東京地方裁判所 昭和45年(刑わ)4836号 判決 1971年4月27日
主文
被告人を禁錮一年に処する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は
第一、自動車運転の業務に従事しているものであるが、昭和四四年一月二六日午後八時四〇分ころ、普通貨物自動車(一・二五トン車)を運転し、東京都北区出井頭無番地先の車道の幅員約一三メートルの道路を西ケ丘六丁目方面から環七通り方面に向かい時速約四〇キロメートルで進行中、前方を注視し、進路の安全を確認しつつ進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、前面ガラスを拭くなどして前方注視不十分のまま前記速度で進行した過失により、進路前方で減速した申相澈(当時五一年)運転の普通乗用自動車を直前に発見し、急制動の措置をとつたが間に合わず、自車を右申運転の車両に追突させ、よつて右申に加療一か年以上を要する第七.一一・一二胸椎圧迫骨折等の、同車の同乗者盧永植(当時四八年)に加療約一か年間を要するむちうち症の、各傷害を負わせ
第二、呼気一リツトルにつき〇・二五ミリグラム以上のアルコールを身体に保有し、その影響により正常な運転ができないおそれがある状態で、前記日時・場所において、前記貨物自動車を運転し
たものである。
(証拠の標目)(省略)
(法令の適用)
判示所為のうち、第一は刑法二一一条前段、罰金等臨時措置法三条に、第二は昭和四五年法律第八六号附則六項により同法による改正前の道路交通法六五条、一一七条の二第一号、昭和四五年政令第二二七号附則五項により同政令による改正前の道路交通法施行令二六条の二に該当し、第一は一個の行為で数個の罪名にふれる場合であるから、刑法五四条一項前段、一〇条により犯情の重い申相澈に対する罪の刑に従つて処断することとし、所定刑中第一について禁錮刑を、第二について懲役刑を各選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条により重い判示第一の罪の刑に同法四七条但書の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を禁錮一年に処し、訴訟費用は刑訴法一八一条一項本文により被告人に負担させる。
(情状)
被告人には道路交通法違反による罰金刑の前科が七回あり、そのうち一回は酒酔い運転によるものであるのに、再び飲酒して車を運転し、被害車両に激しく衝突してその運転者には後遺症を残す重い傷害を負わせ、その同乗者にも長期間の治療を要する傷害を与えたものであり、その犯情は悪質といわざるを得ない。