつて、被告井口の保証した範囲は、昭和四三年七月以前の分に限られず、以後毎月の分にも及ぶものとしたことが認められる。被告兼被告会社代表者本人の供述中右認定に反する分は措信しない。

しかし、右合意成立の経緯からみて、被告井口が保証した債務が、治療費、休業補償及びその他現実の出費の範囲を超えるものと認めることはできず、原告の損害中、慰藉料、弁護士費用はもとよりその範囲外であり、休業損害ないし逸失利益についても症状固定後のそれを含むものでないと解するのが相当である。

してみると、被告井口の保証した範囲は、前掲三の損害のうち、(一)、(二)、(三)及び(四)の1に限られ、その総額は一六三万九五八〇円となる。 (高山晨)

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