大判例

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東京地方裁判所 昭和45年(ワ)8931号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一 請求原因一の事実は当事者間に争いがない。

そこで、事故の状況について考えると、

事故現場が別紙見取図(イロハの丸太の所在を除く)のとおりで、幅員約四メートルの甲、乙道路がややずれて交わる交差点の近くであること、付近は閑静な住宅地で、当時は晴天で路面が乾操し、歩行者や他車両の姿はなく閑散としていたこと、甲道路を北へ向つて交差点に向う車両(後記、被告車進路)からみて、交差点右手前角は空地となつていて立木や雑草が生い繁つていたが、雑草の高さが一メートル以下であつて立木の間から車両等の存在は確認できる状態であることは当事者間に争いがない。

<証拠>よれば、次の事実を認めることができる。

(1) 乙道路は現場附近では昼頃には人車の進行が余りない。

(2) 交差点の南東角(A角)から三〜四メートル位東の道路脇(南側)には大きな杉の木があり、その根本周辺は土地が高くなつているうえ、笹や雑草が生い茂つていて、そのため、被告車のように甲道路、南側から交差点に進入する車両にとつては右側道路の見とおしはかなり妨げられる。

(3) 被告車は長さ約四、八二メートル、幅約一、七八メートルの左ハンドルの自動車である。

(4) 被告は、被告車を運転し、甲道路を南から交差点に向つて進行し、右折して乙道路に進入したものであるが、交差点進入前二回位警笛を吹鳴し、約二〇キロメートル毎時の速度で大曲りして右折進行した。

(5) 原告は、当日午前九時頃0.4リットル位飲酒して、図面をたよりに現場詰所を探し歩いていたが、尋ねあてられないまま約二時間歩きまわり、現場附近(別紙見取図イロハの附近をいう)において腰を下して図面を見たり、横になり、あるいは仮眠したりした。(その行動及び位置の詳細は必ずしも明らかでない。)

(6) 原告は事故発生直前、道路端の見取図ハ附近にある丸太の脇の道路上に頭を西側にして大の字になつて仰臥していた。そして、当時ある程度酩酊してアルコール臭が感ぜられる状態であつた。

(7) 被告車は、その右後輪で原告の前面、右肩部から右脇腹附近を轢過して直ちに停止した。(この轢過態様は争のない傷害部位にも照応する。)

被告は右轢過前原告の存在に全く気付かなかつた。

(原告本人の供述(第一回)のうち、右認定に反する部分は、証人篠崎つね、被告本人の各供述に照らし措信しない。ことに、事故直前、原告が道路脇、別紙見取図イの位置にあつた丸太を背にして横になり、地図を見ていたとの地点及び警笛を聞いてその方向(B角の方)へ避けたとの点は、待避行動として不自然に過ぎるうえ、轢過態様においても矛盾が解けないので、措信できない。)

以上の事実に基づいて考えると、

被告は、被告車を運転して甲道路から交差点に進入して右折するに際し、A角の脇に存する立木、雑草等のため、右側乙道路への見とおしが悪く、車両の存在はともかく、乙道路南側近くの歩行者等の存在は半ば死角同然でこれを確認することが至難であるのに、その確認に十分の注意を払うことなく(交差点進入後に安全を確認した事実は認められない。)、警笛を吹鳴しただけで前掲速度で大曲り右折進行したもので、その結果、同所にいた原告を轢過したものである。

右道路の状況からすれば、被告車の前半が交差点に進入した後に、一時停止あるいは徐行して側方に注意を払えば、原告の存在を発見でき、そして、轢過を事前に避け得たものということができる。それにも拘らず、被告は、原告を轢過するまで、その存在を知らなかつたものであつて、その点において被告車運転上の過失を免れない。すなわち、故なく横臥するとはいえ、道路上に静止する人の存在を認めず、これを轢過した場合は、車道上その他で人が本来存すべきでない点等でない限り、進行する車両の側の過失とみるべきものである。

しかし、一方、原告は酩酊して道路上に故なく横臥して進行して来る車両を避け得なかつたのであるから、事故発生につき過失があるものといわなければならない。

したがつて、被告車の所有者であり、運行供用者であることに争いがない被告は事故による損害について自賠法三条による賠償義務を免れない。しかし、前掲道路状況等を考慮して原告の前記過失を斟酌し、原告の蒙つた損害のうち、被告が賠償すべき分はその三分の二相当額とするのが相当である。

(高山晨)

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