東京地方裁判所 昭和45年(借チ)2057号・昭45年(借チ)2054号 決定
〔主文〕1 右戸田辰之亟から島村豊之進に対し別紙目録(一)記載の土地賃借権および同目録(二)の(1)記載の建物を代金三、五一七、〇〇〇円で売り渡すことを命ずる。
2 右戸田辰之亟は、島村豊之進から金三、五一七、〇〇〇円の支払を受けるのと引換えに、島村豊之進に対し、別紙目録(二)の(1)記載の建物の所有権移転登記手続をし、かつ同目録(二)の(2)の建物部分を明渡せ。
3 右島村豊之進は、前項の建物の明渡および所有権移転登記と引換えに、戸田辰之亟に対し、前記第一項の代金の支払をせよ。
〔理由〕一 右戸田辰之亟(以下「相手方」という。)から別紙目録(一)記載の土地(以下「本件土地」という。)に関する同目録記載の賃借権の譲渡許可の申立が適法になされたところ、賃貸人島村豊之進(以下「申立人」という。)から右同土地に存する同目録(二)の(1)記載の建物(以下「本件建物」という。)および本件土地賃借権譲受の申立が適法になされたので、借地法九条の二第三項により右建物および土地賃借権の対価を定めて譲渡を命ずる。
二 譲渡の対価につき検討する。
鑑定委員会の意見の要旨は、「賃貸人が買受ける本件土地賃借権および本件建物の対価は合計金三、四〇三、〇〇〇円を相当とする。すなわち、本件土地の価格(現状建物の存する状態の価格で更地価格の一〇%減)を一平方米当り金四五、〇〇〇円、借地権価格を、その七〇%である一平方米当り金三一、五〇〇円合計金四、六六三、〇〇〇円、建物価格を、再調達原価から経過年数により減価して金四四二、〇〇〇円と評価する。これは空家としての第三者に譲渡する価格であるが、本件建物は、西側一戸が貸家であるから、借家権価格を控除すべきであり、右控除額は、この種地域におけるこの種の建物につき一般に標準的と認められる割合により、西側空家価格の五〇%に当る金一、二三六、〇〇〇円(建物金九三、〇〇〇円借地権金一、一四三、〇〇〇円)とする。しかして、賃貸人が買受ける際には、第三者に譲渡する価格から賃貸人に支払われる名義書替料相当額を差引くべく、その額は、本件賃借権の成立時期、経過期間を考慮して、借地権価格の一〇%である金四六六、〇〇〇円とする。結局賃貸人が買受ける額は上記のとおりとなる。」というにある。
当裁判所も、本件土地賃借権および本件建物を一般第三者に譲渡する対価が借家権価格を控除した金三、八六九、〇〇〇円であるとする鑑定委員会の意見を相当と認める。ところで、右の価格は、賃借人が一般第三者へ譲渡すべき客観的な交換価格であるが、賃貸人が譲受ける価格は、賃貸人と賃借人との具体的な借地関係に基づき、公平上、右の交換価格を顕在化するに際し、その一部を賃貸人に還元すべき部分が存する場合には、一般交換価格から右部分を控除した価格による。しかして、賃借権付建物に借家権価格が発生している場合には、その控除額は、右借地権価格中から借地権の負担になる借家権価格を控除した後の価格を基準とする。けだし、右控除額は、賃借人が客観的に交換によつて得る利益の一部であり、その交換価格じたいが借家権により価格を減じている以上、自己の得ない利益を基礎として賃貸人に還元する必要はないからである。これを本件についてみるに、本件賃貸借の経緯および東京都内における借地慣行にてらし、右控除額は、鑑定委員会の意見による本件土地の借地権価格金、六六三、〇〇〇円から借家権価格中右借地権価格の負担たるべき金一、一四三、〇〇〇円を控除した金三、五二〇、〇〇〇円の一〇%にあたる金三五二、〇〇〇円とするが相当である。
三 そこで、結局、賃貸人たる申立人の譲受ける本件土地賃借権および本件建物の対価は金三、五一七、〇〇〇円となり、右金員の支払と本件建物の登記手続および相手方が占有している別紙目録(二)の(2)の建物部分の明渡を同時に履行させることとし、借地法九条の二第三項により主文のとおり決定する。(筧康生)
目録 (一)
賃借権の内容
1 目的土地 東京都北区神谷三丁目四四番地三 宅地317.02平方米(95.90坪)のうち、152.06平方米(46坪)ただし実測148.03平方米(44.78坪)
2 賃貸人 申立人
3 賃借人 相手方
4 目的 普通建物所有
5 成立 昭和三三年六月一七日
6 期間 定めなし
7 現地代 一か月金四、三七〇円
目録 (二)
(建物)
(1) 東京都北区神谷三丁目四四番地
家屋番町 四四番三〇
木造瓦葺平家建 居宅
67.76平方米(20.50坪)
附属
木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建物置
3.30平方米(1坪)
(2) 右建物のうち、相手方占有中の東側部分
39.66平方米(約12坪)