東京地方裁判所 昭和46年(ワ)1283号 判決 1981年6月12日
原告
前田祐三
右訴訟代理人
伊東正雄
被告
山本嘉十
右訴訟代理人
佐々木正義
主文
一 被告は原告に対し、金一四二万五〇〇〇円及びこれに対する昭和四六年二月二七日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを五分し、その一を被告の、その余を原告の各負担とする。
四 この判決は第一項に限り仮に執行することができる。
事実《省略》
理由
一1 昭和四四年五月二八日の訴外会社第二七回定時株主総会において、任期満了に伴つて取締役の選任投票が行われた結果、被告、藤田及び山本が選任され、原告は選任されなかつた(それまでは、改選期毎に原告、被告及び藤田が再任されていた)ことは当事者間に争いがない。
原告は、右のように原告が取締役に選任されなかつたのは、被告の違法な(請求原因1の和解に違反し、また、取締役としての任務に違反する)行為によると主張する。
2 まず、取締役としての任務に違反すると主張する点(取締役会において役員改選の議案を付議しなかつた。取締役会の適法な議決なしに、総会において役員選任の方法につき投票によることを提案した。)につき検討する。
前記総会に先立つて同月二〇日取締役会が開催されたことは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、右取締役会においては、総会に提出すべき議題について審議がなされ、役員の任期満了に伴う改選の件についても、その具体的な選任方法までは話題に上らなかつたものの、原告も含めて出席役員全員が、右改選の件を総会の議題とすること自体は当然のこととして了解し承認したものと認められる。
ところで、株主総会の議題については取締役会がこれを決すべきものと解される(商法二三一条)が、右認定事実によれば、本件の役員改選の件を総会の議題とすることについては取締役会の適法な決定があつたものというべきである。取締役の選任は株主総会の決議事項であり(同法二五四条一項)その議決の方法を投票という手段によるかどうかの細目まで取締役会で決定する必要はない。また、原告の主張するような訴外会社の取締役会規則(役員の選任の件については、予め取締役会において候補者につき協議すべき旨の定め)が株主総会の議決を拘束し得るかどうか自体問題である上、このような規則があつたと認めるに足りる証拠もない。
以上によれば、原告が前記のとおり任務違反と主張する点は、いずれも失当というべきである。
3 次に、和解の趣旨に違反するという点につき検討する。
<証拠>を総合すれば、訴外会社では、昭和二七年頃から、当時代表取締役として行動していた被告の取締役たる地位の適法性に疑をとなえる赤平、石田及び原告(主として赤平及び石田)と被告との間に経営権をめぐる紛争が生じ、訴訟にまで発展していたが、同二九年に至つて(なお、当時の訴外会社の株主構成が別表(一)欄のとおりであることは争いがない。)、双方の間で、原告(赤平の実弟)と被告の二人を代表取締役に選出するということで妥協点を見出して裁判外で和解し、右の訴訟等も取下げて紛争を解決したことが認められる。
原告は、右の和解によつて、被告が原告に対し、昭和四四年当時にあつても、原告が取締役に選出されるべく株主ないし取締役として行動すべき法的義務を負つていることを前提にして、被告の行為の和解契約違反を主張する。しかし、<証拠>によれば、右和解に関しては何らの書面も作成されなかつたことが認められ、このことに照らすと、原告を(代表)取締役に選出するべく行動するといつても、これはせいぜい、いわゆる紳士協定といわれるものではないかと思われるし、かりに契約上の厳格な義務を定めたものであるにしても、その後一五年を経た昭和四四年当時にも存続しているとする原告の主張は採り得ない。そもそも、原被告各本人尋問の結果によれば、原被告を代表取締役に選出するというのは、当時生じていた前記紛争をその時点において解決するための方策であつて、暫定的な義務を定めたにすぎないとみるのが相当である。かりに、当事者間で将来に及ぶものと約束したとすれば、法が、取締役の選任を株主総会の専権事項とし(商法二五四条一項)、取締役の任期につき二年を超えることができないと定めている(同法二五六条一項)趣旨に反し、約束自体の効力が問題とされなければならない。原、被告らの内部的な問題としても、一五年も後において右約束に法的拘束力を認めることは相当でない。
結局、原告が和解違反をいう点はその前堤を欠き失当というべきである。
二1 昭和四四年一〇月二〇日の訴外会社の取締役会において、被告ら取締役が、「(1)新株二〇万株を発行する。(2)発行株式は額面株式とし、一株の発行価額は五〇円とする。(3)旧株式に対応する割当を行わず、被告に対し七万八〇〇〇株、藤田及び山本に対し各四万六〇〇〇株、岩川に対し三万株をそれぞれ割当てる。(4)新株払込期日は昭和四四年一一月六日とする。」との新株発行に関する決議をし、右決議に基づいて新株が発行されたことは当事者間に争いがない。
ここで、結論を先に示せば、右の新株発行は、商法二八〇条ノ二第二項にいう株主以外の者に対し特に有利な発行価額をもつて新株を発行する場合にあたり、株主総会の特別決議(同法三四三条)を経る必要があるところ、被告には、(代表)取締役として右手続を経ないで新株を発行した点において任務違反があるというべきである。項を改めてその理由を述べる。
2 本件の新株発行が、株主に新株引受権を与えてこれに発行するというものでなく、株主の一部(被告、藤田及び山本)と株主でない者(岩川)に対して発行するものであることは明らかである。このような場合、「特ニ有利ナル発行価額」で発行するには、旧株主の利益のために、株主総会の特別決議が必要である。
本件の発行価額五〇円が特に有利な発行価額といえるかにつき検討する。
判旨商法二八〇条ノ二第二項の「特ニ有利ナル発行価額」とは、公正な発行価額より特に低い価額をいうものと解してよい。そして、この場合、公正な発行価額とは、新株発行により企図される会社の資金調達の目的が達せられる限度で(すなわち、必要な数の株式の引受人を集めうる限度で)旧株主にとり最も有利な価額、つまりできるだけ高い価額をいうと解するのが相当である。ただ、抽象的には右のようにいえても実際に右の額を判断することは容易でない。市場価格のある場合には、市場価格は有力な手がかりとなるが(株の市場価格自体きわめて多くの要因に左右され必ずしも客観的な評価といい切れない面があるにせよ、他の方法による評価と比較するなら、やはり最も客観性のある資料といえよう。)訴外会社の場合、上場会社でなく株式に市場価格がない(弁論の全趣旨により明らかである。)ため、当時の株式につき右のような意味での公正な発行価額を判断するにはいつそう困難を伴う。本件のような場合当裁判所は、一株当りの純資産額により株式を評価するいわゆる純資産方式を基本にしつつ、会社の経営状況(利益及び配当の状況等)や株式の流通性等の要素を考慮して必要な修正を加え、右の公正な発行価額を判断する他ないと考える。純資産方式は、会社の純資産に対する一株の持分をもつて株式の価額とするものであつて、経済的取引の主体として活動する企業の動態的側面からの評価が欠落しているほか、右にいう持分が清算の段階ではじめて具体化され、それまでは観念的な存在にとどまらざるを得ないという点で、継続企業の株式の評価方法としては必ずしも完全なものといえないことは確かである。しかし、訴外会社のように企業の所有と経営が十分分離されているとはいえない閉鎖的な小規模会社(当時、資本金が一〇〇〇万円であつたことは記録上明らかであり、また、別表(三)欄のとおり株主は形式的には九名いたが、藤田及び原被告各本人尋問の結果によれば、いわゆる名義株があつて、実質的には株主は原告、被告、藤田及び山本の四名で、かつ固定していたことが認められ、前判示のとおり、取締役(三名)には右四名の内から三名が就いていた。)にあつては、個人企業にも似て、実際上株式は会社資産を化体したものとの認識が株主の間に強く働いているとみてもそれほど不合理ではないと考えられ、端的に一株当りの純資産額でもつて株式の価額を評価することは、むしろ実態に即しているともいえる。一般に用いられている他の評価方式として、いわゆる類似会社比準方式とか収益還元方式があるが、本件ではその基礎資料に乏しく採り得ないし、いわゆる配当還元方式についても、本件では株主は単に配当受領の権利を有するだけでなく、現実に訴外会社の経営面に関与し得る立場にあつたと認められるから、必ずしも本件に妥当な評価方法とはいえない。このようにみてくると、純資産方式は、欠点も否定できないとはいえ、本件のような場合ある程度実態を反映しているとみられるし、何よりも単純明快であるだけに他の方法によるより客観性を確保しやすい点は長所といえよう。基本的に純資産方式を中心に据えてよいと考えるゆえんである。ただ、株式の評価に当つて、あくまでも継続企業であることは無視し得ず、一株当りの純資産額がかなりなものであるとしても、その当時の会社の経営状況(利益及び配当の状況等)が悪ければ、実際上そのままの価額で新株の引き受けを期待することはできないから、前判示の意味で公正な発行価額を考えるには、これらの事情を斟酌して右の価額を減額修正する必要がある。また、企業の継続を前提とする以上、現実の資産の換価はあり得ないのであつて(この意味で純資産の割合的持分という考えは観念的である)、株式の現実の換価は譲渡による他ないから、譲渡による換価の可能性の程度もまた実際の株式の価額にかなりの程度影響をもつことは明らかであり、株式の流通性という点も価額の減額修正要素として考慮する必要がある(上場株が市場価格による換価を比較的容易に期待できるのに対し、非上場株はこれが困難であることはいうまでもなかろう。ことに、譲渡制限がある場合はなおさらである。)。以下、このような考えに基づき、訴外会社の株式の公正な発行価額について検討を加えることとする。
まず、訴外会社の当時の一株当りの純資産額について検討するに、当時の訴外会社の純資産額は別紙「訴外会社の増資直前の純資産額」のとおり一億五二七一万円であつたと認められる。これを発行済株式総数(これが二〇万株であつたことは争いがない)で割ると七六三円(円未満切捨)となる。
ところで、<証拠>によれば、当時訴外会社は、欠損及び無配当の状況であり、経営は思わしくなかつたことが認められ、また、<証拠>によれば、訴外会社の株式の譲渡については、取締役会の承認を要する旨の定款の定めがあつた(第八条)ことが認められる。右の各事情と鑑定の結果(ことに、譲渡制限ある株式は、それのない場合に比して三〇パーセント程度の減価を生ずる旨)を考慮して、当時の訴外会社の株式の公正な発行価額は、前認定の一株当り七三六円から約四割を減じた一株当り四五〇円とみるのを相当と認める被告本人は、当時経営状況が極めて悪かつたから、一株五〇円でも高い位で、それ以上の額だと実際上誰も新株を引き受ける者がいなかつたであろうと供述する。しかし、前判示のとおり、訴外会社のような閉鎖的な小規模会社にあつては、株式を評価するにつき最も重視されるべきは純資産額であり、経営状況の良し悪し等を株価の評価に当つて斟酌するにしても被告本人のいうほどに減額されるとみるのは極端にすぎるばかりか、藤田、山本及び被告各本人尋問の結果によれば、被告は、具体的資料に基づくでもなく、また他に特段図つてみるでもなく安易に本件の五〇円という発行価額を提示したものと認められるのであつて、右の被告の供述は採用できない。
なお、鑑定人は、純資産方式を用いるにあたつて、国税庁の「相続税財産評価に関する基本通達」の定めるところにしたがつて、評価替えした純資産額から含み資産の五三パーセントを控除した額を発行済株式総数で除するべきであるという。しかし、右通達は相続税を課するための財産評価という目的から、特別の配慮をしているものと考えられ、本件のように新株の公正な発行価額を求める場合に同様の控除をすべき合理的理由は見出すことができない。
以上に判示してきたところから、本件の新株の公正な発行価額は一株につき四五〇円であつたと認められるから、これを五〇円で発行するのは、明らかに「特に有利な価額で発行する」場合にあたるといえる。そして、本件の新株の発行につき株主総会の特別決議を経ていないことは被告の明らかに争わないところであるから、被告には、(代表)取締役として右手続を経ないで本件の新株を発行した点において任務違反があるというべきであり、かつ、前認定の被告の態度からして少なくとも重大な過失があつたといつてよい。
3 そこで、被告は、その余について判断するまでもなく、商法二六六条ノ三の規定するところに基づき、右の任務違反によつて原告に生じた損害を賠償する義務がある。
前記のとおり本件の新株発行直前の訴外会社の株式の価額は一株当り四五〇円であつたところ、新株発行によつて、資産は一〇〇〇万円(五〇円×二〇万)増加しただけで、発行済株式総数は二〇万株から四〇万株に倍増したものであるから、その価額は一株につき二二五円程度に減じたというべきである。そして、<証拠>によれば、原告は当時前記のとおり自己名義の株式を二万一〇〇〇株保有していたほかに、名義書換は未了であつたものの赤平名義の株式三万株をその相続人から譲り受けていたと認められ、結局、原告は当時五万一〇〇〇株の株式を保有していたといえる。
そうすると、原告は、本件の新株発行前後で、一株当りの差額二二五円の五万一〇〇〇株分、すなわち一一四七万五〇〇〇円について、保有株式の価値の減少を生じたというべきである。ただし、実際の発行価額五〇円の五万一〇〇〇株分、すなわち二五五万円の支払は免れているわけであるから、結局のところ原告の損害は八九二万五〇〇〇円となる(なお、商法二六六条ノ三にいう「損害」とは、いわゆる直接損害か間接損害かを問わず、取締役の任務違反と相当因果関係のある損害であれば足りる。)。
4 原告は、本件の新株発行に関して生じた損害として取締役としての逸失利益をも主張するかの如くであるが、前判示のとおり昭和四四年当時において原告を取締役に選出すべく行動するという法的義務を被告に認めるのは相当でないから、和解違反による損害としていう点は失当であるし任務違反による損害としていう点については、その間に相当因果関係を認めることはできない(新株発行によつて、原告の保有株式割合が四分の一未満に減じ、その結果取締役選任についての累積投票請求権を失うに至つたとしても、それをもつて、新株発行に関する被告の任務違反と相当因果関係のある損害ということはできない。)。
三以上によれば、被告は原告に対し、本件の新株発行に関連して取締役としての任務違反があり、これによつて生じた損害八九二万五〇〇〇円の賠償義務があるというべきところ、その損害の填補として訴外会社、藤田及び山本から合計七五〇万円の支払を受けたことは原告も自認するところであるから、原告の本訴請求のうち一四二万五〇〇〇円とこれに対する本件任務違反行為の後である昭和四六年二月二七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由があるからこれを認容し、その余はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を各適用して主文のとおり判決する。
(上谷清 大城光代 貝阿彌誠)
訴外会社の増資直前の純資産額
増資時を基準とする最終の決算期(昭和四三年四月一日から同四四年三月三一日まで。第二七期)の決算報告書中の貸借対照表によれば、当時の訴外会社の資産合計は一億一八五万四五一六円、負債合計は八二九〇万三四三〇円で、純資産は一八九五万一〇八六円と認められる。
ここで、いわゆる純資産方式によつて株価を求めるにあたつては、右の帳簿上の価額をそのまま基準とするのではなく、客観的価額によるべきである。その意味で評価替えの必要のある資産及びその評価差益について、鑑定人(鈴木治)の見解は左記のとおりである。
記
(対象資産、客観的価額、帳簿価額の順)
(一) 東京都文京区白山二丁目四番二宅地295.07平方メートル(所有権)、三八〇六万四〇〇〇円、一八五三万六七五〇円
(二) 同地上建物80.55平方メートル(所有権)、一五〇万六〇〇〇円、一二七万九九七一円
(三) 同区小石川一丁目九番一三宅地661.74平方メートル(借地権)、七四二八万円、九五六万八四〇〇円
(四) 同地上作業所・物置173.42平方メートル(所有権)、三二四万一〇〇〇円、三五万一五三九円
(五) 同区小石川一丁目九番一四事務所兼倉庫203.30平方メートル(借家権)、一〇〇三万五〇〇〇円、〇円(貸借対照表に計上されていない)
右の鑑定人の意見について、原告は、(三)の借地権の範囲は少なくとも二五〇坪(八二五平方メートル)を下らない、東京都文京区小石川一丁目五二番六宅地三23.47方メートルについての地上権の評価替えが欠落している、営業用自動車六六台分の営業権を評価していない、との三点を指摘するが、その余については、原被告とも特には異論を唱えていないところでもあり、当裁判所も、これを信頼できるものとして採用する。
右の原告指摘の三点につき検討する。
<証拠>によれば、(三)の借地権の範囲は約二五〇坪(約八二五平方メートル)であつたと認められる。そこで、その価額は、面積に比例させて(鑑定人は約二〇〇坪としている)、とみるのが相当である。
<証拠>(第二七期決算報告書中の貸借対照表及び財産目録)によれば、第二七期では資産として「土地一八五三万六七五〇円」、「地上権 本社所在地及び第三車庫所在地九五六万八四〇〇円」と計上されていることが認められるところ、<証拠>(第二八期(昭和四四年四月一日から同四五年三月三一日まで)の決算報告書)によれば、第二八期では資産として「土地三三五九万五〇五〇円」「地上権一〇〇万円」と計上されており、これによれば、訴外会社は昭和四四年一一月一四日に東京都文京区白山一丁目五二番六宅地323.47平方メートルを買い受け、右地上に第三車庫を新設したものと認められる。右事実によれば、訴外会社は、右土地につき、これを買い受ける前には(本件の増資当時にも)地上権を有していたものと認めてよく(右土地につき、第二七期においては地上権であつたが、第二八期においては所有権となつたため、帳簿上の資産の額が右のとおり変更された。)、これを覆すに足りる証拠はない。そして、その価額については、<証拠>により、一七八〇万八七〇〇円と認めることができる(その数式は次のとおり。15万6000円(昭和44年度路線価坪当り)÷0.6(路線価を市価に修正)×0.7(借地権割合)×97.85(坪)。)。
次に、原告の主張する営業用自動車の営業権であるが、<証拠>によれば、確かに、タクシー業界にあつては、その営業につき免許制がとられ各業者の保有し得る営業車の台数についても制限がある(このこと自体は道路運送法、同法施行令によつて明らかである。)結果、実際上、他に営業を譲渡する場合、営業車を保有し得ることを経済的に評価して、いわゆるナンバー権と呼ばれる取引価額が付加される場合があることは認めることができる。しかし、右の各証拠によれば、その価額はそのときの運輸政策によつて左右され、変動するものである(例えば、増車自由の政策がとられれば、ゼロとなる可能性もある)と認められるし、そもそも、業界において実際上財産的価値を有するものとして取引の対象となる場合があるにしても、免許制をとる法の趣旨に適合するとはいい難く(道路運送法第一条参照)いまただちに財産権として確立されたものとして評価することには賛成できない。
以上に判示してきたところから、訴外会社の増資直前の純資産額は、1895万1086円+(3806万4000円−1853万6750円)+(150万6000円−127万9971円)+(9285万円+1780万8700円−956万8400円)+(324万1000円−35万1539円)+1003万5000万=1億5271万円(1万円未満切捨)の数式のとおり一億五二七一万円と認められる。