東京地方裁判所 昭和45年(ワ)4762号 判決
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〔判決理由〕原告らは、本件バスの運転者に後方不確認、徐行義務違反等の過失があつた旨主張する。しかし以上認定の事実関係からすると、仮りに本件バスの運転者今井に後方確認の注意義務があつたとしても、亡正明が本件単車を前記標識柱に触させて急に不安定な状態になり、転倒し始めたのを確認した後に急ブレーキをかけ、或いはハンドルを切つても本件バスの前記速度からして本件事故の発生を回避することはできないものというべきである。また、道路を直進するバスの運転者にも、具体的な交通状況・道路状況に応じて徐行ないし一時停止をなすべき義務が発生することがありうることは否定できないが、他に何ら異常な事態はないのに、バスの後方を進行する自動二輪車等が違法にもバスの左側から高速度で追越そうとし、自らバランスを失してバスの後輪の直前に倒れ込んでくることまで予測して、事故の発生を防止するため徐行運転すべき注意義務があるものとは到底考えられないから、今井にも本件事故の直前において徐行義務があつたものとは認められない。むしろ、前記認定のような事実関係においては、今井には何ら運転上の過失はなく、本件事故の発生はもつぱら、先行車の左側から追越そうとしたうえ、ハンドル操作を誤り自車を標識柱に接触させて転倒した亡正明の過失によるものというべきである。 (加藤和夫)