東京地方裁判所 昭和45年(借チ)2081号 決定
〔主文〕本件申立を却下する。
〔理由〕一 本件申立の要旨
1 村井敬三は、昭和二年一一月一六日堀部半治郎から、別紙目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を含む土地(141.86平方米)を、非堅固建物所有の目的、期間の定めなく賃借し、そのうえに、家屋番号八三番一〇、木造スレート瓦葺二階建店舗(登記簿上、一階28.65坪、二階18.91坪)を所有していた。
2 申立人は、昭和二六年一二月三一日右村井敬三から右建物を買受けるとともに賃借人たる地位を承継し、右建物を増築したが、右建物は昭和四三年一一月一八日火災により半焼したところ、相手方は、その後右罹災部分の敷地である本件土地を買受け、賃貸人たる地位を承継した。
3 申立人は、右焼失部分を改築して木造瓦葺二階建店舗(一、二階とも58.32平方米)を建築すべく計画中であり、本件賃貸借契約には増改築制限の特約はないのに、相手方は承諾料の支払のないかぎり工事に着手してはならないと主張するので、相手方の承諾に代わる許可の裁判を求める。
二 当裁判所の裁判
本件で取調べた資料によれば、前記一の1、2の事実のほか、申立人と越部半治郎間の土地賃貸借契約は、昭和三二年二月一六日法定更新されたこと、右賃料は、昭和四三年四月以降3.3平方米当り一カ月金一五〇円であつたが、相手方が本件土地を買受けた後その受領を拒絶したので申立人において供託中であることを認めることができる。
ところで、申立人は、本件土地分筆前には、本件土地を含む一筆の土地である東京都北区滝野川六丁目八三番三の土地のうえに、登記のある前記建物を所有しており、かつ、右建物は火災にあつたとはいえ、その後も建物として存在し、申立人らの居住に供されていることは前記資料によつて明らかである以上、申立人は、その後右土地の一部である本件土地を分筆のうえ取得した相手方に対し本件土地上の建物の存否にかかわらず、前土地所有者との賃借権を対抗できることは明らかである。(参照最判昭和三〇年九月二三日集九巻一号一三五〇頁)そこで、申立人は、相手方に対し、本件土地につき適法な賃借権を有する。
しかし、前記資料によれば、本件賃貸借につき増改築制限の特約はなく、このことは、相手方も争わないところである以上、申立人は、非堅固の建物であるかぎり、相手方の承諾をうる必要なく、適法に改築をなしうるもので、したがつて、申立人が本件申立をする利益はないものといわなければならない。
よつて本件申立は申立の利益を欠き失当であるので却下することとし、主文のとおり決定する。(筧康生)
目録
東京都北区滝野川六丁目八三番一三
宅地 66.11平方米