東京地方裁判所 昭和45年(借チ)1078号 決定
〔主文〕1 申立人が、本裁判確定の日から三か月以内に相手方に対し金五〇四、〇〇〇円を支払うことを条件に、別紙目録(二)記載の増改築を建築基準法の制限内でなすことを許可する。
2 前項の金員が支払われた場合、本件賃貸借の期間を昭和六六年五月三一日までに延長する。
〔理由〕一 本件申立の要旨
1 申立人は、昭和五、六年の初夏のころ、田中捨三郎から別紙目録(一)記載の土地(以下「本件土地」という。)を非堅固建物所有の目的、期間の定めなく賃借し、その後、相手方が本件土地の所有権を取得し、賃貸人たる地位を承継し、本件賃貸借の現賃料は、3.3平方米当り月額八〇円である。
2 申立人は、本件土地のうえに別紙目録(二)記載の建物を所有しているが、これを、同目録記載のとおり増改築すべく計画中のところ、本件賃貸借契約には増改築制限の特約はないが、相手方は承諾なく増改築をすれば契約を解除する旨主張するので、右承諾に代わる許可の裁判を求める。
二 裁判所の判断
1 本件で取調べた資料によれば、前記一の1の事実(ただし、契約締結日は昭和四五年五月ごろである)のほか、本件賃貸借は、昭和三五年法定更新されたことを認めることができる。
相手方は、本件賃貸借の期間は二〇年の約であつたと主張するが、右事実を認めるに足る資料はない。
ところで、申立人は、本件賃貸借には、増改築制限の特約は存しないと主張するが、相手方はこの特約の存在を主張し増改築を阻止しようとするものであり、増改築制限特約をめぐつて増改築が阻止される虞れがある以上、本件申立はその利益があり適法である。
しかして、本件増改築計画は、土地の利用上、法令の制限上適法であり、他にこれを不当とすべき事由はない。相手方は、現存建物は朽廃に近いと主張するが、前記資料によれば、現存建物は粗悪な資材で建築され、かなり老朽化してはいるが、相手方が朽廃による消滅を近い将来期待しうるものとは認めがたい。
そこで、本件増改築は後記の附随処分のもとにこれを許可すべきである。
2 附随処分につき検討する。
鑑定委員会は、本件改築を認める場合期間を二〇年に更新して、財産上の給付金として、金四五八、〇〇〇円を申立人に支払わせるのを相当とし、その根拠とし、本件土地の更地価格を3.3平方米当り金二三四、〇〇〇円、借地権価格をその七〇%とし、改築に際しては、慣習として、借地権価格の一〇%ないし更地価格の一〇%が支払われていることを基礎として、本件においては残存期間が一〇年あるので、借地権価格の五%を相当とする、という。
当裁判所は、本件改築許可に伴い、当事者双方の希望に従い期間を本裁判確定後約二〇年となるよう約一〇年間延長し、昭和六六年五月三〇日までと定める。
ところで、本件改築許可により、申立人は、借地期間の延長および建物朽廃による借地権消滅の危険を免れ、特段の事由のないかぎり、少くとも右期間満了までは安定した借地権を確保しうる反面、相手方にこれに応じた不利益を与えるのであるから、右利害を調整するため申立人に財産上の給付を命ずべきである。しかして、当事者間で期間を更新する際には、右期間中の借地関係の継続は予定されたところであつて、建物が老朽化している場合は、この建物の改築承諾料も含めて合意されるのが通例であり、朽廃による借地権の消滅が容易に生じないことを考慮すれば、前記当事者間の利害を調整する給付金は、結局延長期間による利害の調整金を基礎として算定し得る。鑑定委員会の算定の方法も慣行的な更新料を基礎にし、右と同趣と考えに立つもので、正当であると認められるが、残存期間は上記のとおり九年であり、延長期間は一一年となるから、借地権価格の一〇%である3.3平方米当り金一六、三八〇円に二〇分の一一を乗じ、借地面積を乗じて、右意見を修正すると、申立人に命すべき財産上の給付は金五〇四、〇〇〇円(千未満切捨て)となる。なお、その余の借地条件を変更する必要はない。 (筧康生)
目録(一)
(土地)
東京都江東区亀戸五丁目二七八番
宅地 573.78平方米のうち、184.80平方米(56坪)
目録(二)
(現存建物)
東京都江東区亀戸五丁目二七八番地
家屋番号二七八番二
木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建居宅、作業所
30.57平方米
現況
木造、トタン、瓦葺平家建居宅、工場80.96平方米(24坪)
(増改築計画)
現存建物のうち、工場部分を残し、残部分を取りこわし、
木造二階建 居宅
を建築する。