大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和45年(借チ)2097号・昭45年(借チ)2083号 決定

〔主文〕1 申立人に対し、別紙目録(一)1、2記載の建物及び同目録(二)記載の土地賃借権を相手方に譲渡することを命じ、その対価を金六五一万一、〇〇〇円と定める。

2 申立人は、相手方から前項の対価の支払を受けるのと引き換えに、相手方に対し、別紙目録(一)1、2記載の建物の所有権移転登記手続をし、かつ、右建物の引渡をせよ。

3 相手方は、前項の建物所有権移転登記手続及び建物の引渡と引き換えに、申立人に対し、第一項の対価の支払をせよ。

〔理由〕(甲事件の申立の要旨)

1 申立人は、相手方から、別紙目録(二)2記載の土地(以下本件土地という)を同目録(二)3、4、5記載の条件で賃借中にして、同地上に別紙目録(一)記載の建物(以下本件建物という)を所有している。

2 申立人は、本件建物及び本件土地賃借権を東京都新宿区早稲田鶴巻町三七一番地内記基一に譲渡したいが、相手方の承諾が得られないので、賃貸人の承諾に代わる許可の裁判を求める。

(決定理由)

1 本件の資料によると、甲事件の申立の要旨として揚げた前記1の事実が認められるので、甲事件の申立は適法である。

2 よつて、乙事件の申立に基づき、申立人に対し、本件建物及び本件土地賃借権を相手方に譲渡することを命ずる。譲渡の対価につき、鑑定委員会は、本件建物二棟のうち、二階家はいまだ経済的耐用年数七年を残し、設計、施工の質等から環境に適合しており、平家は法定耐用年数経過後の老朽建物である現状から考え、相手方において、二階家を他に賃貸し、平家を取り毀してその敷地を更地化するとの前提に立ち、二階家の敷地部分を52.69平方米(16坪)、平家の敷地部分を46.28平方米(14坪)とし、二階家及びその敷地部分の対価を家賃月額三万円による収益価格に求めて、これを二七〇万円とし、平家及びその敷地部分の対価を右敷地部分の借地権価格に求めて、これを三一四万円とし、その合算額から名義書替料(借地権譲渡承諾料)を控除したものをもつて本件建物及び本件土地賃借権譲渡の対価とするが、僅か三〇坪の土地を二分して利用すること自体土地の効率的利用の観点から問題があるばかりでなく、鑑定委員会は本件土地全部の借地権価格を六四〇万円と評価しているので、本件二階家及びその敷地部分の前記収益価格は、右評価による右敷地部分の借地権価格三四一万円余(六四〇万円の三〇分の一六)より七〇万円余も低いこととなり、不合理である。収益価格は、土地の最有効使用を前提として求めるべきものであり、本件の資料によれば、本件土地が住居地域、準防火地域、第四種容積地区の指定を受けていることが認められるので、本件土地上には床面積、階層とも本件二階家より大きい建物を建築することが可能であり、従つて、家賃収入も本件二階家のそれより多額でありうることは容易に考えられることであるので、鑑定委員会が示した対価に見られる前記不合理は、収益価格を求めるに当り、同委員会が、本件土地の最有効使用につき考慮を払わなかつたためか、最有効使用の認定を誤つたがためであると思われるので、同委員会の対価算定方法には賛成しかねる。

賃貸人が賃借人から土地賃借権と地上の建物を譲り受ける場合の対価は、借地権価格と建物価格の合算額から第三者に土地賃借権を譲渡する場合賃貸人に支払うべき承諾料を控除したものとするのが一般であるので、本件においても右の方法に依ることとする。鑑定委員会は、本件土地の借地権価格を六四〇万円、本件建物のうち二階家の価格を七四万円、平家の価格を一万一、〇〇〇円と評価する。価格については右評価に従う。同委員会は、借地権譲渡の承諾料は、慣行的に、更地価格の一〇%ないし一五%、借地権価格の一〇%ないし二〇%であるとし、本件の場合諸般の事情を考慮し、一一〇万円をもつて適正な承諾料としている。右額は、同委員会の評価による本件土地借地権価格の一七%強になる。ところで、慣行的な承諾料は、今回の借地法改正以前から存するものであり、今回の改正により借地権の譲渡性が大幅に認められ、賃貸人の意思に反しても譲渡しうることになつたので、右借地権の強化に伴い、承諾料も改正前より下廻つて然るべきであるので、本件では、鑑定委員会の示した慣行承諾料の最低限、すなわち、借地権価格の一〇%をもつて相当とし、本件建物及び本件土地賃借権譲渡の対価を六五一万一、〇〇〇円と定める。

(小山俊彦)

目録

(一) 建物

1 東京都新宿区早稲田鶴巻町二二三番地四

家屋番号同町二二三番二二

木造瓦葺二階建居宅

床面積 一階26.44平方米(8坪)

二階23.14平方米(7坪)

2 同所

(未登記)

木造スレート葺平家建居宅

床面積 約16.50平方米(約5坪)

(二) 土地賃借権

1 当事者

賃貸人 相手方

賃借人 申立人

2 借地権の目的たる土地

東京都新宿区早鶴田稲巻町二二三四

宅地 588.50平方米(178坪3勺)

のうち 99.17平方米(30坪)

3 使用目的

非堅固建物所有

4 存続期間

昭和六三年一月二日まで

5 賃料

昭和四五年六月一日以降一ヶ月四、五五〇円

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!