東京地方裁判所 昭和45年(特わ)64号 判決 1971年3月30日
被告人
国籍
中国
住居
東京都新宿区西大久保一丁目四三〇番地
職業
医師
戴雅典
一九一五年一一月七日生
被告事件
所得税法違反
出席検察官
河野博
主文
1 被告人を懲役四月および罰金五〇〇万円に処する。
2 右罰金を完納することができないときは四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
3 この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、東京都新宿区西大久保一丁目四三〇番地に居住し、同所ほか六箇所において診療所・旅館・トルコ風呂・サウナ風呂等を経営しているものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外して簿外預金を設定する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ
第一、昭和四一年分の実際課税所得金額が二八、六九一、二〇〇円あったのにかかわらず、昭和四二年三月一四日東京都新宿区柏木三丁目三一二番地所在の所轄淀橋税務署において、同税務署長に対し、課税所得金額が六、一四〇、七〇〇円でこれに対する所得税額が二、〇八八、九二〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって同年分の正規の所得税額一四、七三三、二九〇円と右申告税額との差額一二、六四四、三七〇円を免れ
第二、昭和四二年分の実際課税所得金額が二三、七三七、〇〇〇円あったのにかかわらず、昭和四三年三月一三日前記淀橋税務署において、同税務署長に対し、課税所得金額が八、一八六、〇〇〇円でこれに対する所得税額が三、〇九三、六〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって同年分の正規の所得税額一一、七五四、一〇〇円と右申告税額との差額八、六六〇、五〇〇円を免れ
たものである。(右各所得の内容は別紙一、二の各修正貸借対照表のとおりであり、右各税額の計算は別紙三の税額計算書のとおりである。)
(証拠の標目)(かっこ内は立証事項であり、数字は別紙一、二の各修正貸借対照表の勘定科目の番号である。)
一、大蔵事務官作成の次の調査書
1 貸借および損益科目ならびに現金の年間異動状況調査書(三の1、四の1)
2 診療収入等調査書(三の1、4、19、四の1、4、19)
3 トルコ風呂収入金額等調査書(三の1、四の1)
4 旅館収入調査書(三の1、四の1)
5 飲料売上等調査書(三の1、6、四の1、6)
6 公祖公課調査書(三の1、四の1)
7 旅費通信費調査書(三の1、四の1)
8 広告宣伝費調査書(三の1、四の1)
9 雇人費等調査書(三の1、四の1)
10 地代家賃調査書(三の1、四の1)
11 雑費調査書(三の1、四の1)
12 普通預金残高および収入利息等調査書(三の2、22、四の2、22)
13 定期預金残高等調査書(三の3、22、四の3、22)
14 銀行調査書(三の2、3、22、四の2、3、15、20、22)
15 戴欣欣の株式等取引の調査書(三の5、9、17、19、四の5、9、17、19、22、24)
16 藤本昌子関係支払金調査書(三の19、四の19)
17 所得税住民税納付状況調査書(三の19、四の19)
一、次の者に対する大蔵事務官の質問てん末書
1 藤本昌子(二通)(三の8、19、四の8、19)
2 皆川崇光(四の14)
3 戴欣欣(三通)(全般)
4 田中常真(三の2、3、22、四の2、3、20、22)
一、次の者の作成した上申書
1 日本大学医学部長相沢憲(三の10、四の10、18、24)
2 高木勇(三の11、四の11)
3 株式会社旭工務店取締役社長弓削田静男(三の12)
4 東栄工機株式会社代表取締役山口達男(四の12、21)
5 京葉設備建設株式会社代表取締役橋本松夫(四の12、19)
6 ミツワ電気照明株式会社本店責任者塩川邦博(三の12、四の12、19)
7 大木ボイラー工業所大木亀一(三の12、21、四の12、21)
8 東都商事株式会社代表取締役安田正夫(四の14)
9 株式会社梅村タイル店代表取締役梅村周造(三の21、四の21)
10 秋島薬品株式会社代表取締役秋島ミヨ(三の21、四の21)
一、次の者の検察官に対する供述調書
1 戴欣欣(全般)
2 北沢ひな子(三の1、四の1)
3 藤本昌子(三の8、19、四の8、19)
一、次の者の作成した証明書
1 安田信託銀行株式会社新宿支店長宿谷喜人(四の16)
2 株式会社太陽銀行新宿支店長前沢一夫(ただし検察官証拠請求番号甲一の61のもの)(四の20)
一、新宿電報電話局第二電話営業課長佐野真作成の回答書(三の21、四の21)
一、甲府市長職務代理者石山忠平作成の報告書(四の24)
一、押収してある次の証拠物(昭和四五年押一八二三号)
1 東京トルコ御入浴券等一袋(符号8)(三の1、四の1)
2 税金関係領収書一袋(同11)(三の19、四の19、24)
3 四一年分の所得税の確定申告書一部(同19)(全般、特に三の19、24)
4 四二年分の所得税の確定申告書一部(同20)(全般、特に四の19、24)
5 昭和四二年分事業所得収支明細書一綴(同21)(三の6、四の6、22)
6 入場人員等記載ノート四冊(同28の1ないし4)(三の1、四の1)
一、被告人作成の次の上申書
1 固定資産の減価償却費について(三の12、13、四の12、13)
2 土地の取得について(四の14)
3 生活費について(三の19、四の19)
一、被告人に対する大蔵事務官の各質問てん末書(全般)
一、被告人の検察官に対する各供述調書(全般)
一、被告人の当公判延における供述(全般)
(法令の適用)
判示各事実につき所得税法二三八条(いずれも懲役刑および罰金刑を併科)。併合罰加重につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条二項(懲役刑につき第一の罪の刑に加重、罰金刑につき各罪所定の罰金額を合算)。労役場留置につき同法一八条。刑の執行猶予につき同法二五条一項。
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 松本昭徳)
別紙一 修正貸借対照表
戴雅典
昭和41年12月31日
<省略>
<省略>
別紙二 修正貸借対照表
戴雅典
昭和42年12月31日
<省略>
<省略>
別紙三 税額計算書
昭和41年分 昭和42年分
<省略>