東京地方裁判所 昭和45年(ワ)4748号 判決
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〔判決理由〕(2) 車輛損 九万七、〇〇〇円
乙車の所有者は、原告島野の兄であることが認められるが、これを借りていた同原告が兄にこれを原状に復して返還する債務を負つているものであつて、この原状に復するための費用は、同車が大破で修復は不能であるので、時価相当額であるというべきである。
そうすると、前掲証拠から、乙車が車検をとつて間もない四〇年型ホンダS八〇〇であること、修理工場の評価額が一〇万円であつたこと、乙車は三、〇〇〇円で屑屋に引きとられたことが認められ、これと当裁判所に顕著な同車の新車価額六五万三、〇〇〇円(但し昭和四一年)を定準法にしたがつて四年の償却を行つても一六万三二五〇円となることを考慮すると、少くとも表記金額の損害は認められる。
(二) 逸失利益 四三万二、〇〇〇円
原告島野は、弁護士秩崎丈助のあつせんで昭和四四年三月末頃面接を受けたうえで城西大学に入学できることとなつていたのに、その面接日が前記入院加療期間中であつて担当医師からの差止めがあつたため、面接を受けることができなくなり、翌昭和四五年四月正規の入学試験手続を経て同大学に入学したことが認められ、労働大臣官房労働統計調査部発表の昭和四六年賃金構造基本統計調査報告第二巻第九表によれば、同年度における大学卒男子の平均初任給は、四万六、四〇〇円であるから、原告島野が大学の入学が一年遅れたことによる喪失給与額は、五五万六、八〇〇円であり、これを昭和四九年三月末日一括して支給を受けるものとしてライプニッツ方式により年五分の割合による中間利息を控除して本件事故当時の現価額を求めると、四三万六二五二円となり、同原告主張の四三万二、〇〇〇円は、右金額の範囲内であるので肯認し得る。
なお、被告は、右のような縁故入学が法の保護の対象とならない性質のものである以上、仮りに本件事故による受傷のため同原告が入学できなかつたとしても、その点の損害の賠償を請求することは許されないと主張する。しかし、私立大学における縁故入学がその学校法人の経営方針上許容されている以上、その妥当性はともかくとしても、入学自体を違法法なものとまでは認め難いから、事故による負傷のため右入学ができず、大学への入学が一年遅れたことも、同原告に生じた不利益として損害評価の一資料とすることは可能というべきであるので、被告の右主張は採用できない。
(渡部吉隆 佐々木一彦 鎌田義勝)